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2/29

ちゃんと注意書きは読みましょう

ちょっと長いです。

ここはひとつの流れなので。

そして、数日後、メールで結果が来た。

「…会場に行くの…?」私は作曲の募集に投稿したはずなのだが

「予選みたいな感じ…?」文章読んでもよくわからない

「…機材、機材から必要なのか」先生にお願いすればいいのだろうか。

でも、勇気をだして応募したのだ。

頑張ろう。

内気にこもりがちな自分の心を奮い立たせた。


「話が違う」

おかしい。

なんでだ。そこではみんな歌っていた。

「作曲のコンテスト、じゃないの?」

なんで歌を歌ってるのさ。


ちゃんとメールを印刷したものを見せたら通された。

会場は間違えていない。

いったいなにが…

ふと、看板を見つける。

ルールが色々書いてある


「…うそ…」

急いでもう一度募集ページをみる

。そして

「…ちゃんと、書いて、あるじゃん…」

作曲のコンテストだが、歌も歌うのだ。

なんで見逃していた、私。

「歌なんて…」

カラオケですらほとんど経験がほぼないのですが。

でも

「…みんな、うまくないな…」

作曲して、歌うからか。歌のレベルは低い。

これなら、言うほど恥もかかないかも。

しかし

「…この格好で歌うの?私」

幸い、順番はまだ先。

ここはモールの中。幸い、服はすぐ買える。

化粧品もだ。お金も幸いいっぱいある、ならば。

「すみません、お手洗いで抜けます。順番はまだなので」

「わかりました」

急いでお店に駆け込んだ


戻ると、順番はすぐ来た。恥ずかしい。

知らない人前で話なんてまともにしたこと無い。

でも、この場所にいる人たちは、私とは住む世界が違いすぎる。


多分今後すれ違う事もなさそうなぐらい。

そして、この格好。私とは思えないほど派手にした。これならば。開き直れる

だから。


『…And my soul…』

すんなり歌い出せた。

私が作った曲。

パソコンで何度も聴き返す程お気に入り。BOUNDSに歌ってほしいと願った曲ではない。自分でも歌えそうな曲。そのメロディが背中を押す。


『低い雲が私を…』

緩やかだったバックが一気に変調する

『霧にきれるあなたへの思い!戻らないあのころの景色!!!』

絶叫。

声が割れない程度に押さえたつもりだが、それでも驚くほど大きい声。

そして、理想と思えるキーの低さ。

自分の声とは思えない。

『閉じた思い出を砂に変えて!!』

観客は唖然としている。

棒立ちだ。

ほぼ全員がその場を動かない。

その為、動けなくなる人が増え、人混み膨れ上がる。

まるで何か映画のような風景

『あなたの憎んだ世界に、たとえ私がいたとしても』

声が限界に近くなる。

ろくに発声練習もしていない素人の身。

5分もったのが奇跡だ。

『ただ、そこでまちづける…』

そして収束。

最後までもった。

何かの奇跡だ。

心配していた機材もノートラブル。

深深と頭を下げ、撤収しようとする、


『ぅぅぅううううおおおおおおおおっっっっ!!!!!!!!!』

歓声、というか絶叫。


って、え、なに???

『…コール!!!アンコール!!!アンコール!!!!』

凄い、凄い声。呆然としてしまう。

なにっこれ。

えっ?

アンコール?もう一曲歌うの?


キョドって司会の人を見る。

うわ、スキンヘッドさん満面の笑み。きもい。

『あ、あの…その』

『アンコール!!!アンコール!!!アンコール!!!』

何が起こったのか。今のが好評だったの?いや、でも前の人のもその前の人も凄かったし。

え?何?ドッキリ?罰ゲーム?

『すげぇぇーーー曲だったよな!!!みんな!!!!』

『うぉぉぉぉおおおおおおおおっっっ!!!!!』

間を持ってスキンヘッドの人が繋いでくれる。

助かった。

帰ろう。


『もう一曲ききたいよな!!!!!!!』

『うぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおっっっっ!!!!!!!!!!!』

ふざけんなぁぁぁ!!!かえらせろぉ~!!!!

