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ディアル物語 ~ハンターから転職して魔物を守る番人になります~  作者: ユメ
第三章

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SIDE:魔女

VS肥え気味(少女漫画装備)

 先発隊メンバーの一人、朴念仁な罠マニアは森で何か恐ろしいものを見たらしく、恐怖に震えたまま部屋に閉じこもり出てこなくなった。

 森に向かった他の二人はまだ帰ってこない。

 役人は魔女との共謀を疑い、マリオ宅へと向かった。

 そんな訳ないのに無駄な事を――酒場の親父は店で使うガラスのコップを拭きながら、ふん。と鼻先で役人の行動を笑い飛ばした。



 酒場の親父がコップ拭きに精を出している頃、森の中を丸くて肥えた生き物が徘徊していた。

 肥え気味はあれだ。

 魔女討伐隊の先発メンバーの一人で、酒場の親父が愛妻を奥へと隠した原因。

 それは今、その容貌と容姿には到底似合わない、綺麗で可愛らしい花が咲き乱れる花畑にいた。

 震える手で懐から少女漫画を取り出し、とあるページを見つけて不気味に笑う。


「本の通りだ」


 肥え気味の前には、薄いピンク色のレースのハンカチが一枚。

 漫画の中の場面でもハンカチが地面に落ちている。

 主人公がそれを拾うと、可憐な美少女が現れるのだ。


「へ、へへへへ、ま、間違い、ないよな?」


 神秘的に光る一枚のハンカチ。

 探し求めた美少女に出会えるチャンス。

 魔女と言う萌え単語を聞き、一度は拝んでみたいと今回の討伐に参加した肥え気味ハンターだったが、目の前にレースのハンカチを見つけた途端、本来の目的を忘れた。

 もはや魔女の事なんて脳裏にない。

 あるのはただハンカチを拾いにくるだろう、美少女との出会いへの期待のみ。

 期待が膨らめば膨らむほど、息遣いが荒くなり、怪しさと気色悪さが増してくる。

 花畑に遊びに来た魔物達もいたのだが、不気味な人間を発見し、Uターンしてどこかへと去っていった。


「もう、どこに行ったのかしら?」


 可愛らしい声とともに花畑に現れたのは、魔物達のアイドル、人妻・イリア。

 今日も今日とてふわふわなファンシーファッションに身を包み、手にはピクニック用のかごが持たれている。

 きっとここで花冠とか作りながら、あのかごに入っているお弁当を食べるのだろう。

 キタァァ! 肥え気味がよだれを垂らしながら目をぎらつかせた。

 震える手でハンカチを拾う。


「あ、あの」

「?」


 小首を傾げながらイリアが肥え気味君を見た。


「!?」


 ずさっと露骨に後ろに下がるイリア。


「こ、このハンカチ、君の、だよね?」

「きゃぁぁっ!」


 ゴス!


 荒い息を吐きながら近付いてきた肥え気味君に、イリアは一も二もなく持っていたカゴを顔面にぶつけた。

 かつて、今の夫であるガスも、この攻撃にやられ気絶した過去を持つ。

 そんな一撃必殺の攻撃を受けたヲタ系だったが――


「えへ、えへへへへ、美少女からのアタック……えへへへ、夢みたいだ」


 まったく効いていない。

 むしろなんか別の作用が出てしまったようで、不気味度がUPしてしまった。

 眉間から血を流しながら、じりじりとイリアに近付く。



「いやぁぁあああ!」



 イリアの悲鳴が花畑に響いた。


ヲタ系肥え気味ハンターが現れた!

HP200 MP50前後

攻撃力0 防御力150


 こいつなら倒せる!


