再会の約束
この「小説家になろう」というサイトは、たくさんの方がユーザ登録をし、そして去っていく方も多いです。
お気に入りユーザさんが去っていくと、私はとても寂しい気持ちになります。去る者は追わず、というほうが正しいのかもしれませんが、個人的には寂しいです。
私には、非常に親しかった男性作家さんがいました。お会いしたこともなく、短いお付き合いでしたが、それでも一日に二回以上はメッセージ機能を使ってやり取りをしていました。私はお話を書くのは初心者ですが、その作家さんはたくさんの作品を書いていて、尊敬していました。メッセージで作品について真剣な話もしましたし、また、世間話や趣味の話、他の方が見たら「バカだな」と思われるような話もしていました。それだけ仲が良かったのです。
メッセージでやり取りをするようになってから半月と少し経ちました。いつものように世間話やバカな話をしていたのですが、その日に限って私は苛ついていて、彼に八つ当たりをしてしまったのです。「このサイトをやめる!」とつい書いてしまったら、返信が「じゃあ、僕が先にやめてもいいですね」とのことで、私は焦りました。苛々して本意でないことを書いてしまったにもかかわらず、作家さんは私の苛立ちは自分のせいだと思って、サイトをやめようとしていました。
そこからの私の行動はなりふり構わなかったです。彼と相互している作家さんたちにメッセージを送りまくり、引きとめるよう協力を要請しました。彼は悲鳴混じりのメッセージを私に送ってきました。大量のメッセージが彼に殺到したのです。それは私に文句も言いたくなるでしょう。でも、それだけ私は彼を引きとめたかったのです。夜中の二時過ぎまで、彼とメッセージの応酬をしました。
彼の言い分はこうでした。
「本当はもっと早く『小説家になろう』のサイトをやめるつもりでした。ただ、私とのメッセージのやり取りが楽しくて、ずるずる続けていただけなのです。だから決して私の八つ当たりでやめるわけではありません。一度作品も何もかも白紙に戻して、もう一回別アカウントでこのサイトに戻ってきます」
私はそれでも駄々をこねました。泣きながらパソコンに向かってメッセージを書いていました。仲のいい彼ともうメッセージのやり取りができないと思うだけで、胸が張り裂けそうです。そんな彼はひとつの提案をしてきました。
「では、落ち着いたらまた連絡しましょう。そうですね、あなたの代表作のブックマークと同じくらいの評価を得たら。やっぱりそれくらい欲しいじゃないですか、男なんですから」
そのとき、私は自身の代表作のブックマーク千件を目指していました。このサイトで御執筆なさっている方でしたら、処女作で千件は難しいことを理解していただけると思います。彼は最後の贈り物に、レビューを書いてくれました。千件に達するよう願いを込めて。
最後に、私達は再会するときのための合い言葉を決めて別れました。私の代表作は今現在ブックマーク千件を超えていますが、彼からの連絡はまだありません。私の代表作が千件ではなくなっても、いつか彼がブックマーク千件の作品を書いて、私に連絡してくれることを信じて待っています。
一年でも二年でも、もっと先でも――ずっとずっと待ち続けています。彼の目指す素敵な作品が書けることを、私はこのサイトから祈っています。
――――と、ずっと祈っていました。そして今日、遂に彼から連絡があったのです。私の代表作のブックマーク数をはるかに超えた作品を書いて。彼は約束を果たしてくれました。私にとってこれ以上嬉しいことはありません。
今の私は彼ほどの作品を書く実力はありませんが、それでも追いつくように、精一杯頑張って書いていきます。私が楽しんで書いて、それを読んでくださった方が楽しい気持ちになれますように。読者様に愛される作品を書いた彼を、心から尊敬しています。