十のお題:「ほぉ~~~」
「はぁ、まったく困ったもんだね」
がっかりした面持ちで帰宅した魔女に、玄関でメスを片手に待ち構えていたDr.がどうした事かと首を傾げた。
「獲物は?」
「逃げ込まれた。まったくあの男も何を考えてるんだか」
「暇なんでしょうか? 何か新しい刺激でも与えてみたらどうです?」
「新しい刺激……」
口に手を当て、考える動作をした魔女にDr.が首を振る。
「刀鬼は駄目でしょう」
「でも気を引けそうな刺激なんてあれぐらいでしょ?」
「住む世界が違うんですから、無茶を言わないでください」
「仕方ないねぇ。それで? 当の本人は?」
「イリアと楽しそうに会話してますよ」
「イリアと?」
「はい」
さすがに驚いたらしい魔女にもう一度Dr.は深く頷いた。
「入って右の部屋にいますよ」
Dr.が扉を開けてくれるやいなや、魔女は早く見たいと言わんばかりに屋敷の中に飛び込んだが――入り口のところに立っていた久っちに激突してしまった。
「……久っち、そんなところで突っ立って、何してるんだい?」
「あれ見てよ」
指差された方を見たら、白と黒のラ・フィナ2匹とピョコたんを中心に、ワイルド系一家と刀鬼が楽しそうに談話していた。
「このふわふわ感、クッションにしたらさぞかし……どうだワイルド系、作れないか?」
「できない事はない」
「それよりガスのマフラーがいいわ♪」
「温かそうだな」
「きゅぴーーー!(魔物虐待です!!)」
「ガ、ガスが、ガスが……」
信じられないという面持ちで魔女が談話風景を指差す。
魔女達の間では、ガスはイリアに近付く見知らぬ男を片っ端から片付けると言う、物騒な伝説が囁かれている。
刀鬼の事は当然ガスは知らない。
その刀鬼がイリアの横に座っているというのに、ガスは殺意どころか敵意さえ見せず、楽しそうに刀鬼と談笑しているではないか。
「そうなんだよ、イリアに見知らぬ男が近付いても、全く敵意を見せなかったんだぜー」
「ありえない事ですね」
「最初は俺も信じられなかったよ。喧嘩になるかなーと思ったんだけど、無言で握手交わしてあの通り」
「本能……ですかね?」
ガスは元一流ハンター、危険を察知する能力は高い。
「刀鬼の反応は?」
「イリアの外見にがっかりはしてたけど、驚いたりはしてなかったな」
「ほぉ~~~」
「ガスを見て『なんだ父親似か』ってぼやいただけ」
「大物だねぇ」
「魔女様が落ちるだけあるよなー」
「まったくですね」
「うるさいね!」
側近二人のセリフに吠えた魔女だったが、その頬は少々赤かったとか。
「!?」
微かに揺れ動いた空気に、魔女が表情を険しくさせる。
「魔女様?」
「なんだ……今のは……」
「どうしました?」
「わからない、けれど確かに今何かが……」
全身の神経を張り詰め、警戒に身を固める魔女に二人もごくりと息を飲む。
こんな真剣な雰囲気の魔女はあまり見た事がなかった。
下記よりお題を拝借
▽創造者への十のお題
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