って、あれもう一曲なんてあったけ?

Silvaしか持ってきて無い気がする。

思わず機材をのぞき込んで確認。

あ、Crime Hereが入ってる。


『よし、やる気になってくれたみたいだぁぁ!!!!!連続でSINOちゃ~ん!!!!』SINOちゃん。応募したハンドルネーム。しっくりこない。

そもそもやる気になってなんかないよぉぉぉ。

確認しただけじゃんか。

ていうか声出るの?私。

『アンコール、ありがとうございます』

おお、でた。

『うぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおっっっっ!!!!!!!!!』

『声続くかわかりませんが歌います、Crime Here』

機材スイッチオン

ラテンチックなメロディーが流れ始める。

『…あ~な~たの~』

ゆっくり入る。Silvaより少し重いがやや速いメロディー。

トーンが低いので歌いやすい。Tell a little boyとかじゃなくて良かった。

『私の希望、今閉ざされた』

観客は微妙な感じ。前のような変調があるのかどうか、乗っていいのかどうか悩んでる。

うむ、その判断は正しい。

『解き放ち風に舞う』

そして、

『戯れた声をかき消す!!我の声は宙に舞う!!!!』

ワンパターン絶叫。それに併せて

『うぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおっっっっ!!!!!!!!!』

間髪入れぬ観客の大絶叫。

む、完全にパターン読まれてる。まだ2曲なのに

『悲しみ、嘆き打ち砕く!!!!』

うわーい大騒ぎだ。みんな暴れてる。怖い、帰りたい

『この想いよ、全て砕け散るまで!!!!』

そして煽る私。ノリノリですね。

声は全然平気なのをいい事に、体全体をゆさゆさ揺らす。

前、Ximotionalがやってたパフォーマンスを微妙にパクる。

『うぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおっっっっ!!!!!!!!!』

途端、観客はダイブだらけ。おお、みんな凄い。怪我しないでね。


ようやく撤収。

死ぬかと思った。色々と。やっぱり慣れない事はしない方がいいなぁ。

楽しかったのは最初ぐらいだ。


機材をバックに丁寧に包む。

帰るまでが遠足です。

先生が確認するまで壊れないでね。

「なあ、SINOさん」

後ろから声をかけられる。なんだ?


「あんた見かけとのギャップすごいなぁ。ステージで見ててびっくりしちまったぜ」

振り向くと軽薄そうな少年が立ってた。何だこいつ?

あ、いや。見たことある。

それこそ、写真かテレビで。

いや、違う私は一般の人だ。

「…そう?」


結構激しそうな格好をしてみたがまだ足りなかったらしい。

やっぱり髪は染めた方が良かったかな。

でも隆君は黒髪がいいっていうし。

「…なあ、誰にも言わないから教えてくれ。あれ、あんたが本当に作ったのか?」

誰にも言わないことをこんなところで聞くな。


「即興で作ろうか?」

「え?」

「お題をくれたら即興で作ってあげる。だったら信じるでしょう」

ぽかんとする相手。

「…くふふふふ」

小さく笑った後

「男らしい、格好いい曲作ってくれ」

なんだ、その注文。小学生か。お前は。

「そう、ちょっと待ってて」

付けっぱなしのパソコンから楽譜ソフトを立ち上げ、ざらっと打ってみる。

Say Moreの流用でいいや。面倒くさい。

歌詞もざら打ち。

男らしくかっこよく。


「はい、できた」

所要時間10分。

「…え?」

その間横でぼーっと見てた少年に声かける。

「USBメモリ無い?」

「…いや、無い」

しょうがない、プリンター使わせてもらおう。

印刷した紙の束を渡す。

「はいこれ。聴いてみて。もし金取るんだったら連絡ちょうだいね。それじゃ」

「…ま、待て!!連絡先は!?」

「歌詞カードの最後に書いてあるから」

途中で出てくる歌詞は適当です。

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