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ディアル物語 ~ハンターから転職して魔物を守る番人になります~  作者: ユメ
第二章

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SIDE:魔女

vs巨大アメーバ

 魔女の惚れ薬が仕込まれたスープを飲み、美形の奴隷達は、あらゆる攻撃を吸収し、一瞬で耐性を作る厄介な巨大アメーバとなった。



 そんな体質のアメーバに、Dr.サディストがありとあらゆる攻撃を試したせいで、彼が試した攻撃全てに耐性を持ってしまい、今やアメーバは無敵状態。

 そんなアメーバに投げつけられたのは、最近、自分の立場を疑い始めた哀れな主人公・ディアル。

 哀れな主人公を投げたのは久っち。

 が。


「たーすーけーてー」


 アメーバはなおも生贄を求め、久っちを吸収せんと追いかけてきたのだ。

 半透明な体の中には、気絶したディアルが一匹。

 起きて脱出しないと消化されてしまうかも。

 全速力で逃げている久っちの前方に人影が見えた。


「こっちだ久っち!」

「ワイルド系!」


 白いレースの前掛けをしたワイルド系が、久っちと合流するなり一緒に走り出した。

 こうやって走っているワイルド系はかっこいい。

 レースの前掛けさえやってなければ……。

 なおかつそのレースの前掛けが、ワイルド系のお手製でなければもっといい。

 趣味は料理、しかも美味い。

 お菓子作りをさせると、並みの女ではとうてい及ばないだろう。

 縫い物等は手先の器用さの表れ、料理をしない時の暇潰しのようなものらしい。

 ワイルド系とDr.サディストは、自らの意思で魔女の元へやってきた。


 その辺の詳しい話はまた今度♪



「どうするつもりだ?」


 尋ねた久っちに、ニッとワイルド系が頼もしい笑みを浮かべた。

 前方にねずみ色の四角い建物が見えてきた。

 Dr.の研究室だ。

 がむしゃらに走っていると思ったら、ちゃんと何かを計算しての逃亡だったらしい。



「約束ですよ」

「モルモット3体と新しい研究室、忘れちゃいないよ」


 ぶつくさ言うDr.に隠れているよう指示すると、魔女はすぅっと深呼吸した。

 息一つ乱していないワイルド系と、走りすぎて汗だくの久っちが、魔女を通り抜けて建物の中に逃げ込んでいった。

 ディアルを体内に取り込んだ巨大アメーバが魔女に迫ってくる!!



 巨大アメーバが現れた!

 HP&MP:現在成長中

 攻撃力&防御力:∞

      VS

 惚れ薬研究中の魔女

 HP&MP:計測不可能

 攻撃力:殺られる前に殺る 

 防御力:攻撃は最大の防御



「“我と契約せし混沌の生き物よ、契約の名のもとに我が袂に集え”」


 魔女の口から発せられたのは、いかにもファンタジックな召喚のセリフ。

 足元に魔法陣が発動した。

 まさかまともに戦うつもりなのか!?

 アメーバの中のディアルが目を覚ました。


「*☆%$&#¥」


 アメーバの中に居る事に気付き、パニックになるディアル。


 だが悲劇はそれだけで終ってはくれなかった。


「“出でよ、マッチョォォォ!!”」




「ボンバァアアアアアアアアア!!!!」




 むきむきマッチョ2人が召喚され、アメーバに向かって一直線!

 なぜそんなものを召喚する事ができるのか?

 もはやそんなのは小さな問題だ。

 ここで問題なのは、主人公・ディアルが助かるかどうか。

 彼女も作れず、失恋連発したまま終るのか!?


(っていうか主人公死んだら連載終了だろうがぁっ!)


 パニックを起こしているディアル。

 アメーバの中、歪む視界。

 そんな視界に突然飛び込んできたのは、危険も顧みずディアルを助けに飛び込んだ絶世の美女!

 ではなく。


「どっせぇええええい!!」


 暑苦しい筋肉をむきょむきょさせた2人のマッチョ。

 逞しい腕がディアルの身体を捕まえた。


「んぎゃぁぁぁぁっ!!!!」


 アメーバの方がマシな、ぴちぴちした肌の感触。

 どうせ素肌に触れるなら美女の方が良い。

 あらゆる意味で衝撃を受けたディアルは、現実を忘れるため、一番手っ取り早い方法をとった。


「もう、いや……」


 ディアルは気絶した。



 一方、マッチョに体内を通過されたアメーバも、パニックを起こしていた。

 体内に残る気色悪いマッチョの感覚を消すため、後味のいい獲物を食べねばならぬ!

