見解
「いらっしゃい誠くん、どうかした?」
出てきたのは仙の母親だ。
誠が具合悪いことを仙から聞いたのかは分からないが少し驚いたような顔をしながら。
「仙いますか?」
「仙ならねさっき帰ってきたとこ今ご飯中、食べてく?」
「いえ大丈夫です 食事中にすみません…とりあえず仙と話したい事があるんで」
「いえいえ、どうぞ~ 何かあった?」
家それぞれ食事の時間というものはあるが、近所に住んでいて仲も良かった二人はそれを考えないはずもない。
普通に考えれば非常識とも思われる時間に行くのを快く許してくれるのは幼馴染故だろう。
でもいつもと違う時間に現れた誠に対して不思議そうな顔で見つめる母。
中へ入ると美味しそうな香りが鼻を擽るが、今はそれどころではない。
「仙、大丈夫か?」
「ん? おっ誠!具合悪いの大丈夫なのか?」
お互いに聞き合うが
仙は勿論なぜ朝具合悪いと言って帰った奴に逆に大丈夫?とか聞かれなきゃいけないのだと不思議な様子。
仙は勿論誠に何があったのかなど知るよしもなく、言葉を放てば皿へと箸を伸ばす。
「だから、お前は具合わりぃの大丈夫だったのかよ」
「あぁ治ったよ、というか気づいたら治ってた」
「なんだそれ… 相当具合悪そうだから心配したんだぞ お前には珍しい事だしさ」
「それより急に俺に大丈夫かってどうしたんだ? 誠がこんな時間に家に来るなんて珍しいな」
仙は茶碗を傾けるとご飯を掻き込む。
お腹が空いているのか、離せば頬は大きく膨らんでいて。
「いや、特に何も」
「っんぐふっ!ほんとかよ… 気になるだろうが」
「い、いや、気にするな」
仙のいつも通りの元気そうな表情を見てしまうと、誠は自分が心配し過ぎなのではないかと思えてその後は話を変えてしまう。
誠だって出来れば考えたくはなく、信じたくもない。そんな内容を今話した所で仙は信じてはくれまい。
もしも信じてくれた所で、不安は拭えなくとも何をどうすれば仙の為になるのかも分からない。
誠はいつも通りの対応で仙と他愛のない話をすればあっという間に時間が過ぎてしまう。
「それじゃあまた来るよ 何かあったら連絡してくれ」
「何かあったらって、何だよ」
仙家を出る誠。
外の風に髪が吹かれれば肌寒く感じる程で近くの自宅まで歩く。
一人になればどうしても不安は過ぎる。冷静に考える時間がそうさせてしまうのかもしれない。
あの男の子、クライストの目的や行動も分からない、最後に語った第二波についても気にかかる。
でも気をつけようがなく、どうすることも出来なかった。