 イリアはどこからか金属棒を取り出すと、殺意を込め、思いっきり肥え気味ハンターを殴りつけた。


ヲタ系肥え気味ハンター

HP250 MP100

攻撃力70 防御力200


 イリアの攻撃に肥え気味君の全ての能力が上昇した。



「ひぃやぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」



 本能的危機を感じ取り、イリアはもう「やりすぎだ」と誰かが止めたくなるぐらいの勢いで、肥え気味君をやたら滅多に殴ったり蹴ったりした。


ヲタ系肥え気味ハンター@美少女に超萌萌バージョン

HP1000 MP500

攻撃力400 防御力――想定不可能


「えへへ、か、可愛いなぁ」


 全身から血を流しながら、イリアににじり寄る肥え気味君。


 イリアの顔が引きつる。


「待ったぁぁ!」


 そこへイリアのピンチを魔物から聞き、すっ飛んできたのがワイルド系。


「てめぇ、それ以上近寄るんじゃねぇ!」

「な、なんなんだよ、お、お前は」


 完全にイッちゃった肥え気味君がワイルド系を睨む。


「ぼ、僕はその子と、お話してるんだ」


 ゆらりと取り出されたのは、腰に挿してあった斧。


「じゃ、邪魔を、するなぁぁぁ!」

「きゃぁぁ、ガイ!」

「ふんっ!」


 喚きながら切りかかってきた肥え気味君の斧を、なんとワイルド系は腕の皮一枚で受け止めた。


「おらぁ!」


 斧を薙ぎ払ったワイルド系の腕には、傷一つ付いておらず、相変わらず逞しくて素敵な筋肉が自慢げに隆々としている。


「ぼ、僕には、このハンカチがある。これがあれば、ぼ、僕に怖いものは、な、ない」


 ハンカチを顔にすり寄せながら、ハァハァと荒い息使いをする肥え気味君に、イリアとワイルド系が思いっきり顔をしかめた。


「は?」


 ボリボリと首筋をかきながらワイルド系が眉間に皺を寄せる。


「……それ……俺のだぜ?」

「う、嘘だ。そんな嘘には、騙されないぞ」

「んな嘘付くかよ」

「この淡い甘い香りが、お、おおお、お前のもので、あああああるはずが、ない」

「あー、朝からジャムとか作ったからな」

「…………」


 驚愕に目を見開いた肥え気味君の目線が、手に握ったハンカチに注がれる。

 この芸術的に光り輝くレースのハンカチは、目の前にいる美少女が作ったのではなく、いきなり現れた筋肉もりもりなワイルド系が作ったと言う。

 良く見ればワイルドな闖入者は、腰にレースのエプロンを巻いている。

 その編み方の特徴がハンカチと酷似して――――……


「げはっ!」


 肥え気味君が吐血した。

HP20 MP0

攻撃力0 防御力-80


 髪は見る見る間に白髪となり、ころころしていた体形は風船がしぼむように縮まった。


「……」

「……」


 イリア親子は顔を見合わせ、目の前のこれをどう始末すべきか悩んだ。


「俺が捨ててこよう」

「ガス♪」


 いいタイミングで現れたのは、イリアの愛する旦那様であり、ワイルド系の父である元一流ハンターガスだった。

 ワイルド系を渋くさせたような容姿が魔女のお気に入りで、今は森の警備を任されるほど信頼されている。


「親父、どこにいたんだよ、危なかったんだぜ」

「森に異変が起きてな、様子を見て回っていたんだ」

「そうだ。俺――魔女様のとこに帰る途中だったんだ」

「うむ、これは俺に任せろ、早く行け」

「わかった」

「私は魔物に送ってもらうわ」

「そうしてくれ、俺達も安心だ」

「ええガス」

「イリア……」


 うっとりと見詰め合う夫婦にうんざりし、ワイルド系は何も言わずにその場を去った。




 その頃

 マリオ宅では突如訪問してきた役人に、にこやかに微笑みながら偽マリオが対応していた。


「私が魔女と密通ですか?」

「ええ。村人の話と総合しても、そうした結論が出ております」

「困りましたねぇ、そう言われても知らないものは知らないのですが……」


 見事マリオに扮しているのは久っち。

 表面は爽やかさを装って対応しながらも、心の内は魔女のところへ駆けつけられない焦りにパニック状態だった。


 なんとか役人を口先で丸め込もうとするが、異常なほど頭が固い役人は、マリオが魔女と密通し、魔物を匿っている。の一点張りだ。

 例えマリオが魔女を本当に知らなかったとしても黒にされてしまう勢いだ。


(勘弁してくれよ)


 なんだか泣きたくなった久っちだった。

久っち「俺、Dr.に殺されないかなぁ」

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