十のお題:「なんでこうなっちゃうかなぁ」
刀鬼が外で戦っている最中、Dr.と久っちは窓際でお茶を飲みながらそれを見学していた。
外に出て行って支援してもいいのだが、多分邪魔になる。
「Dr.あのアメーバって倒せるのか?」
「理論上、不可能ではないですね?」
「そうなの?」
「元はただの人間です。殺せない事はない」
「そうだったのか」
「だがあのアメーバの性質上、その方法は不可能に近い。実行に移して勝機があるならばとっくに実行してますよ」
眼鏡を上げる動作をしたDr.に久っちが頷く。
「だよな~、深い井戸に落として、這い上がれないようにするのが精一杯だったもんな」
様々な方法を試すにも、挑む前にDr.がありったけの攻撃を試してしまったので、他のメンバーに残された手段は少なすぎた。
逃げて、落とし穴に落とすのが精一杯だった。
「あのアメーバは攻撃に対して耐性を作るのが異常に速い、再生能力も兼ね備えていて、それなりのダメージを与えてもすぐ回復してしまう……まぁ足止めにはなりますけどね」
「そういえば硫酸で少し足止めできたな」
「アメーバの構成を上回る速度で攻撃すればあるいは……」
「つまり硫酸が効いてへばっている間に、他の攻撃をするって事?」
「ええ」
「それってつまりああいう事?」
久っちが外の刀鬼を指す。
完成された芸術品を見ているかのように、滑らかで優美な刀鬼の動きは戦っているという事を忘れさせるほど美しかった。
「いやいやそうじゃなく、さっきから刀鬼が凄い速度で攻撃してるんだよ」
刀鬼の動きに魅入ってしまったDr.の肩を叩き、久っちが注目すべき点を再度説明してくれた。
言われた通り戦いに目を向けると、凄まじい連続攻撃にアメーバが弱ってきている。
耐性を作るどころか再生も追いついていない。
「あ、ああ……そうだな」
容赦のない攻撃に、思わず何か相手に怨みでもあるのかと思ってしまうほどだ。
「すんげぇな、手が燃えてるぜ?」
「この世界の力ではない、ですね」
「うはー、すげー、攻撃がアメーバの体えぐったぞ」
「本当の主人公とは、きっとあんな感じなのでしょうね」
「うっわ、中身女なのに容赦ないな~」
「いやまて……」
久っちのセリフにDr.はある事実に気付いた。
「あれは――」
「ん?」
「アメーバを攻撃しているんじゃない、中の女を狙って攻撃している」
的確に決まる攻撃は確実に中のニールに届き、そしてニールに攻撃が決まるたび、アメーバが目に見えて弱ってきている。
「気付いているんだ。アメーバを動かしているのがあの女だという事に」
「刀鬼、あのアメーバの仕組み知らないよな? 教える暇もなかったし」
「ああ知らないはずだ」
「……っ」
「な、あれは――」
突然上がった二色の火柱に、Dr.と久っちが目を細める。
振り返った刀鬼が屋敷の中の二人に気付き、炎を背にニッと笑みを浮かべた。
「うわ、今、背中にぞくっときた」
「ええ私もです」
きゃあきゃあと魔女が刀鬼を賞賛する声が聞こえる。
それに対して刀鬼はピョコたんに指示を出し、淡々とアメーバを片付けている。
「あれは……明らかに人々の上に立つ者だ。賞賛と戦いに慣れている」
「指示も出し慣れてる感じがするよ」
「さて、行きましょうか、片付けも終わったようですし」
「おう」
そう言って二人は屋敷の外へと飛び出して行った。
ふ、ふふふ……
この物語の主人公は俺だ。
あの刀鬼って奴がどんなに格好良くても、用が済めば帰っていくゲストだし、俺の主人公の座は変わらない。
そうさ、主人公はこの俺。
俺だけなんだ!
顔と能力と性格と人徳だけがとりえのような奴に負けるかよ!
扉が開く音がして振り返ろうとしたディアルだったが、出て来た二人にぷきゅっと踏み潰され、地面にのめり込んだ。
それでも起き上がろうとしたのを、今度は屋敷に入っていく団体にもれなく踏み潰されてしまった。
「俺ばっかり、なんでこうなっちゃうかなぁ~」
それがディアルの残した最後のセリフだったとか。
下記よりお題を拝借
▽創造者への十のお題
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