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ディアル物語 ~ハンターから転職して魔物を守る番人になります~  作者: ユメ
お題でコラボ2

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1.厄介事は、羊の皮をかぶってやってくる

 皆様、お久しぶりです。

 ギャグSSの主人公、ディアルです、覚えておいででしょうか?

 最近ではとんと出番がなく、俺も自分のキャラを忘れそうです。


 振り返ってみれば色々ありすぎる俺の人生。

 全てはティナとの出会いが始まりだった。

 魔物ハンターだった俺が魔物を護る番人候補になったり、いざ番人になろうと儀式の蓋を開けてみれば、番人には死ななきゃなれないなんて条件付、すったもんだの末見つけた生きたまま番人になる方法は――ああ思い出したくもない。

 死ぬような思いをしてようやくなった番人。

 地獄の鬼も平伏すような恐ろしい魔女の支配下から逃げ出し、ようやく戻ってきた東の森――にいるはずなのに、なんで俺はここにいるんだっけ?


 ええと確か今朝まではちゃんと東の森にいた。

 ティナの母ちゃんの手料理食べて、見回りして、新種の毒草見つけて、森の入り口近くに可愛い子見つけて……そうそう、あの可愛い子ちゃんに声を掛けた瞬間、後頭部に激痛が奔って気を失ったんだよな。

 で、気付いたらここにいた、と。

 何だろうこの凄絶に嫌な予感。


 今すぐ東の森に帰りてぇぇぇぇぇ!





 ディアルが心の中で絶叫を上げていると、その目の前を馬ほどの大きさを持つ翡翠の獅子が通り過ぎた。


 場違い、掃き溜めに鶴、泥中の蓮 なんかそんな単語が脳裏を過ぎる。


「は?」


 無様に地面に転がっているディアルなど視界にもいれず、ゆったりと歩きながら森の奥へと消えて行く。

 この森だけではない、どこの森にもこんな姿の魔物はいないはず、何よりまとう空気がこの世界のものではない。

 『異世界の生き物』、不意に脳裏を過ぎった単語にパラレルトラウマが蘇った。


 森を護る番人としての自覚が出てきたのか、最初にディアルが思ったのは獣の正体の確認しなければ、という事。

 気にすると相当痛い後頭部を押さえつつ、よろめきながら獣の後を追う。


(なんで俺、北の森なんかに居るんだろ)


 ここに来ると走馬灯の如く悪夢が蘇るので、出来れば二度と踏みたくない地だった。

 向かっている先には花畑がある。

 番人になってから教えられたのだが、花畑の周辺には珍しい薬草があるらしい。


 この世界で薬草は医者や薬師に高く売れる。

 希少価値の高いものならば値段も跳ね上がり、葉っぱ一枚でも凄腕ハンター1ヶ月分の稼ぎになるため、薬草を求める者は後を絶たない。

 とは言え、そんな凄い値で売れる薬草が簡単に手に入るはずもなく。

 花畑は魔物にとって憩いの場であり、レベルが高く凶暴な奴まで現れるので、危険度は最高レベルのS。

 一応立ち入り禁止区域に指定されてはいるのだが、それでも人間達は花畑を目指す事を止めない。


 ティナ曰く、あの花畑は魔女のもの、魔物のレベルが高いのは花畑周辺の薬草を護っているからだとか。

 大事な薬草なら自分の家で栽培すればいいじゃないかと、ディアルにしては至極最もな意見を言ったのだが、『分かっていないですねぇ』とわざとらしく溜息を付かれた。


 花畑の場所は意外と森の入り口から近く、子供一人でも行けてしまう場所。

 魔女隠しは花畑で起きる確率がやたら高いが、今まで女子が魔女隠しにあった事は実は一度もない。


 魔女は美形が大好物。


 薬草を見つけるにはある程度の資質が必要で、基準を決めているのは魔女。

 資質のある者にしか見つけられない、見つけたが最後、その場で魔女に掻っ攫われる。

 つまり、花畑周辺にあるはずの薬草を持ち帰った者はいない、いないにもかかわらず、村の人間の大半は薬草の存在を知っており、恐ろしく高い値段が付く事は北の村に住む者ならば誰でも知っている事。


 ここまで説明されてディアルはようやく薄っすら理解した。

 信じたくないけれど、花畑は美形を狩るための場、薬草は獲物を引き寄せるための餌だと言う事を。


(村人がほぼ全員知ってるって、どんだけ支配力持ってんだ?)


