表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ディアル物語 ~ハンターから転職して魔物を守る番人になります~  作者: ユメ
お題でコラボ2

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

46/48

3.マジで笑えない展開なんですけど……

 ドゴォオオンと轟音を立て火柱が上がる。



「ぐぎゃぁぁぁぁぁぁ」



 みっともない叫び声が森の中に響く。



「もう嫌ぁぁぁぁぁぁ、東の森に帰りたぁぁぁぁい」



 叫ぶディアルの足元が盛大に吹き飛ぶ。


(最初から嫌な予感はしてたけど、この展開、マジで死ぬから!)


 元凶を連れて来た兄妹を恨みたい、けど恨んだらきっと魔女に抹殺される。



 キシャァァッァァアアア



 憎悪が込められた鳴き声が周囲の空気を震わせる。

 この世、否、この世界の生き物ではない魔物が鋭い牙を剥き、容赦なくディアルを狙ってくる。


(無視されてもさっきの方がマシだったかもねー☆)


 涙目になりつつあるディアルに魔物が襲いかかった。





 1時間ほど前。

 割と本気で魔女を警戒しているらしい麗しの兄弟は、休憩場所を提供して貰うだけで水の一杯も受け入れようとしなかった。


 聞いてみれば水分すら摂取の必要は特に必要ないらしい。

 自然界に流れる気、龍脈、大気、霊気、そういったものが糧と語った。

 それでも、父の晩酌に付き合う事があるとの言葉に、魔女が眼を爛々とさせ特製のワインを勧めたが、翡翠の獣がボトルごと一気飲みして邪な企みは潰された。


「ふふ」


 兄を守れた誇らしさにセシリアが微笑む。

 昼食後の穏やかな時間。

 女二人が水面下で密やかな攻防を繰り広げていた。

 

「手強いねぇ」


 屋敷の庭先でお茶を楽しむのは魔女の楽しみの一つでもある。

 特に今日は目の保養がいつもの倍。


「ご機嫌ですね」


 Dr.が主のカップに紅茶を継ぎ足しながら言った。


「そりゃもう」


 視線の先には麗しき兄妹。

 妹の方はあっさり名乗ってくれたものの、兄は自らの名を一切名乗ろうとしない、名前を聞いても『セシリアの兄』の一点張りだった。

 あの陽気な刀鬼の息子とは思えぬほど無表情、無感動、とにかく感情を表に殆ど出そうとしない。

 だがなぜか魔物にモテるらしく、今だって魔物の群れに文字通り埋もれている。

 数が多過ぎて魔女が近付けないほどだ。


 妹のセシリアはなんだかワイルド系と良い雰囲気。

 万年乙女な母を持つゆえにセシリアの放つオーラに怯む様子もなく、むしろ自分の作品を身に纏える相手が出現して喜んでいるようにさえ見える。

 今だってセシリアにレースの編み方を教えつつ、髪に櫛を入れ、レースのリボンで飾り立てており、無表情に見えるのは顔が緩むのを必死に抑えているからだろう。


「俺も、混ざりたい」


 羨ましげに光景を眺めるのは久っち、出来ればセシリアとお近づきになりたいのだが、守護獣である獅鬼がそれを許さず、兄の方はオーラが眩しくて干からびるので近付けないらしい。


「まぁ我慢しなさいな」

「うぅ」


 主の言葉に悔しげに涙を流す。


(アンタはまだマシだよ……)


 じとーと物陰から光景を見つめるのは、誰にも相手にされない主人公であるはずのディアル。

 これなら踏みつけられたりする方がまだマシ、というぐらい誰も相手にしてくれない。


 昼も食べていない。

 誘ってすらもらえなかった。


 盛大に鳴った腹に耐え切れず、俺~と突撃しようとしたのだが、『身の程を知りなさいこの馬鹿番人!』という怒声とともに吹っ飛ばされた。

 吹っ飛ばしてくれたのは相棒のティナだった気がする。


(いや、気のせいじゃなくてあれはティナだろ)


 本人はと言うと、お兄様の膝の上で気持ち良さそうに丸まっている。

 不意に兄が顔をあげ、ディアルの方を見た。


(え、俺?)


