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代わりたい

ある鏡は思いました。外の世界の人は楽しそうだな、でも自分だったらもっとたのしめるのになぁ、と。

 ある鏡は思いました。あ、またケンカしてる。あの子泣いてるよ? そのままにしてていいの? ほんと人間って自分勝手だよな、と。

 またある鏡は思いました。どうして死にたそうな顔をしているの? せっかく自分の意志で行動できるんだから自分でもっと楽しくしたらいいのにもったいないな、と。


 鏡たちは思いました。『もし、自分がこいつらならもっとうまくできるのにな』と......




「なぁ、もうすぐ夏休みだしどこか行く計画でも立てようぜ」


 放課後、ある三人の男子が教室で夏休みの計画を立てていた。


「まぁ、夏って言ったらやっぱ海とかか?」


「ありきたりすぎ!」


「そっかなぁ?」


「じゃあ肝試しとかどうかな」


「お、それいいな! ナイスアイデア小森!」


「でもお前怖いのとか苦手じゃなかったか?」


「前まではね、流石にもう中学生だしもう慣れたよ」


「だよな! もう中学生だもんな!」


「そんなもんかなぁ」


「で、肝試しってもどこでするんだ? 墓地とかか?」


「なら裏野ドリームランドはどう?」


「あの、廃園になったところか?」


「そうそう、ちょうど肝試しにぴったりな噂もあるしね」


「噂ってなんだ?」


「サトル知らないのか? あの遊園地、奇妙な噂がいくつもあるぞ?」


「へぇ、そうなのか! 例えばどんな噂があるんだ?」


 サトルはもうその遊園地のことで頭がいっぱいだった。


「そうだなぁ、まず遊園地自体の噂は度々子供が消えるとか、他にはミラーハウスでの入れ替わりとか、なんでもミラーハウスから出てきた人はみんな別人みたいになるんだって」


「そのミラーハウスってのは面白そうだな!」


「他にもある噂をいれて全部で七つあるらしいよ」


「小森お前やけにあの遊園地のこと詳しいな」


「知り合いから聞いたんだよ」


 裏野ドリームランドには七つの噂がある。

 一つ:裏野ドリームランド閉園の理由。あの遊園地では度々子供がいなくなるという噂。

 二つ:ジェットコースターで謎の事故。ジェットコースターで事故があったことは聞くが、どんな事故だったかを誰に聞いても答えが違うという。

 三つ:アクアツアーの不気味な生き物。遊園地が営業していた頃にも、アクアツアーで謎の生き物の影が見えるという。それは今でも見ることができるという。

 四つ:ミラーハウスでの入れ替わり。ミラーハウスから出てきた人はまるで別人みたいに人がかわるらしい。 

 五つ:ドリームキャッスルの拷問部屋。ドリームキャッスルには隠された地下があり、そこでは拷問を行えるようになっているらしい。

 六つ:廻るメリーゴーランド。メリーゴーランドが勝手に廻っていることがあるらしい。そして誰も乗ってないはずが、明かりも灯っているという。

 七つ:観覧車から聴こえる声。廃園になった遊園地、誰もいるはずがないのに観覧車の近くを通ると声がするらしい。小さい声で、「出して......」と。


「よし! じゃあ決まりだな! 夏休みの初日に三人で裏野ドリームランドへ行こう!」


「俺はまだ行くなんて一言も言ってないだろ」


「優斗、怖いのか?」


 サトシは優斗を挑発し行きたくなるように促す。


「しょうがないよ誰だって怖いものくらいあるもんね」


 小森がさらに追い打ちをかける。


「あー! もうわかったよ! 行けばいいんだろ!」


「そうこなくっちゃな! じゃあ来週の金曜日六時集合な!」


「うん、わかった」


「六時だな? わかった」


 優斗はこの時どうしても誘導されているようで気が気でなかった。





「よし! 全員集まったな! 早速潜り込むか!」


「うん、そうだね」


 現在六時五分、三人全員が集まりまさに今潜り込もうとしているところだった。夏の六時なんてまだ明るいはずなのになぜかいつもより薄暗い気がした。そして空は異常なほどに真っ赤だった。まるで赤色の絵の具でべったりと塗り手繰ったような......


