表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/20

天職之神殿(ハローワーク)

 拝啓


 他人の優しさが目に染みる今日この頃、いかがお過ごしでしょうか。不詳、真崎(まさき) 快音(かいん)はこの度一大決心し天職に就くべく、ここ《天職之神殿(ハローワーク)》へ参上致しました。


 驚かれるとお思いすが九十九パーセントが思春期の甘い誘惑に勝てずに夢を諦め挫折してしまうため、超難関といわれている《自宅警備員(ニート)》から《魔法使(マジシャン)い》への転職(ジョブチェンジ)です。


 先程申請書類を提出したところ《履歴書(パラメーター)》は歴代トップクラスの潜在力……いえ、洗浄力(よごれおち)ではなく《潜在力(ポテンシャル)》と《天職之神殿(ハローワーク)》長官直々にお褒めの言葉も頂きました。


 現在は《転職前説明会(ブリーフィング)》の順番待ち中ですので、今度お会いできるときは立派な《魔法使(マジシャン)い》としてお会いできることと存じます。


 末筆では御座いますが、皆さまのご健勝心よりお祈り申し上げます。近くにおいでの際は是非拙宅にもお寄りください。


 敬具



「で。なんとなく最後まで読んじゃったけどなんなのコレ?」


 カウンター越しに俺の目の前で五つ年下の幼馴染みである相堤(あいづつみ)那依(ない)が肩の位置でキレイに揃えられた薄茶の髪をバサッとかきあげて俺に問う。

 しゅっとした猫目でパッと見きつい印象だが、笑うとえくぼの出来る可愛い()だ。

 まぁ二十五で可愛い()も無いんだが、小さい頃から一緒にいるのでどうもそういう表現になってしまう。それもこれも那依(ない)の兄である(がい)が俺の同級生ということもあり、小さい時から家族ぐるみのお付き合いをしてきたからだ。

 大学生の頃は見た目が完全に中学生だったので良く警察に補導されかけて「あり得ない」と憤慨しては俺に甘いものを(おご)らせていた。まぁ所謂(いわゆる)童顔チビのつるぺた体型と言うわけだ。


 昔はカイ(にぃ)なんて可愛く呼んでくれてたのに今では自宅警備員(ニート)の俺を道端のゲロの如く(さげす)んだ目で見てくる。


「いや、俺が転職(ジョブチェンジ)した時用の挨拶の手紙?」


「はぁ?ジョブチェンジって何?それを誰に出すのよ?」


 呆れ顔十割で即座に問われる。


「んー……(がい)とか?」


 とりあえず友人の名前を出してみる。


「あのね。お兄ちゃんは《自宅警備員(ニート)》の戯言(たわごと)に付き合うほど暇じゃないの!しかも《魔法使(マジシャン)い》て何コレ?就職なめてんの?」


 (おっしゃ)る通りです。でも《魔法使(マジシャン)い》に転職(ジョブチェンジ)しないとあの美女に何されるかわかったもんじゃないんです。


「いいからさ所長にこれ渡してきてくれよ。な?頼む!一生のお願い!聞いてくれたら俺の童貞あげるから!」


履歴書と希望職種の書かれた用紙を差し出しながら言う。


「ど!……そんなの要らないし!どさくさに紛れてセクハラ発言止めてくんない?というか、こういうふざけた書類出すと私が怒られるんだからね?!」


 童貞という単語に赤面しながらも至極当然の理由で拒否される。

 那依(ない)はハローワークの職員だ。その(つて)を頼ってみたもののやはりふざけていると思われたらしい。


「まぁこれが普通の反応だよな……」


 悪い忘れてくれ。と言い残してハローワークを後にした。

 去り際に那依(ない)が何か言いかけていたが無視して外に出てしまった。


 さてこれからどうするか。空は見渡す限り雲一つないの青空。

 やはり現実は甘くない。非現実的な事が起こっているなんてそもそも俺の妄想に過ぎないんじゃないか。


 そんなことを考えながらぷらぷら歩いていたら、初めてサラ(女神バージョン)と会った公園に着いた。


「はぁ……これがゲームだったとしてこんなの何が面白いんだ?とんだマゾヒストどもだな」


 池の(ほとり)のベンチに座り、空を仰いでため息と共に呟いた愚痴は青空に溶けて何事もなかったかの様に世界は回る。

 しばらく空をボーッと眺めていると遠くから俺を呼ぶ声が聞こえる。


「……さーん。カインさーん?」


「カイ(にぃ)ーどこー?」


 一人は那依(ない)の声だがもう一人は聞き覚えのない声だ。

 あ、書類ハローワークに置きっぱなしだった。あれを見られて那依(ない)が上司に怒られて犯人である俺を捕まえに来たのかもしれない。

 くそ!今日はとんだ厄日じゃないか!