 そんなアメーバの視界に映ったのは、不敵に笑う一人の女。

 見た瞬間、アメーバは女がマッチョを召喚したのを思い出した。

 全身に這う恐怖。

 自分達がこの姿になったのは、この女のせいだと本能的に悟った。

 逃げなければならぬという思いと、排除しなければならぬという思いが同時に起こる。


「魔女様!」


 ねずみ色の建物の中から、ワイルド系が顔を出し手を振った。


 獲物だ。


 魔女が走り出すより前にアメーバは動きだしていた。

 ワイルド系が慌てて建物の中に戻る。

 不気味な音を立てながら、アメーバが建物の中に消えていった。

 その後姿を見送り、にやりと笑った魔女の足元に、なにやらほわほわとした黒い生き物がすり寄ってきた。




 かちゃりと紅茶の入ったカップが静かにテーブルに置かれた。

 窓の外の色が鮮やかなオレンジ色に染まってゆく。


「う~ん、世界は今日も美しい」


 夕日が沈めば夕食の時間だ。

 今日の夕食はなんだろうか。

 そろそろキノコが採れる時期だし、キノコのお吸い物、キノコご飯、キノコの煮物……キノコだけでも、数え切れないほど食べたいメニューがある。


「……」


 夕焼けに染まった風景を眺めながら、白々しいセリフを呟いた女の隣に、シャワーを浴びたばかりらしく、髪から水を滴らせた美形が立った。

 なんだか機嫌が悪そうだ。

 彼は久っち、白い歯と爽やかさが自慢の美青年だ。


 この女は久っちと仲間2人の主人で、彼らは女を『魔女』と呼んでいる。

 名前は別にあるのだが、人間をさらうし、怪しい薬は作る、悪魔と取引はする、怪しすぎる笑い声をたてる、ほうきに乗って空を飛ぶ、これだけ条件を兼ね備えた女を魔女と呼ばず、誰を魔女と呼ぶのだろう。


「さっぱりしたかい」


 久っちの機嫌の悪さを無視して、魔女は面白そうな笑みを浮かべた。


「せっかく久々に女の子と喋れると思ったのに」

「女の子、ねぇ」


 うーんと魔女は首をかしげた。

 魔女の膝の上では、黒いラ・フィナがぐるぐると喉を鳴らしながら目を閉じている。


「しかし今回の策は大胆でしたね」

「だろう」


 ラ・フィナがぴくりと耳を反応させた。


「ルティナも大活躍だったね」


 耳の裏をくすぐってやると、ルティナと呼ばれた真っ黒のラ・フィナが、嬉しそうに尻尾をゆらゆらさせた。




 も、もしやこの黒いラ・フィナ、北の森の!?

 何から生まれたのか誰も説明してくれず、聞くと目を泳がせ、不審なほど動揺するあの北のラ・フィナなのか!?

 なんか想像よりも普通に可愛いじゃん。

 外見もマグマのラ・フィナに比べれば、天使と呼んでも誇大ではないんじゃ?

 だけどティナは部屋の隅で硬直していた。

 視線の先には黒いラ・フィナ。

 ティナの瞳に浮かんでいるのは、紛れもない恐怖である。



 魔女の向かい側の椅子に座ると、久っちも一緒に夕日を見つめた。


「しかしまさか建物の中を、ごっそり抜くとはおもいませんでした」



 感服したと久っちが肩をすくめる。

「深さはだいたい50mぐらいかな? あれであのアメーバも悪さはできまい」

「飼いならしてどうするつもりです」

「ま、それはそのうちね」

「Dr.は――」

「ん?」

「実験材料なくなったけど、どうするんでしょうね」

「さぁねぇ」


 久っちの質問を、魔女は笑い流した。


「魔女様、お使い行ってきたぜ」

「ああご苦労様」

「ちゃんとメッセージも置いてきたぜ」

「ありがとう」

「んで」


 ワイルド系は視線をぴたりと机の上に止めた。

 久っちもあえてツッコミせず、ティナが近付いてこない原因の一つでもあるそれを、ワイルド系は無視する事ができなかった。


「なにこいつ」


 机の上でダンス(?)を踊っているのは、紛れもない、今日の主役の無敵アメーバ。

 しかしサイズは掌サイズである。


「ピョコたん」

「え?」

「ルティナの身体に欠片が付いていてね、知能もけっこうあるから飼ってみようかと」

「危なっ!」

「大丈夫、悪さをしたらルティナの餌になるだけだもんね~」


 にっこりと笑った魔女に、黒いラ・フィナは上機嫌で鳴き声を上げた。


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