act 7 エリカの行方
「おお、エリカよ。どうか私が助けるまで無事でいてくれ。」
王子は祈る様な思いで馬を走らせて行った。
隣りの国エルドラド王国まで…。
----同じ時刻。
エリカは眠りから覚めて仰天していた。
「これは…一体?」
「や、これはこれは姫様、お目覚めで御座いますか。」
「あ、あなた達は誰?わたくしをどうするつもりなの?」
「私共は、エルドラド王国の者。国王の命により、そなたを我が国にお連れ致す。」
「何の冗談ですの?わたくしはもうすぐディノ王子の妃になる身ですのよ?早く帰して下さいませ。」
「それはもう叶いませぬ。我が国の王妃になって頂きます。」
何それ?
て、言うかこれって誘拐じゃないの?
あ…。
『敵国の王には充分に注意する様に。』
王子が言っていたのは、こういう事だったの?
冗談じゃないわ。
そんな知らない国に連れて行かれる訳にはいかないわよ。
でも、あたしひとりじゃ何も出来ない。
王子…。
助けて、あたしはここにいるわ。
「や、今。エリカの声が聞こえた。私に助けを求めている。」
「王子、先刻この道を怪しげな馬車を引いた集団が、物凄い勢いで走り去ったと報告が。」
「それだ!馬車にはエリカがいる。…しかし、なぜむざむざと攫われたのか?」
「王子、考えてる暇は御座いません。もうすぐエルドラド王国の領地に入りますぞ。」
「おお、そうであった。国内に入られてしまっては厄介だ。」
間に合ってくれ。
エリカ、私が助けに行くまで無事でいてくれ。
王子は風の様に馬を走らせて行った。
「王子、あの馬車が怪しく思えます。」
先に到着していた将軍一団が、一台の馬車と夥しい数の馬を指して言った。
「ふぅむ…、確かに馬の数が多すぎるな。よし、あの馬車を囲むように兵を配備せよ。」
「御意!」
エリカがあの馬車の中にいるのか?
どれだけ心細い思いをしている事であろう。
今、救い出してやるぞ。
そなたの全ては私のものだと、昨夜この胸の中で誓ったであろう。
じりじりと間合いを詰めていく王子の兵士達。
一気に馬車に乗り込んだのは、ディノ王子。
が、そこにエリカの姿はなかった。
「エリカがいないぞ。あ!こ、これはエリカのドレス。これにエリカが乗せられていた事は間違いない。しかし、これは一体どういう事なのだ?」
「我々の追跡に勘付いたのやも知れませぬな。何にしても姫様の御身が案じられます。」
「くっ…、ここまで来て…。何か手掛かりになる物はないのか?」
「今近隣の捜索にあたっております。」