内気で無口なので、自分がどういう立場なのか分かってない
高校に通いながら、作曲活動。大変。というほどではなかった。
なにしろ、放課後DTMやることに変わりはないのだ。
土日に事務所にいくだけ
その土日も
「…まだ高校生…信じられん」
面接したおっさん(偉い人らしいが、私は親しみをこめておっさんと呼んでる)が色々気を使ってくれるのだ。
私はDTMで原曲作ったら、あとはおっさんがうまくやってくれるのだ。
とても助かってる。
「編曲もそのうちヤってほしいんだが」
「色々勉強します」
とりあえず作曲は既に150曲を提出した。まだまだ約束までは遠い。やりがいがある。
「…まさかとは思うんだが」
「なんでしょう?」
「誰が使うとか、売り上げとか全然聞かないから不安なんだが、君が今どういう立場なのか理解しているかい?」
「?なにがでしょう?」
きょとんとする
「…口座は見たのか?」
「お父さんに聞かないと…」
「そ、そうだな。まだ未成年だからそういう契約だ、聞いてみると良い」
「…はい」
家に帰ると同じことを言われた
「美佳、おまえ、なにをやったんだ」
お父さんが真っ青な顔
「作曲」
「すごいお金が入っているぞ!」
「そうなんだ」
「そんなすごかったのか!美佳!」
お父さんが腰を抜かしてる
「今日聞いた。よくわかんない。」
「よ、よく、わからないって」
「まあまあ、おとうさん。美佳は好きでやってるんですから、自由にさせましょうよ」
「も、もちろん、そうだが」
すると、お父さんは
「美佳の稼いだお金だ。美佳の自由に使いなさい」
「…いいの?」
「美佳はちゃんとお金の使い方ができる子だ。困ったら相談しなさい」
「うん、わかった」
DTM関係の機材を買い込んだ。
おかげで制作活動はかなり簡略化された。
制作スピードが増したので、放課後事務所に行く時間もできるようになった。
正直事務所は居心地がいい。
あまり煩わしいこと言われないし。
そうやって、事務所でぼーっとしていると
「SINO、ちょっとお願いしたいんだが」おっさんに声かけられる。
「はい」
「課題付きの作曲お願いできるか?」
「はい、どんなイメージでしょう?」
「歌ってもらうアーティストの要望を聞きながら作ってほしいんだ」
「楽しそうです。いいですよ。メモでください」
「…いや、本人たちいるから、直接聞いてほしいんだが…」
「だ、誰ですか」
事務所にいながら、私の内気な態度は変わっていない。未だに知らない人とはあまり喋れない。
「BOUNDSだ」