おっさんと仲直り
「…おっさん」
ついに、きたか。
「し…、いや、美佳さん」
本名で呼びかけるおっさん。
このおっさんは言うと絶対に曲げない。
対処法はそもそも言わせないことだ。
前回は言わせないまま絶交になった。
「話をきいてほしい」
「…どの面下げて」
おっさんの用件はわかる。おっさんの事務所に来てくれだ。
苦戦しているのは聞いている。
おっさんも頑張ったんだろう。
私のところにきたのは、本当に追い込まれたから。
それにしたって
「戻ることなんて…」
理由がなんであれ、恩義あるおっさんを見捨てたのは私だ。
約束破ったおっさんも悪いが、私も恩知らずだ。
「本当にすまない!!!」
土下座
おい、おっさん。
「言いたいことはわかる!それでも!」
「…おっさん」
「頼む!」
ため息
「…わかったよ、おっさん」
「え?」
「…え?」
後ろにいた環も驚く
「こうなったおっさんを止められた試しがない」
「ほ、本当に!?」
「み、みかさん?ほ、ほんとうに?でも芸能界は…」
「このおっさんは守ってくれていたんだよ。最後はひどかったけどね」
「…す、すまない、でも…いや、本当にありがとう」
「当然条件があります」
「なんだい?」
「鈴とは組みません」
「…そうか…」おっさんが苦しげな顔。
「…わかった。しばらく会わせないようにする…といっても、一回押し掛けたとはきいたが」
「ええ。警察に通報しようかと。ちゃんと管理してください」
「…わかった」
「おっさん、ずいぶん苦々しい顔ですね。まさか鈴と寝たんですか?」
「んな!?そんなわけないだろ!?」
あわてるおっさん。真偽はわからないな。このおっさんも嘘か本当かの判断が難しい。
私が鈍くさいだけか。
「別に誰かとくむのがいやではないですよ。もっとも、ボイトレしてませんから、しばらくは使い物になりませんが」
「そ、そうか。いや、実際問題、恥も承知でここに来たのも、鈴の要望もあったんだ。彼女見てられないほど落ち込んでいてな。そりゃ、彼女は悪かったと思うんだが、なんとか…」
「おっさん、あんな猿芝居に騙されるとか大丈夫ですか。騙された私が言う話じゃないですが」「さ、猿芝居って」
「ともかく、約束は守ってください。今度こそ」
「…わかった」ため息
おっさんが立ち上がる。
しかし、その服装見て唐突に気づいた。
「…正直に答えてください。嘘が発覚したらその場で辞めます」
「な、そんな条件は…」
「質問、鈴と寝たね。そのファッション、あいつの趣味だ」
「……」
口がぱくぱく。
だが、その口の動きは
「沈黙もまた答え。おっさん、少し機嫌がよくなった。あいつと話してみるよ」
「…し、しの」
「おっさんに身体開くぐらい追いつめられたんだろ。おっさんも女抱いて追い込まれたからこうやって来たんだ。だったらこっちから行ってあげないと」
「…SINO、正直に言う。抱いた。だが、抱いたのは、俺だけじゃない。それで耐えられなくなった」
「OK、病んでビッチになった後輩に会いにいくよ」
「…おまえが来れば、すべてがうまくいくんだ。本当にすまない…」
「…み、みかさん…」
環が困惑した顔で止めようとする
「環、一緒に来て。過去の精算だ」




