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ディアル物語 ~ハンターから転職して魔物を守る番人になります~  作者: ユメ
お題でコラボ

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十のお題:「もう誰も失いたくない…!」

 ピョコたんを先頭に娘と刀鬼は夜の森の中を歩いていた。

 この娘といる事に一抹の不安を感じないでもないが、あいにく刀鬼は女子相手だからといって一切の容赦をするような男ではなく、何かされたら攻撃すればいっかー、ぐらいにしか思ってなかった。


「おー月が綺麗だな~」

「刀鬼の方が綺麗だわ」


 月を見上げて笑う刀鬼を見て、その横顔の美しさに娘がうっとりと言った。


「そっかー」


 娘のセリフに適当に答えながら、刀鬼は森の中を見渡していた。

 自分のいた世界とは違う、全く異質の世界だという事が森全体の雰囲気からも伝ってくる。

 この異世界はなんかどうも全体的な空気の流れが『怪しい』。


(こう、ノリが軽いというか、なんだろうなぁこの感覚?)


 剣に変わるはずが変わらなかったあの笑う花束のように、ここは刀鬼のいた世界とは何かが大きく違っている。


「へぇ森の中に花畑か、洒落てるね」

「うふふ、昼間だったらピクニックができましたのにね」

「あ、花畑の中央に誰かいるぜ?」

「……聞いてませんのね」


 自分のセリフをまるっきり無視した刀鬼に娘はがっくりと肩を落としたが、それに気付く刀鬼ではなかった。

 過去に妻がいたり子供がいたりな設定もあったが、それらが全て白紙に戻されたがごとく、女には冷たいところがある。

 ゆえに色仕掛けもぶりっ子もまったく効かない。

 娘にとっては非常にやり難い相手でもある。


「女が一人こんな森の中でなにしてるんだろうな? 魔物が出てくる森で野宿とは、酔狂な女だな」

「……あの女は……」

「まぁ俺には関係ないや、行こうぜ」

「はい」


 保護と言い出さなかった刀鬼に内心ホッとしながら、娘は頷きながら返事をした。

 と、二人が去ろうとした時だった。


「兄さま!」


 声の方を振りむいたそこにいたのは、花畑の中央に座っていたはずの女だった。

 普通では考えられない、しいて言えば悪霊の類のような素早さで移動した女が、二人の目の前に立っている事実。

 だが人間離れした素早さが当たり前な世界で生きている刀鬼は、全くその素早さを気にしなかった。

 あえて言うならば、女が刀鬼を「兄さま」と呼ぶ事に不快感を覚えた。


「兄さま!」


 走り寄ってきた女が刀鬼に抱きついた。


「このアマッ」

「っぷ」


 さっきまで大人しくしていた娘が目の前の衝撃の光景に本性を出した事に、思わず噴出してしまった。

 やっぱり反応が知り合いの魔女によく似ている。


「!?」

「いや、悪い」


 見知らぬ女が抱きついてくるのを許したのは、一重にこの娘の反応が見たかったからであり、他に理由はなかった。


「どけ」


 炎さえも凍らせるような冷たい目つきで女を引き剥がす。


「兄さま……?」


 突き放されて愕然とする女だが、あいにく刀鬼には妹がいる記憶はないし、一緒に育った血の繋がってない女、というのも存在しない。

 最初に見た女というのが世の中の闇を全てその身にとりこんだように、姿も中身も漆黒の一人の魔女だった。

 そもそもこの世界へと引き込まれた原因の本を貸し出したのもの御老体……。


(もしかしてこの娘、御老体と双子とか? ああいやでも姿見が全然違うよな~、どっちかというとこっちの方が美人……いやいや、考えるだけでも不味いなこれは)


 堪えきれない笑いが口元に浮かぶ。


「私の顔に何かついていますか?」

「っく……頼むから、大人しいふりやめて……苦しい……」

「え?」

「まぁいいや、早く嬢ちゃんの家に行こうぜ、俺眠いしー」

「はい、そうしましょう」


 腕を差し出した刀鬼に娘が自分の腕を絡めた。


「待って!」

「あ」


 もはや特技としか言い用がない。

 刀鬼は一瞬で女の存在を脳裏から消去していた。

 いる事を思い出して隣の娘を見る。

 ぎゅっと刀鬼の腕に強くしがみ付いてきた。


「怖いってわけじゃないよな、なんか……うん、怒ってる?」

「!?」


 驚きに目を見開いた娘が刀鬼を見た。

 なぜ知っているのか問う瞳。


「その女ね、その女が兄さまを誑かしたのね」


 わなわなと女が身体を震わせる。


「あ?」

「一人は嫌なの」


 すぅっと取り出したのは鋭利なナイフ。


「兄さまは死んだわ。だからもう、もう誰も失いたくない…!」


 支離滅裂な事を叫びながら、女がナイフを振りかざしながら突進してきた。


「危ない!」

「いいから下がってなよお嬢ちゃん」


 余裕の笑みを浮かべながら、庇おうとした娘を後ろに下がらせる。

 娘を刺そうと振り上げた腕を捉えて笑う。

 幾つもの修羅場を生き抜いてきた刀鬼にとって、女のナイフさばきなど子供だまし程度にしか映らなかった。


「ナイフさばきがさ、甘いんだよ」


 言うが早いかナイフが燃え上がる。

 女が悲鳴を上げてナイフを地面に投げ捨てた。


「百回ぐらい輪廻繰り返してからまたおいで」

「いやよ、一人は嫌!」


 叫びながらもう一本ナイフを取り出す。


「兄さま死んで! 死んで私とずっと一緒にいて!!!」


 ぷっきゅ~!


 なんやら可愛らしい鳴き声とともに、刀鬼の背後から半透明の何かが伸びる。


 ばちこーん


 軽快な音とともに女の体が吹っ飛び、危ない女を地面に沈めた。


「ピョコたんナイスパンチ!」


 Vサインで褒め称えた刀鬼に、ピョコたんが身体を大きく左右に揺らして応える。


「よし、目覚めないうちに行こう!」

「ええそうしましょう」


 2人と1匹は魔物の出る森に気絶した女一人を置いて、後ろも振り返らずさっさとその場を立ち去った。

下記よりお題を拝借

▽創造者への十のお題

http://mitoukuria.gooside.com/

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