無能ですね
テレビ出演から2週間後
「ファンレターがね」
「はあ」
「凄いんだよ」
「はあ」
その為にわざわざ呼んだのか
「番組にも相当来たんだって」
「何がですか?」
「また呼んで欲しいって」
「そうですか。良かったですね」
どうせ行きませんからどうでも良いです
「反響が大きすぎる。本当に行かないとまずいかも。」
「断ってください」
「他の会社からもう5件オファーあったよ。申し訳ないが違う意味で注目をあびせてしまったようだ」
「無能ですね」
「君のせいだろ。どう考えても」
「…もういやなんですが」
「そこをどうにか」
…参った。こうなるとうんと言わないと帰れない。ならば
「…一人で出るのはいやなので」
「そうか、事務所の誰かとセットで」
「そうではなく、ユニット組みませんか」
「…ユニット?」
「この事務所、女の子もいるでしょう?二人でコンビってことにしましょう」
「…コンビ?つまり、歌ったりするのか?」
「楽器でも弾いたふりすればいいでしょう?」
「…なるほど。どうせ目立つなら、か。うん。とても良いアイディアだ。早速人選に入る」
おっさんの仕事は早い。わずか二日だった。
「この子はどうだろう」経歴書を見せられる
「年下なんですか」
「ああ。姉妹ユニットみたいな感じで売れたらと思ってね」
一個下だ。確かにちょうどいい姉妹感。
「いいですよ、早速会いましょう」
「ああ、今日事務所に呼んでる」
本当に仕事がはやいこと。
そして
「初めまして!御堂鈴と申します!」
にこにこしていて、元気いっぱい。アイドルっぽい、いや正真正銘アイドルだ。
「以前、違う事務所にいたのだが、こっちにきてもらってから、とても良い感じでね。大々的に売りにしたかったんだ」
「みなさまのおかげですわ」
まあ、良さそうだ。目立つタイプだし、私は脇に隠れられそう。
「さっそく、細かいところをつめしょう?」
姉妹風ユニットとした。
それはいいのだが
「おねえさま♪」
「それ、別に事務所でいわなくていいんだけど」
「普段から言っておかないとだめですわ♪」
べたべたくっつく。しかし、身体の感触が柔らかい。
なんかどきどきするし、大丈夫か、わたし。
最近男性へのときめきみたいなのが日々なくなってるしなぁ。
全部竣と哉のせいだ