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その4:望み
白い肌。
紅い唇。
細い手足。
新緑に映える美しい黒髪。
声はセイレーンのように人を惑わし、
瞳は夜空に輝く星の如く。
その身を包む黒は全てを隠す色。
「おいで、お腹が空いただろう?」
そう言って毎夜のように伸ばされる手。
後悔するとわかっていながらも、本能と甘い香りに逆らえず、私は毎夜その手を取ってしまう。
そして晒される細く白い首。
牙を立てると、痛みに眉を寄せる事も知っている。
けれど、声一つ立てずに瞳を閉じ、背中に手が回される。
怖くないから、と毎夜囁かれる言葉。
毎晩のように繰り返される秘密の儀式。
臆面もなくさらされる白い肌。
いつ私が首を食い千切るかもしれぬのに。
まるでその未来が来ない事を確信しているかのよう。
その信頼が私を苦しめる。
声に、瞳に惑わされ、一時も貴女を思わぬ時はなく。
けれど貴女が私だけのものになる事はなく
閉じ込める事すら不可能で
私に出来るのは唯一つ。
私自身が貴女のモノであり続ける事。
いつか私が貴女にとって不要になったその時は
どうか
貴女の手で
私を殺してください。
隠れ溺愛系




