餓死
「おねえちゃんごめんね」
わたしは心の中でそう叫ぶのがやっとだった。
寒い。暗い。
もう何かが食べたいとか、欲しいとかの気持ちはなかった。
寒さを感じているだけであった。
せめて姉には何かを食べさせてあげたかったが、
もう私にはそのすべてを姉に与えてしまったから何もなかったのだ。
お金が欲しいと思った。
働きたいと思った。
世間に甘える気持ちはなかったけれど、生活保護の制度のある事は知っていた。
病弱な姉でも生かせてやりたかった。
私自身生きていたい気持ちがあった。
役場でもっと強く言えば良かったのかと思う。
怒鳴ってみたら良かったのか
泣き出せば良かったのかとも思う。
役場のなかは暖かかった。
温かなお茶も贅沢に感じた。喉を通る温かなものは久しぶりであった。
胃がその温かな遺物に痛くなった。
持ち帰れるものなら、お姉ちゃんにも飲ませてやりたいと思った。
お姉ちゃんがいなければこんなことにはならなかったと思ってしまった。
ごめんね
お姉ちゃんがいたから幸せだったんだよね。
いつだって二人だけでいたんだから・・
いつだって二人で見つめ合っていたんだもの
お金があってもいつかはこうなるって気がしたから・・・・
誰も恨んではいないよ
今日まで生きていられたのも
わたしたちの力ではなかったんだもの
もしもって
宝くじは当たらなかったね
当たっていれば
もう少しは生きていられたけれど
もう少しは美味しい食べ物食べさせてあげられたけれども
神様はいなかったのかなと思ったけれど
神様に召されるような気がしているから
神様はいるのかもしれないね
わたしは祈り続けてみる
「私たちの様に悲しい、淋しい死者が出ませんように・・・・」
一人の少女が現われて
1っ本のマッチに火を点けてくれた。
心の温かな人のいる世界にいけるような気がした。
今いる世界もこれから行く世界も何も変わらない
そんな気持ちの中で
わたしは神に祈り続けていた。