 どこかに隠れる場所はないかと視線を巡らせるが、こんなだだっ広い公園に隠れる場所など当然ない。隠れるのは諦めて素直に自首することにした。


 両手を上に上げて敵意のないことを示して投降する。


「はぁはぁ……いた……カイ(にぃ)……ちょっとこっち来て……」


 それなりに走り回ったのだろう。中学時代の陸上部エースが年齢のこともあるとは言え息も絶え絶えと言った様子で肩で息をしながら手招きする。


「はぁはぁ……あなたが真崎(まさき) 快音(かいん)さんですね?」


 那依(ない)と一緒になって走り回ったのだろう。こちらも汗だくだがほんわかと良い匂いが漂ってきてドキッとしてしまう。

 髪の毛は胸の辺りまで長く弛いウェーブがかかっており良く手入れされているのかつやつやと輝いている。

 細縁(ほそぶち)の眼鏡をかけており目の色が緑と青で微妙に異なる。

格好は那依(ない)と同じハローワークの制服を着ているが、胸は比べるのも失礼なほど差があり、古い表現だがボンッキュッボンである。名札には【所長 深緑(ふかみどり)】と書いてある。


「そうですけど?」


「申し遅れました。(わたくし)、《天職之神殿(ハローワーク)》所長の深緑(ふかみどり) (あおい)と申します。以後お見知りおきを」


 そう言って(あおい)は自分の名刺を差し出した。


「はぁ……で、えーと所長さん?さっき那依(ない)に渡した書類なんですが、あれは全部俺が悪いんです。幼馴染みという立場を利用して仕事の邪魔してすいませんでした!」


 名刺を受けとるなり一気に謝罪をのべてガバッと腰を折って謝る。


「いえ、その事でちょっとお話が……お耳をよろしいですか?」


 言って俺の耳元へ口を近づけてくる。より一層良い匂いがしてきてドキドキしてしまう。


「一般の窓口にああいった書類を出されては困ると説明書(ガイドライン)に書いてあったと思うんですが……【if(イフ)】はあくまでも人間界で魔界人(まかいじん)が楽しく(ロールプレイ)ぶためのツールであって、人間も普通に生活しているんですからね!」


 小声で叱責(しっせき)されつつも耳にかかる吐息がくすぐった気持ち良くて「うへへへ」と声が漏れる。

 しかし、どうやらこの所長は魔界の事を知っているらしい。


「ごめんなさい。俺魔界の時の記憶がなくてつい最近まで完全に人間のつもりでいたんで……ルールとかそういうのまったくわからないんです」


 正直に事情を説明する。


「えぇっ!本当ですか?普通の人間で三十年間童貞を守るって、相当難易度高(ベリーハードモード)いじゃないですか!?ちょっとパラメーター見せてください!」


 言うなり額を俺に重ねる(あおい)。か、顔近いですよ!?唇がすぐそこにぃぃぃぃぃ。ひょっとこのような口で唇に向かうも絶妙に届かない。


「ちょっと動かないで!うまく入らない……ん。そこ……」


「ちょっと待ったぁーーーー!!!!!」


 なにやら(なまめ)かしい声で(あおい)が呟いたところで傍観していた那依(ない)が俺と(あおい)の間に顔を真っ赤にして割って入ってきた。


「所長!昼間っから公園でいったい何やってるんですか!?」


「何って那依(ない)ちゃんそれは秘密よ。あなたにはまだ教えられないわ。知りたかったらもう少し等級を上げてね」


 上司が部下を嗜めるように(実際その通りだが)言うと、那依(ない)は「ぐぬぬぬ」と悔しがるそぶりを見せる。


「今日は邪魔が入っちゃったから後日所長室へいらっしゃい?そこでじっくりたっぷり教えてア・ゲ・ル♪ほら、那依(ない)ちゃん戻るわよ」


 と言い残して(あおい)那依(ない)は元来た道を帰っていった。

 戻り際に那依(ない)に睨まれたのは言うまでもない。


 しかし、ゲーム内容を知っているらしい人物に会えたのは幸運だった。このままいけばうまいこと転職して記憶が蘇るかもしれない。


 そう思っていた時期が私にもありました。

男が書く女性って現実には中々いないですよね。

まぁいたらいたでその人大丈夫ですか?って心配になりますが…


まぁ何が言いたいかと言うと、所長さん僕にもおでこコツンてしてください!(*´ω`*)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