 考えたくない。

 けれど考えてしまう。

 村人が見た事もない薬草に命を賭けるその裏に、実は魔女の情報操作があっただなんて……しかもずっと昔から。

 さらわれた者がどうなるかと言えば、奴隷として酷使され、使い物にならなくなったらあのサディストDr.の人体解剖の餌食となり、末路は魔物の餌だとか。


 ちなみにディアルは薬草を発見出来なかった。

 話を聞いてから一度探してみたものの、探している姿を魔物に見られ、挙句鼻先でせせら笑われたのは記憶に新しい。


 Lu~


 不意に聞こえた歌声にディアルの思考が停止した。

 天上から響くような歌声に、ふらふらと引き寄せられる。


(この展開、覚えがある)


 あれは確か記念すべき第2話、歌声を辿ったらその先にはリィーという美女が居た。


 幽霊だったけれど。


 ガサ

 草を掻き分けた先にあったのは、変わらず美しい色取り取りの花が咲き乱れる花畑。

 そして……


(いたーーーーーーーーーー!!!)


 この花畑、いっそ出会いの花園とでも改名すればいいんじゃない?ってぐらいディアルは歓喜した。

 中央に立ち、歌声を披露していたのは一人の少女。

 周りを囲むのは対人間用の肉食系魔物の群れ、けれど少女は彼らを恐れる風はなく、また魔物も少女を襲う気配もない。

 心地良さ気にうっとりと目を閉じ、少女の歌声に耳を澄ませている。

 こちらの世界にはない『巫女』の衣装に身を包み、歌を歌う姿は神秘そのもの。

 何かを抱いているのに気付き、良く見てみたらそれはティナだった。


(おまっ、羨ましすぎだろうが!)


 主人であるはずのディアルを放り出し、特等席で歌を聴くとはどういう事か。

 と、歌を聴いていた魔物が一頭、ディアルに気付き、他の魔物も顔を挙げディアルの方を一斉に見た。


(や、やばい気がする)


 魔物の異変に気付き、少女も歌声をやめる。

 蒼い瞳がディアルを捉えた。

 ふわふわと風に舞う金の髪。


 森の入り口で見た少女がなぜこんな所に……。

 ディアルの出現で歌が止んだと、不愉快さを隠しもしない魔物の群れに睨み付けられながらも、視線が少女から離れない。

 ふと、少女がディアルに向かって歩き出した。

 魔物が自然と道を開ける。

 花畑の入り口に突っ立っているディアルと1mの距離を開け、ぴたりと足を止めた少女はディアルに向かってふわりと微笑んだ。

 ここで手を握らなかったのはディアルにしては奇跡に近い。

 やったら多分、魔物の餌になっただろう。

 少女は袴の裾を持つと、風のような柔らかさで優雅にお辞儀をした。


「ディアルさん初めてお目にかかります」


 鈴のような声音にドキリとする。

 いつもならば狂喜乱舞して失態を犯すところだが、少女の雰囲気がそれをさせない。


「私、刀鬼の娘、セシリアと申します」

「………………え?」


 今、物凄く恐ろしい名前が出てきた気がする。

 過去、何かの共演で登場したあの人の名前とか出たような。


「え?」


 まるで御伽噺の中から飛び出してきたお姫様のような容貌と雰囲気を持つ少女セシリアは、ディアルの驚きなんて眼中にないかのように愛らしく微笑んでいる。

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