その3:これは私だけのモノ
「フェリオンを創ったのは私。だからフェリオンは私のもの。それ以上でも以下でもないさね」
どうしてDr.に心を許せるのか訊ねたら、そんな答えが返ってきた。
笑いの欠片も見当たらない、冷たい表情だった。
感情を出さない魔女よりも、Dr.が『物』扱いに甘んじている事の方が驚いた。
で。
その場はそれで会話は終わって、後から重大なセリフに気が付いた。
――フェリオンを創ったのは私――
創った?
魔女様がDr.を??
どういう事だろう?
あのお得意の錬金術でちょちょいとやったのかな?
やだなぁ、あんな怖い性格の人形なんて。
でもそれはそれで納得できるけど……。
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「久っちが不思議がっていたよ」
「何をです?」
椅子に座ってくつろぐ主のため、手馴れた動作でDr.がケーキを切り分ける。
「私がフェリオンに心許している事」
魔女の言葉にDr.の手が止まった。
ほんの一瞬の出来事だったが、それを見逃す魔女ではなく、かといって何か言うわけでもなく、こっそり笑んだだけだった。
「――分かりませんよ、いつか……牙を剥くかも」
「牙ならほぼ毎晩立てているじゃないかえ、この私の首にさぁ」
白い手が首に掛かっている髪をそっとかきあげる。
そこにはくっきりと、紅い点が浮かんでいた。
照れ隠しか、それとも苦い後悔からか、Dr.はそれから目を逸らした。
「それにフェリオンは私を裏切らない」
確信に満ちた強い口調にDr.が眉をひそめる。
いつ本能が暴走し、その白い肌を、首を食いちぎるとも知れぬのに、それでも、裏切らぬと言い切るのだろうか、この人は。
「その身、その声、その体、全て私のもの、違うかえ?」
「……いいえ。違いませんよ」
小皿に乗せたケーキを渡しつつ、ハッキリと魔女の言葉を肯定した。
「貴女が望む限り、私は永遠に貴女の僕です」
Dr.の言葉ににやりと魔女が笑みを浮かべた。
「久っち、多分あれ、見たんだと思うんだよね~」
ケーキを口に運びながら、魔女が楽しそうにDr.を見上げる。
「昼間、中庭で日向ぼっこしたでしょ」
「……っ!?」
途端Dr.の顔が朱色に染まった。
「久っちは純情だからねぇ、おまけに若いし、ああいうのに慣れていないんだろうさ」
「もう二度と、あの場所ではお付き合いしません」
「だーめ、あそこはお気に入りなんだから」
「嫌です。何がなんでも」
断固拒否するDr.に魔女が楽しそうに声を上げて笑う。
でもきっと、付き合えと言われれば嫌そうに、それでも付き合ってくれるのだろう。
そう思うと笑いが止まらない魔女だった。
見られたくなかった。誰にも。
見せたくなかった。勿体無いから。
確かに私はあの人のものだけれども、その代わり、あの人も私のもの。
誰にも触れさせない、まして寝顔なんて……。
「たしかあの方法を使えば一部の記憶を排除できたはず」
ポツリと、Dr.の口から物騒な言葉が漏れた。




