いい話なのか、これ
普通、いじめにあった行為って嫌悪を抱くんじゃないの?」
なんとなく気になったことを聞く。
「わたし、強姦未遂以降、特定のイケメンの姿みるだけで嫌悪感あるし、ちんことか想像するだけで吐き気がしてくるんだけど」
クン〇やキスがセーフなのはそれらの行為が未遂だったからだろう。
「…うーん」
環が首を傾げながら悩む。
「えっと。なんて言ったらいいのか。誤解されそうですが」
「ええ」
「私にとって、キスとクン〇…というか、この舌は、状況を打破する武器だったんです」
「武器?」
「同級生からの陰湿ないじめを打破したのは、先輩へのクン〇。援交でセッ〇スまで至らなかったのはキスとフェ〇」
そういって、舌を見せてくる。長いなぁ。舌。
「なので、行為自体に嫌悪は感じないですねぇ。美佳さんと違って、イケメンとかにも悪い印象はないですが…」
顔をしかめると
「女子特有のいじめ空間は本当に嫌いです」
ちょっと気になったことをついでに聞く。
「おじさん連中にはそうでもないんだ」
「…よくしてもらいましたからね…」
困惑げな顔を見せる。
「それは、ひどい言葉をかける人はいたんですけど、そういう人は一回だけの関係でしたし…あとで長文の謝罪メールきましたけど。私は一人に対して長かったですからね…」
遠い目をする環。
「いや、嫌悪感は皆無ではなかったですよ?はやく縁を切りたかったですし」
「そういえば、いじめがきっかけで始めたのに、いじめは収まっても続けてたんだ」
「…ああ…」また顔をしかめる。
「言いたくなければ流して」
「…いえ、今更です。そうですね…なんと言えばいいのか」
しばらく俯くと
「…わたしですね、全部で1億円ぐらい貢がれたんです」
「…はい?」
「この『舌』の価値はそれぐらいだったんです。一度すると病みつきになると」
「にしても、1億円って…」
「最初の人で4000万円ぐらいですかね…私も断る義理もないので、もらうものは全部もらっておきましたし」
「それ現金?」
「人によります。物がやっぱり多かったです。現金だと生生しいですし」
「その現物、どうしたの?」
「女子高生が複数の高級ブランド品を質屋に売ると、警察に通報されるという噂がありまして…」「へー」なんかそれっぽい噂だ。
「上級生に貢いだり、二年になった頃には後輩ができて、その子を通じて売りさばいたり」
環、内気で無口なのに、そういうのやってたんだ。
「その後輩は男友達がいっぱいいて、処分には困りませんでした。猫ばばしてるのにも気づきましたが、とくに執着もなかったので、好きにさせていました」
ため息をつくと
「…ただやりすぎたのか、一人が捕まって、あっさりゲロりまして」
「後輩の男友達が?」
「ええ」
「…環も捕まったの?」
「いいえ。その後輩が全部かぶりました」
「へえ」この流れなら裏切られたのかと思った。
「最後まで仕入先を吐かなかったそうです…学校は中退。刑務所に会いにいくわけにもいかないので、どうしようかと困っていたのですが」
「うん」
「男友達経由で『あれだけ稼がせてくれたのに、裏切ることなんてできなかった。私たちのことは忘れて幸せにくらしてください』だそうで」
「…なに、そのいい話」
「男友達も呆れていたようですが、最後まで彼女の意向を汲んでいましたね。もう出所しているはずですが、未だに連絡もなく」
「…へえ」
なんというか、色々あるんだね。芸能界以外も。




