SIDE:魔女
しっかしあれだよね
短パンって最強アイテムじゃないかね?
その下にタイツとか履いていたら減点だけど、あの子は素足だったよ、素足に長めの白い靴下!!!
もうちょっとだったんだけどなぁ。
そう、もうちょっと後ろへ下がれば、見えた気がするんだよ。
とちってコケちまったけどさぁ、ありゃぁ惜しかったねぇ。
短パンに気を取られちまったけど、あの子……スナイパー系だったかな?
こける直前に銃声聞いた気がしないでもない。
生足いいよねー
久っちに短パン勧めてみようかなぁ?
あー、フェリオンの短パンも捨てがたいかも。
真面目な顔して短パンはくフェリオンかー、いいな、それ。
ちょっと頼んでみようかしら?
ワイルド系はなー、なんか普通にはきこなしそうだからいいや。
マリオは――三姉妹が反対しそうだよねぇ。
あ、スナイパーと言えば、あいつ何者だったのかしら?
魔物の怪我の事もあるから、もしかして討伐隊の一人?
私を撃ったって事は私が狙いかね??
ん?
待てよ……。
私、短パンを覗こうとして、その後コケたって事は……あ、まずい、暴走が起こってる可能性がある。
特にフェリオンなんて激怒してるだろうなー。
あっちゃー、あの短パンスナイパー、もう生きてないかも、もったいなぁい。
んん~~~
目を覚まさなきゃダメよねぇ。
ええっと、体ってどうやって動かすんだっけ?
まず……そう、確か呼吸をする。
それから目を開けるんだっけ?
あちゃぁ、こんな初歩的な事忘れるなんて、私も年かね?
少し長く生きすぎたかもしれないね。
でも――野望の達成もまだだし、このまま眠るわけにはいかないわな。
久っちとヴェイルの恋の行方とやらも気になるし、イリアとガスの第二子も見なきゃいけないしねぇ、あらやだ、結構やる事あるじゃない。
そろそろ、目を覚まさないと本気でまずいかもね。
外の様子は治まってきたみたいだけど、死の臭いがかつてなく濃い。
こりゃあ、フェリオン相当怒ってるなー。
主人冥利に尽きるけどさ、ハンター全部殺されちゃ困るわけよ。
美形狩りできなくなるやん。
ハンターってさ、わざわざ森に入ってくるおばかチャン集団なわけで、行方不明になっても誰も不思議に思わないし~。
……ん?
なんか森の中で誰かが戦ってるようだね?
あれはガスと……誰あれ。
転がってるのは番人候補のディアルに似ている気がするけど……、まぁとにかくこの展開があまり友好的でないのは確かだよね。
さて本当に起きなきゃいけないねぇ。
えーっと、身体が起きないのはどうしてかね?
呼吸はしてるはずだし、けど目が開かない。
まったく人間の身体ってのは面倒だねぇ。
ここは一つ根性で身体を動かすとしようか。
ええと……美形、長髪、跪く男達、目指せ金髪碧眼ハーレム!