 腐っても番人、瞳に映る殺気を見逃す事はなかった。


「セシリア!」


 鋭い声が穏やかな空気を打ち破る。


「はい!」


 答えるが早いか獅鬼の背に飛び乗った。

 眠っていたかと思われた獅鬼だが、すでに目を開け、セシリアが飛び乗るや一直線に走り出した。


 ディアルに向かって。


「俺は何もしてねぇぇぇぇぇぇ」


 だから喰わないでーと叫びながら咄嗟にしゃがむと、その頭上を物凄いスピードで獅鬼が通り過ぎて行った。


「へ? な、なん……ぐぎゃっ」


 恐る恐る顔を上げかけた所を思いっきり踏みつけられ地面に沈む。

 遠のきそうになった意識を揮い起こし、顔を上げれば今度は踏まれる事はなかったが、ずらりと魔女と従者、あとティナが揃っていた。

 やっぱり今日は厄日だと思う。


「何してんだね」


 冷ややかな魔女の声に反射的にビクリと体を震わせる。


「いや、あの……」

「さっさと二人を助けにお行き!」

「へ?」

『さっさと行けです!』


 ドガッと蹴り飛ばしてくれたのはティナ。


「ティ、ティナ?」

『あのお二方に何かあったらどうするんですか!』


 俺はいいのかよ。


 ツッコミたいのは山々だったが、何より魔女の雰囲気が怖すぎた。

 番人候補時代、森の中を追い掛け回された時も怖かったけれど、これほどじゃぁなかったような気もする。


 今逆らったら死ぬ。本能がそう告げた。


「行って来ます」


 ここは余計な事を言わないのが一番、ディアルはそそくさと二人が消えただろう方角へと走り出した。


「……この世界の魔物じゃぁなかったね」


 ポツリと魔女が呟く。

 あの場でディアルだけが気付いていなかったが、実はディアルの背後にはこの世界には存在しない類の魔物が居た。

 真っ先に兄が気付いたのだが、兄に気付かれるや逃げ出して森の中へと逃走し、二人はそれを追って行ったのだ。

 邪気の塊とでも言うのだろうか、闇に覆われ本体は見えず、辛うじて獣のような形をしている事だけが分かった。

 あれだけの邪気が背後にありながら気付かなかったディアルはある意味凄い。


「あの魔物がこちらへ来た理由らしいな」

「お兄ちゃん一瞬ものすげぇ怖かったぜ」


 あの表情をDr.と久っちは見た事があった。

 正体不明の邪気が森を震わせ、それに逸早く反応した刀鬼が見せたのと同じ表情。


「魔女様、ご判断を」

「そうさねぇ」


 彼らはあくまで魔女の従者、主の許可がなくして勝手に動く事はできない、例えどんなに客人に好意を抱いてもだ。


 魔女は魔女で迷っていた。

 あの獣はこちらの世界のものではない。

 つまり魔女の支配は利かず、最悪従者を失ってしまう可能性もある。

 だから時間を稼ぐ為にもディアルを送り出した。

 意図を理解したからこそ、ティナもディアルの背を押したのだ。

 ギャグ体質のディアルならばそうそう死ぬ事はないだろうと信じて。





 何とか追いついた先では見た事もないほど激しい戦闘が繰り広げられていた。

 魔物が地面を抉ればそこから火柱が上がり、空を裂けば稲妻が奔る。

 軽やかに攻撃を避けながら、あろう事か兄は素手で戦っていた。

 両手に蒼白い光をまとい、空を殴れば魔物の体が吹っ飛んだ。


(こんなのといつも戦ってるわけ?)


 しかも良く見ればお兄様はお空を飛んでいらっしゃる。

 地面を走るように虚空を走り、舞うように戦う姿は美しい。


 すでに記憶の彼方に埋もれていた刀鬼の戦闘シーンが脳裏に蘇る。

 そう言えばあの方も計測不可能な強さと舞いのような美しい動作で、討伐不可能と思われていた恐怖の再生アメーバを叩きのめし、見事討伐した。

 ダメージを吸収、ありえない速度で再生する能力を持っていたあのアメーバは、どういう経緯で生まれたかは分からないが一応こちらの世界の魔物。

 けれど目の前で暴れ狂うあの魔物は違う。


(笑えないですけど)


 状況も、敵の戦闘能力も、ディアルの許容範囲を超えている。

 あんな魔物が村へ降りていったら、村はあっという間に壊滅するだろう。

 それだけはさせてはいけない。


(けど無理、あれと戦うなんて無理だから!)


 ここまで来た勇気を褒めてほしいぐらいだった。

 そろ~っと忍び足で退場しようとしたディアルだったが時すでに遅し、恐ろしい形相の魔物が大口を開けてディアルに襲い掛かってきた。

 で、冒頭の状況に。


(なんでこんなのと戦わなきゃいけないんだよー)


 ここで泣いても誰も責めまい。

 軽蔑はするだろうけれども。


(ちくしょう、やってやらぁ!)


 自棄を起こすとはまさにこの事だろう、ディアルが剣を構えた。



 ガアアァァァァァッ!



「いやぁぁぁぁぁ、やっぱむりぃぃぃぃぃ!!」



 真正面から対峙しようとしたものの、やっぱりディアルではどうにもならなかった。

皆してお兄様にめろめろ

ディアルはボロボロ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