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金の○○と銀の○○

【貴方が……したのは《金の○○》…《銀の○○》…《どう○○○》……ですか?】


犬の散歩がてら近所の少し大きめの公園に来た俺は、池の前のベンチで小休止しているときに、防災放送の様な骨伝導枕で聴く音楽の様な、不思議な声を聞いて辺りを見回した。


ぐるっと一周見回したが音の発生源らしいものはあれしかなさそうだ。


池の上に誰か立ってる――


確かにこの公園の池は浅いので池に立つこと事態は大人ならさほど難しくはない。そう『池の底に足をついて立つ』ならな。

だが、どう言うことか目の前にいる人?は水面に立っている様に…いや、浮いているように見える。


「疲れてるのかな?」


言ってゴシゴシと目を擦りもう一度見るがやはり水面に立っている。足元にはカリガか?古代ギリシャ人が履いていそうな、編み編みのサンダルを身に付けている。

腰には膝上のチアガールがはくような白の細かいプリーツのスカートに向こうが透けて見える薄い布がふくらはぎ辺りまで伸びている。

おへそ部分は完全に露出し括れが美しい、バストトップには白いタオル地の布が首の後ろを回り胸元でクロスして小ぶりだが形の良い両胸を覆い、胴を後ろに回りさらに前で結んでいる。

肩から胸にかけて艶々の栗色のストレートヘアが風にそよいで絶妙な角度で揺れていて艶かしい。

瞳は南国の海のように透き通ったエメラルドグリーン。

口許は淡いピンクのルージュを塗ったようにプルんとしている。


特殊な好みの人以外は百人いれば九割以上が美しいと答える容姿をしている。

そんな美女が手品師(マジシャン)よろしく水面に浮いていると言うのに、周りの人々はおろか、水面を見ながらしゃべっているカップルも気づいている様子はない。というかカップルは爆発しろ。


「うーんこれはあれか?ベンチで寝ちゃって夢見てるパターンだろうな」


非常識な現象に脳は現実的な回答を出す。


【貴方が……したのは《金の○○》…《銀の○○》…《どう○○○》の……ですか?】


先程の声の様なものがまた聞こえる。

これはあれだよな?イソップか何かの正直者は得をするって話だよな。と考えてから池になにも落としていないことに気付く。


「あれ?俺何か池に落としたっけ?肝心の落としたものがなんなのか聴こえないんだけど……」


【貴方が……したのは《金の○○》…《銀の○○》…《どう○○○》の……ですか?!】


な、なんか気のせいか段々口調がキツくなっているような……

えぇい!ままよ!


「俺はなにも落としてないですよ!」


よし。言ってやった。


【もう!なにワケわからない事言っているのよ?さっさと選びなさいよね!】


先程までの女神の様な微笑みはどこへやら。ほっぺを膨らまし、見た目以上に幼い様子でプンスカと聞こえてきそうな表情で怒られた。


「いや、そもそもあなた誰ですか?怪しすぎるんですけど……」


【……は?はぁぁっ?!あり得ないんですけど!あんた頭でも打ったの?て言うか、脳ミソの代わりに馬の(ふん)でも詰まってるんじゃないの?!】


なぜか凄い勢いで罵倒された……美女に罵倒されるという滅多に出来ない体験に何とも言えない感情が芽生える。正直悪い気がしない。


「えっと、俺の事知ってるんですか?」


どうも口調が知り合いに対するそれな気がする。


プチッ と何かが切れるような音がして……


【くぁせdrftgyふじkっlpー】


美女が声にならない声をあげて空に向かって指を掲げると、先程までの晴天が嘘のように曇りあっという間に大雨に変わった。

池の回りのカップルもキャー等と言いながら急な大雨に屋根を探して走っていく。

そして俺はというと……足をガッチリ捕まれているかの様にその場から動けない。


【ふふ、ふふふふふ、俺の事知っているんですか?うふふ、何言っちゃってるのかしらね?この寝坊助(ねぼすけ)さんは…】


美女が怒ると本当に怖い。寝坊助ってのは俺の事か?

おい早く目覚めろ俺!これはダメなパターンだ!


「ま、待て!話せば分かる!一旦落ち着こう!な?な?」


俺の必死の説得が通じたのか雨はピタッと止み目の前の美女に笑顔が戻った。……いや、目が笑っていない。


【貴方が……したのは《金の○○》…《銀の○○》…《どう○○○》の……ですか?】


先程と同じ質問をされた。金銀銅を選ばない選択肢はないということだ。チラッと美女を見るも笑顔が崩れないが、後ろには誤回答を許さないといったオーラが見える。


ゴクリ……唾を飲み込み慎重に答える。


「ぎ…」


んの…と言おうとしたところに凄まじい殺気!これじゃない!


「ど…」


うの…と言おうものなら十回は殺される!もう残ったのはあれしかない!


「金ので!」


目の前の美女がプルプル肩を震わせて下を向いてしまう。え?なんで?これも違うんじゃ打つ手なしじゃん!


「あ、あの……」


声をかけた瞬間ドーン!と盛大な音がして池の中心から俺の目の前まで水が割れて両側に壁のように(そび)え立ち道を作る。

その道を美女が俺の方へ向かって両手をあげて嬉しそうに猛スピードで翔んできて……ぶつかった。


夢の中で気絶しながら唇に柔らかい感触を感じつつ微かに残る意識で聞いていた。


【また一緒に旅が出来るね!】

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