十のお題:「発見♪」
周囲の空気の変化に魔女が表情を険しくさせた。
魔女を危険にさらすわけにはいかないが、まずは相手を確かめねばならない。
逃げるも戦うも相手の出方次第。
いざとなったら暢気な居候を出向かせればいい、魔女を守るためなら手段を選ばない男はごくりと喉を鳴らして扉に手を掛けた。
「――っ」
扉を開けたそこには一人の女が立っていた。
その圧倒的な畏怖感からDr.がビクリと身体を震わせる。
「フェリオン?」
不審に思った魔女が後ろから顔を出したが、恐怖に体が強張っていたDr.はとっさに体が動かなかった。
「何者!?」
黒き闇。
邪悪な気配を漂わせる漆黒の女。
背筋に冷たいものが流れた。
敵か。
ならば魔女様を守らねば……。
でも体が動かない。
こんな、こんな事は初めてだ。
この私が怖いと思うなんて――。
「よぉどうした?」
「と、刀鬼、あいつを追い払ってくれ!」
緊迫した空気に気付いたのか、談話を中断して部屋から出て来た刀鬼に顔面を蒼白にした久っちが飛びついた。
「んー?」
小首を傾げた刀鬼が玄関に近付く。
「だめっ! 刀鬼、来るんじゃないよ!」
魔女の悲鳴にも近い言葉を刀鬼はまったく聞かなかった。
「……?」
身動きを取る事すら忘れ、目の前の女に釘付けになっていたDr.だけが、女の唇が刻んだ言葉に気付いた。
「発見♪」
そう確かに女は言った。
誰に?
何を、見つけたというのだろうか?
Dr.の疑問は次の瞬間すぐに分かった。
「あっ」
顔を出した刀鬼が、女を見て嬉しそうに破顔した。
止めようとした魔女の手を振り払い、黒い女に向かって走り出す。
体当たりかと思ったら、ガバっと女に抱きついた。
「御老体!」
「元気そうだねぇ」
女の手が刀鬼の背に回り、その背をぽんぽん、と優しくたたく。
「戻り方わかんなくてさ~長逗留しちゃったよ」
身体を離すと、あはははと明るく刀鬼が笑った。
ほっと一同の肩から力が抜ける。
「克の話を聞くのが遅れてね、悪かったよ」
返す女の口調は優しい。
先刻まで感じていた禍々しさももはや感じない。
「でも楽しかった」
「そうかい」
優しく目を細め刀鬼の髪を撫でると、女が魔女達の方を向いた。
「!」
本当に、同じ人物なのかと疑ってしまうほどまとう空気が違う。
女の目は魔物やDr.達を見る魔女の目と同じ。
(そうか……)
Dr.は全て理解した。
最初に向けられたのは敵意。
あれは恐らくDr.や魔女が、刀鬼に害を成したのではないかと疑ってのものだったのだろう。
刀鬼の無事を確認し、敵意を向ける理由はもはやない。
本気で畏れてしまったのは、きっと女の刀鬼を心配するそれが本物だったから。
対する刀鬼も今までとは全く空気が違う。
あれはイリアといる時のワイルド系と雰囲気が似ている。
「刀鬼が世話になった」
「楽しかったですよ」
返したのはいち早く我に返った魔女だった。
そういえばこの二人、どことなく雰囲気が似ている。
(ああそうか……だから刀鬼は魔女様を恐れなかったのか)
あれを母と慕っているのであれば、多少の事に動じないのも頷ける。
「御老体さー、あの本に説明書きとか付けておこうぜ」
「はいはい、そのうちね」
適当にあしらう女と、適当にあしらわれても気にしない刀鬼。
魔女のラブコールを適当に流した秘訣も、ここにあるのかと思ったDr.だった。
下記よりお題を拝借
▽創造者への十のお題
http://mitoukuria.gooside.com/