ハーレム、ハーレム……
「ハーーーレーーームーーー!!」
と叫びながらやっと魔女が目覚めた。
驚いたのは窓から外を見ていたノワールと看病していたヴェイル。
なかなか目覚めなくて困っていたらなんか突然、変な事を口走りながら跳ね起きた。
頭を打ったせいで、どこかおかしくなったのでは……と、ヴェイルは本気で心配した。
「よっしゃ、動いたね! さぁ行くか」
ベッドから飛び降り、さっさと部屋を出て行こうとした魔女をノワールが止めた。
「あ、ああいたんだ。悪いけど急いでるんだよ、調理場でイリアとガスが夕食の準備してるだろうから、そっちいってのんびりしていな! 治療ありがとね!」
一気にまくしたてると、ノワールの腕を振り払って魔女は飛び出ていってしまった。
「で、どうするよ?」
「調理場に……行きましょう」
「だな。んでヴェイルのために美味いもの作ってもらおうぜ」
相変わらず切り替えの早いノワールは、出て行った魔女の後は追わず、ヴェイルとともに調理場へと向かったのだった。
迷う事無くガスとディアルパパの決戦場にたどり着いた魔女は、そこで倒れているディアルの型をした人形を見た。
(あ、なるほど、これが久っちの言ってたディアル人形かー、でもあれ、背中に穴開いてるじゃん。動かせない事ないけど、タダ働きは嫌よね♪)
思いながら手を前方に伸ばし、照準をガスとディアルパパの間に定める。
「奔れ、炎」
魔女の足元に灯った炎が、ガスとディアルパパに向かって奔る。
シャァァァァ
「!?」
突如横から迫ってきた一閃の炎に、ガスとディアルパパ両名が後ろへ跳んだ。
「そこまでだよ、二人とも」
「魔女様!?」
「貴様が魔女か」
「ふぅん、ディアルの父親にしては、想像以上に屈強だねぇ。まぁいいさ、そんな事はどうでもいい」
「帰れ」と冷たい声が告げる。
だがディアルパパに引き下がる理由はなかった。
地面に倒れた息子のように、仲間も恐らく生きていまい。
寄せ集めの仲間などどうでもいいが、息子の死だけは許容できる事ではなかった。
「息子が死んだ。せめて貴様一人倒さねば、妻に合わす顔がない!」
今一度剣を構えなおしたディアルパパに「だよねぇ」と魔女が嘆息した。
「二度とこの森に近寄らないと誓えば、これ、生き返らせてやってもいいけど、どうするね坊や?」
「ディアルを? 出来るのか?」
「まぁね」
軽く肩を竦める魔女。
信じられる言葉ではないが、だが息子が生き返るのならば――。
「……頼む」
搾り出すような声で言ったディアルパパに、魔女がにんまりと笑みを浮かべた。
「契約成立さね」
ディアルパパの監視をガスに任せ、倒れているディアル人形に魔女が近寄る。
しゃがんで背中の穴に手を添える。
(動力源が生命の実じゃ近く命が絶えるから、これにアメーバの欠片を追加してー)
Dr.の目を盗んでパチってきた欠片を手早く仕込むと、満足そうに何度か頷いた。
「んで仕上げ」
掌から淡い光が発せられ、みるみるうちに傷口が塞がった。
自分の仕事に満足し、ゆっくりと魔女が立ち上がる。
「許可する。動け」
手を叩くと、パッとディアル人形が目を開けた。
「ディアル!!」
「……トウサン?」
どこかぼんやりとしながら、身体を起こしてゆるりと辺りを見回す。
「さぁこれでいいだろう? 見逃してやるから、帰りな」
「……うむ」
「トウサン?」
「ゆくぞディアル、魔女討伐は中止だ」
「……ウン、ワカッタ」
のろのろと立ち上がると、ディアル人形はパパと一緒に森を下りていった。
「は~」
二人の姿が完全に見えなくなると、ガスが大きなため息を付いた。
「つっかれた」
よほど神経を張っていたのか、何度も深呼吸をして体の力を抜いている。
「ご苦労だったねガス」
「本気の勝負は久々だったから、けっこう疲れたぜ」
「さぁ帰ろう、イリアとガスが夕食の準備してるはずだよ。マリオの人形にも助けられたから、ご馳走してあげないとね」
「おう、んじゃ帰るか!」
力強く頷いたガスが歩き出そうとして動きを止めた。
近づいてくる気配に、しまった牙を再びむき出しにしたガスに、やれやれと今度は魔女がため息を付いた。
近づいてくるのはノワールともう一人。
あれはどうしようもなくガスと相性が悪い。
普段は温厚なガスだけれども、愛妻・イリアに近付く害虫には容赦がない。
そしてノワールが連れてくるのは、その害虫に認定されてしまった。
ガサリと音がして、二人の前にノワールと連れが姿を現した。
「あー、マリオの家、けっこう壊れたから修理しないとな~」
ぼやくのは帰還した久っち。
「ふん、責任は取るさ」
「ああいや、いいよいいよ、俺がいくから♪」
ジャガイモの皮を剥きながら言ったワイルド系に、やけに楽しそうに久っちはそう返した。
「……」
「泊り込みになるだろーなー」
「……お前、動機が不純すぎないか?」
「これは純愛さ♪」
熱弁する久っちに向けられたのは、うんざりしたようなワイルド系の視線だったとさ。




