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続:金の○○と銀の○○

ワンワン!ワン!


「いてててて。あー……タロウ?どうしたそんなに吠えて?」


ベンチに座ったまま額を擦り快晴の空を見上げながら足下で吠えている愛犬のタロウに声をかける。

なんでこんなに額が痛いんだろうか。


俺の返事があって安心したのかクゥーンと甘い声を出す。

あぁ俺が寝てたから吠えてたのか。


なんだか凄まじい夢だったな。と思いながらう~んと伸びをして視線を上から正面へ戻す。


――夢で見た美女が目の前に立ってニコニコしている。


おやおや。どうやらここはまだ夢の中だったらしい。


「あの……」


「あ!やっと気付いたのね?この寝坊助さんは!」


どうみても日本人には見えない美女が流暢(りゅうちょう)に日本語を話している。先程の夢と違うのは服装くらいだ。


黒の膝丈のタイトスカートに、胸元にフリルをあしらったブラウスの上にこちらも黒の七分袖のジャケットを羽織っており、長い栗色の髪は薄ピンクのシュシュで一左肩の上で一つにまとめられている。少し開いた胸元には瞳の色と同じエメラルドが中央に収まった十字架のような剣のようなモノが下げられている。


一見するとはオフィス街にいそうな社長秘書の出で立ちだ。


「ん?どうしたの?停止(フリーズ)しちゃって?」


いかんいかん。別に胸元を見ていたわけではないんだが、あの首から下がっているアクセサリーに少し見覚えがあるようなないような…


「いや、さっきのコスプレみたいな格好も良いけど、これはこれで……」


ありだな。最後の言葉は心の中で呟いた。


「本当?嬉しいな!こっちの服装ってなんでこう防御力低そうなのしか無いのかしらね?甲冑(アーマー)とか手甲(ガントレット)とかないとどうにも不安だわ」


はい?防御力?甲冑(アーマー)手甲(ガントレット)

何ですかその物騒なものは。


「いや、そんなの着けてたら完全に不審者でしょ」


なんなんだこの()?やっぱりちょっとおかしいぞ


「ねぇ、あなたやっぱりおかしいわね……まさか忘れているんじゃ無いでしょうね?」


どうやらあちらさんも同じ感想をお持ちのようだ。

腕を組み瞳がスッと細くなりこちらを値踏みするように下から上へ舐めるように見つめてくる。


「忘れてるって一体なにを……ちょっちょっと待った!タンマ!話が進まないから怒らないでくれ!」


夢の中で見たゴゴゴゴと聞こえてきそうな黒いオーラを身に(まと)う目の前の美女に懇願(こんがん)しながら続ける。


「まず、忘れるも何も俺は君のことを知らない……だから怒らないでってば!だいたい君みたいな美女に会っていたら忘れるはずがない!誰かと間違えているんじゃないか?!」


ここまで一気に言って様子を見る。


「やだぁ美女だなんて。確かにそれなりに自覚はあるけれど……」


自覚あるのかよ。


「でも、確かにそうね。カインなら私を見た途端に欲情して、あんなことやそんなことして……はぁんダメぇ……」


腰をくねらせ身悶(みもだ)えしながらいやらしい吐息を漏らす美女。え、エロイ……ん?


快音(カイン)は俺だけど?」


真崎(まさき)快音(かいん) 30歳 無職

自分の名前を呼ばれて遅まきながら反応する。


「え?じゃぁあっているじゃない!」


なんなのよもうっと言ってむくれる。


「おそらく名前が同じだけの別人だろう」


「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!」


くっ!こいつ美人の癖にリアクション良いな等と思っていたが、相当ショックを受けたのか、その美女は膝をつきがっくりと項垂(うなだ)れている。

可愛そうだし名残惜しいが、このまま間違えられているわけにもいかない。そろそろ夕食の用意をしなければ。

ショックを受けている美女をその場に残し、タロウと俺は家路についた。途中タロウが「いいの?」とこちらを見たので、大丈夫と答えて歩き始めたその時。


【金の砂!】


と先程の美女の声がして振り返る。


彼女の右手から撒かれた金色の砂は陽の光を受けてキラキラと輝きながら風に舞って俺の方へ届く。


【銀の砂!】


続いて言うと左手からは銀色に輝く砂が同じく俺の方へ届く。

金と銀の砂が混ざりあって俺の頭の先から足元まで土星の輪よろしくくるくる回っている。砂埃(すなぼこり)の様に()せたりしないのが不思議だ。


「えっとこれは一体どういう状況ですかね?」


砂に触れると指が切れて血がでる。なにこれ怖い……。


「あなたは私を知らないと言っていて、私はカインを探しに来たといった。そしてあなたはカインだといったのに私が探しているカインではないという」


うむ。先程までのやり取りは全くその通りだ。

でも俺が知りたいのはこの変なシチュエーションはどういうことかであって……


【だったら、とりあえずあなたを連れて帰ればいいんじゃないかな!】


そうそう俺を連れ帰ってくれれば……


「はいぃぃぃぃぃっ!?なんでそうなるの!おかしいでしょぉぉぉぉぉ?」


ワオーン!タロウの鳴き声と血が滴り地面に触れると、目を開けていられないほどの光と風が足元から立ち上る。


【あれ?やっぱりあってるじゃん!】


美女がなにか言っている。

だ、ダメだ!身体が持っていかれる……。


そう思ったのを最後に俺の意識は暗闇に溶けていった。

さて○○は砂だったのでしょうか?どこかの連ドラの様に皆様のご想像にお任せします!とはなりませんのでその内明かされます

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