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SIDE:ティナ

 北の森、通称『迷いの森』で、一匹の魔物の子供が道を進んでいた。

 この森。

 確かに迷うは迷うのだが、それは人間にのみ有効だったりする。

 魔物はどうやっても迷う事はない、とても魔物に優しい森だ。


「(はひ~いくら森のガーディアンとはいえ、まだ子供なんですよね、僕)」


 ぴょこぴょこと短い足を必死に交互に動かし、ティナは険しい坂を登っていた。


 日が落ち、もうじき夜になるというのに迂闊にも眠り草を食べ、こん睡状態に陥ったおばかなディアルを置いて、ティナは北の森に住む魔女のもとへ向かっていた。

 人間には恐ろしい存在だが魔物には無害だと聞かされている。


 主人公のくせに役に立たないディアル、このままでは北の森の番人に挨拶できるかどうかさえ怪しいところ。

 そこでティナは魔女にお願いして、北の森の番人のところへディアルが辿り着けるよう、手配をしてもらうつもりだ。

 つまり、一時的にディアルにかかっている目晦ましを解いてもらおうというわけ。

 これ、全て母や番人の相棒になった事がある姉や兄から聞いた事。



――最終手段ですけれどね。

――そうそう、本当は自力で辿りつかなきゃならないけど、人間がいつまでもあの迷いの森に滞在していると、魔物が怪しんで襲ってくるんだわ。

――ティナ、本当に気をつけるのよ、いざとなったらディアル捨てなさい。



 きっぱりとディアル見捨てろ宣言したのはティナの母である。

 人間から魔物を守ってくれている事は感謝しているものの、恩と最愛の息子の命は全く別物らしい。



――どの森の番人も、彼女に殺されて幽霊になったのダスよ。



 そう教えてくれたのは、前番人の相棒だった兄。

 さくっ♪ と殺して魂を取り出し、各森に居る守護獣・ラ・フィナの力で、取り出した魂を森に縛り付けるのだそうな。

 強引に束縛しても、逃げるものは逃げてしまうので、番人はラ・フィナに惚れ込んだ者がなるらしい。



 となると――南の冷酷無比っぽいお兄ちゃんも、ラ・フィナにぞっこん?

 こ、怖い。

 でもみてみたい。

 あの怖い外見のラ・フィナと戯れるお兄ちゃんの姿を!!!



 まぁそれは置いといて。


 つまりラ・フィナは森と魔物を守るものではない、番人が森から逃げ出し、消滅しないよう、独自の魅力で番人を縛る餌なのである。

 東の番人はどうしてか長続きせず、森から逃げ出しては消滅、を繰り返している。


 だが――ティナは母から聞いた事があった。

 彼らは自ら逃げ出したのではなく、北のに逆らい、または気に入られなかったため、森から追い出されてしまったのだそうな。

 殺しておいて気に入らなかったら捨てる。

 まさにやりたい放題なのだが……ここにそれを止める者はいない。


(大丈夫ですかね?)


 ディアルはさほど顔は悪くないと思う、一般標準よりはそこそこ高い気もする。

 だからといって北の眼鏡に叶うかどうかは微妙だ。

 むしろ性格が災いし、磔の刑に処せられる可能性だってある。


(でも強さはそこそこですし、魔物に身を守る術を教えた功績は強いはずです)


 一匹力説しながらせっせと坂を登り続ける。

 上にいくほど雲行きがやばい、頂上の崖の側にある豪邸、それが目的地。

 んがしかし。

 天候は崩れ、暴風が吹き荒れ、ドラゴンの雄たけびのような雷鳴が鳴り響く。

 地面にはどこかでみた無数の尖りまくった岩、岩、岩。

 岩の隙間にうごめく黒い影。


「(ぼ、僕は餌じゃないですーーーー!)」


 ティナは物凄い速さで坂を登っていった。




 数十分後・・・


 ぜへーぜへー

 息も絶え絶えに、ティナは坂を登りきった。


 これこそまさに火事場の馬鹿力!

 と、視線をあげればそこには四角い建物。

 崖から見た事がある人間の住む巣に似ている。


「(ついた、のですかね?)」


 ちょこちょこと移動し、垣根代わりに張り巡らされている草を掻き分けて進む。

 ねずみ色に塗られた凹凸のない平坦な壁。

 四角形の味っ気ない建物だが、気のせいではなく、中からは怪しい空気が漂ってくる。


 生き物の気配に視線を移動すると、建物の前に無数の魔物が集まっていた。

 みんな大人しくしており、楽しそうに談笑などしながら、そわそわと建物の方を気にしている。

 暫くして扉が開き、中から人がでてくると魔物達が待ってましたと群がった。

 彼を見て、ティナは思わず心の中で叫んだ。


(ディアルより断然美形です!)


 伏し目がちの横顔なんて、もう月とスッポン。

 うっすらと額に浮かぶ汗すらも素敵に見えてしまう。

 しかし次の瞬間。


「さぁハニー達、今日も俺の愛を受け取ってくれ!」


 爽やかな笑顔に似合う白い歯が、きらーん、と眩しいぐらいに光る。

 物静かに見えた雰囲気はどこへやら、やたらテンションの高いお兄さんは、魔物達に向かって、持ってきた袋の中から取り出した『何か』を投げ与えた。

 地面に落ちたそれに、魔物が一斉に飛び掛る。


「焦ると喉につまらすぞ」


 後ろから出てきたのは、肌が日によく焼けた兄ちゃんだが、腰に巻いているのは白いレースの前掛け。

 に、似合わねぇ……

 しかもなんだ? エプロンの所々に紅い斑点があるんすけど……。



 だが、ティナは見てしまった。

 袋からぶちまけられた中身を……

 どうみても人間の…兎に似た魔物が前足で持って咀嚼しているのは人間の指の形状に似ている気がするけど――――うん、気のせいに違いない。


 だけど二人の兄ちゃんは楽しそうに談笑し、特別何かをした様子もない。

 もしかこいつら、魔物に死体を食べさせて大量虐殺の証拠隠滅図っているのか!?

 果たして真相は!



(うきゃーーーーーーーーーー!! ここはどこなのですかぁぁぁ!)



 ティナが心の中で叫んだ。

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