エピローグ
セグメント討伐から三日。
なぜ三日も空いたかといえば、ひとえにそれだけの期間、僕が眠っていたからだ。
その間にも事態はきちんと収束へ向けて動いていて、僕は起き抜けに顛末を聞かされただけだった。
『払暁』基地内、応接室。
そして現在、僕はどういうわけか、防人司令に呼び出されていた。僕のそばにトモカはいないけれど、司令の隣には門脇さんが控えている。
「いやァ、どういうこともこういうこともねーだろうガ。普通に観測班から研究班まで全部まとめて上を下への大騒ぎだったゼ。なんセ、基地の最高戦力にまだ上があるって分かったんだからナ」
司令は今日も今日とておまるの上だ。
やっぱり我慢はできないらしい。
不老不死とは恐ろしいものである。
ともあれ、司令が言っているのは僕とトモカのコンビのことだ。
コンビというか、剣になって動けないトモカを僕が振り回しただけだったけれど。
長い話を要約すると、どうも書類上の――正確にはここ八年の間に計測されたトモカのスペックと、一昨日僕がトモカを剣として振るったときのスペックがどう計算しても噛み合わないものになっていたのだとか。
「つーことデ、しばらくは明智ィ、おめーさんにもエンバンカーとして働いてもらうことになるからヨ、その心積もりだけしといてく――ぐうっ」
ぱたりと司令が倒れた。
今の話は遮る必要がなかったと僕は思ったけれど、余計なことは言わないでおこう。
そばにいた門脇さんではないメイドさんが慣れた手つきで司令とおまるを回収していって、門脇さんが司令のいた場所に座る。
やっぱり立ってるのが疲れただけじゃないだろうか。
「あなたと九重殿のコンビは、いわば食いついた魚を殺す生き餌です。組織としては利用しない手はありません」
あくまで事務的に、門脇さんが述べる。
「明智殿には幻器使いとして、『払暁』を、ひいては扶桑を守るために戦って頂きたいのです」
「……幻器使いとして、ですか」
幻器使い。
幻脈使いとは違う、他者の力を借りて戦う人間。
「はい。九重殿を例外事例として、幻脈使いかつあなたの幻器として登録しましたから。あとはあなたが頷くだけです」
知らないうちに外堀は埋められていた。
でも、悪い話ではないのかもしれない。
トモカを幻器として。
守られているだけではなく、僕もあの場所にまた立てるということだ。
彼女たちのいるあの場所に。
「さあ。では今一度問いましょう」
門脇さんと目が合う。
僕はごくりと唾を飲む。
「あなたには命を懸けて、戦う覚悟がありますか」
その問いに――
「もちろん」
僕は真っ直ぐに答えた。
この小説はこれで完結です。
最後まで拙作にお付き合い頂き、ありがとうございます。
それでは、また。
2023/03/18
改稿版を投稿する予定なので非公開にしました。改稿版の投稿後も、削除の予定はありません。