「なぁ、今日なんかおかしくないか? 肝試しは明日でもいいんじゃないか?」


「何言ってんだよせっかくここまで来たんだから今更帰るとかはなしだろ」


「おーい、ここから入れそうだよ!」


 小森が手を振って指さすその先には塀に小さな穴があった。


「これなら何とか入れそうだな、流石小森!」


「まあね、じゃあ早速中に入ろうよ」


「まずは俺からはいる」


 そう言ってサトシは中へと入っていった。


「おーい、お前らも早く来いよ」


「わかった、いまいく!」


「おい、小森やっぱり行くのやめないか? 今日は様子がおかしいって」


「様子がおかしい? どういうこと? それよりサトシ君が向こう側でまってるよ、じゃあ先に行くね!」


「お、おいちょっと待てよ!」


 小森は優斗の言葉を気にせず中へと入っていく。


「もう、行くしかないか」


 優斗は半分あきらめたように勇気を振り絞って中へと入っていく、そしてくぐった先にはサトシと小森の姿はなくそこにあったのは血で真っ赤に染まった遊具だけだった。


「うわああああああああああああああ」


 衝撃のあまり優斗は叫んだ、しかし気づくとそこは自分のベットの上だった。


「夢......なのか?」


 夢というにはあまりにもはっきりとしていて現実と頭の中がごちゃごちゃになっていた。まるでほんとに現実体験したかのような夢だった。

 そして優斗は今日の日付を見ると今日が約束の金曜日だった。優斗は今のが夢でよかったと思う反面もし本当に起きてしまったらどうしようという恐怖があった。

 すると優斗のスマホが鳴り出した。


「はい、もしもしどうした? サトシ」


「今日は約束の日だぞ! ちゃんと来いよ! 六時集合だからな!」


「わかってるって」


「おお、そうか! じゃあな!」


 サトシからちゃんと覚えているかの確認だった。


「あいつはこういうことになると元気だよなぁ」


 優斗は少し落ち着き再びベットに横たわる。




 刻々と時間がながれ約束の時間が来る。


「おおやっと来たか! 遅かったな!」


「三分すぎただけだろだけだろ」


「これで三人集まったな」


「そうだね」


「ああ」


 六時でも明るく空は青く、優斗は夢で見た様子と違いほっとしていた。


「それじゃあ、忍び込めそうなところを探すか」


「そうだな」


「それなら、普通に正面から入れるよ」


「よし! じゃあ正面突破だ!」


 遊園地の前の門まで行くと普通なら閉まっているはずの門が前回になっていた。


「廃園してるのに門が開きっぱなしておかしくないか?」


「そうか? まぁ、とにかく入ってみようぜ!」


 遊園地の中へ入ると、遊具などは営業停止してからそのままの状態で放置されていた。


「まずは噂のある場所を片っ端から見て回って噂が本当かどうか確かめていこうぜ」


「じゃあ、近いところから順にみて回ろうよ」


「小森今回はすごい乗り気だな」


「そう? 久しぶりに来たからじゃないかな」


「お前裏野ドリームランドに行ったことあったのか」


「そうだよ中学入るちょtっと前にね」


「そうなのか、初耳だ」


「おーい、早く行こうぜ!」


「わかった、わかった。あいつうるさいから早く行こうぜ」


「うん」


 それから三人は噂のあるところを見て回った。


「わかってたけど噂はしょせん噂ってことかー」


 サトシはつまらなそうに歩く。


「そんなもんだろ」


「でもまだあと一つ残ってるよ」


「ミラーハウスのとこかー、でもどうせ何も起きないんだろうけどなぁ」


「起きたら起きたで困るだろ」


「でもさぁー」


「着いたよ、ミラーハウス」


「じゃあさ、ここまで何にも面白いことなかったから次は一人ずつ入っていかね?」


「めんどくさいからさっさと行って帰ろうぜ」


「そんなこと言わずさ、あ、わかった優斗怖いんだろ一人で行くのが」


「そんなわけないだろ!」


「じゃあ、べつにいいだろ、なあ? 小森」


「うん、僕はどっちでもいいよ」


「じゃあ、決まりな! しょうがないから言い出しっぺの俺から行ってやるよ」


 そう言ってサトシは一人でミラーハウスの中へと入っていった。


「ミラーハウスって鏡が置いてあるだけだよな」


「そうだね、でもここの鏡たちはいろんな場所から集められてきた鏡を使ってるんだよ」


「へぇ、そうなのか、小森詳しいな」


「今までずっと見てきたからね」


「?そうなのか......そういえばここっていつ廃園したんだっけ?」


「確か僕たちが生まれる前だったと思うよ」


「え、なら小森は何のために中学生になるちょっと前にここに来たんだ? 理由は今回と一緒だよいとこの兄ちゃんと行ったんだ」


「そうだったのか、そりゃ二度目だったら怖くはないよな」


「うん......そうだね」


「それにしてもサトシの奴遅いな」


 丁度のその時出口からサトシが出てきた。


「サトシ、どうだった? どうせ何にもなかっただろ?」


「ああ、何にもなかった」


「サトシも満足だろ、さっさと帰ろうぜ」


「何言ってるんだ、次はお前の番だろ」


「めんどくさいなぁ、ビビってるってことでいいから帰ろうぜ」


「いや、そんなことはどうでもいい、とにかく中に入ろう」


 優斗はサトシが少しおかしいことに気づく。


「お、俺は帰るからな! 小森行こうぜ」


 優斗が帰ろうとすると突然サトシが優斗の腕を掴む、優斗は明らかに様子のおかしいサトシの手を振り払い、急いで小森の腕をつかみその場から離れようとする。


「こっちだ小森!」


 しかし、小森はピクリとも動かなかった。


「こ、小森?」


 全く反応しない様子のおかしい小森に優斗は冷や汗が流れる。そして小森の口が開く。


「次は君が中に入る番だよ......」

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