4月6日 遅刻
今回はLAN武さんからお借りしたキャラが登場します。
「畜生ッ!何でこんなことに!」
「兄さんが起きないからでしょう!?」
俺達は春真っ盛りの通学路を走っていた。
その理由は……聞かなくても分かるな?
「無茶を言うなマイエンジェル!!
気絶してすぐに目を覚ます奴は居ないぞ!!」
「兄さんは気絶してばかりだから、
少しぐらいは耐性ついていると思って
いたんですよ!!」
「待って!?いくら何でも耐性がつくほど
気絶はしてないよ!?」
「毎朝お母さんに気絶させられている
じゃないですか!!」
「そんなはず……あれっ!?本当だ!!」
思い返してみれば、毎朝似たような形で
気絶させられてるよ俺。
なんてこったい……そりゃ耐性がついてるって
言われもするわ。
「ほら!やっぱり兄さんが悪いんじゃないですか!」
「いやいやいや!むしろ俺は被害者だから!
悪いのは俺を気絶させた母さんだろ!?」
「お母さんは何も悪くありません!
気絶させられる兄さんが悪いんです!」
「異議有り!!裁判長、その発言に異議を
申し立てます!!」
「却下します!!」
「即却下された!?我が妹ながら理不尽過ぎるぜ
コンチクショー!!」
我が妹の理不尽さに涙を流していると--
「ぬおぉぉぉ!遅刻じゃあぁぁぁ!」
後ろから地響きのような音と共に、
聞き覚えのある声が聞こえてきた。
振り返ると、俺の友人であり共にシスコンの
道を極めんと共に日夜励んでいる魂の兄弟、
榊龍星が全速力で走ってきた。
龍星は俺達に気が付いて速度を落とし、
俺達の横に並んだ。
「ようっ兄弟!今日も遅刻か?
相変わらず寝起きが悪いな!」
「そう言うお前こそ、また孝仁さんになぐりかかって
黄泉さんに気絶させられたのか?懲りない奴だ」
「やかましいわ!俺の人生の目標は親父を
ブン殴ることなんだよ!」
「なんだよその目標は……」
会話を交えつつも学園に向かって走り続ける。
するとようやく俺達が通う柏木学園の
校門が見えてきた。
だが--
「なんてこった!もう校門が閉まってやがるぞ!!」
「飛び越えるか?」
「当然だ!澪!」
「はい?きゃッ!?」
俺は澪を横抱きにした後一気に速度を上げて
勢いをつけ、校門を塞ぐバリケードを飛び越える。
龍星も続いてバリケードを飛び越えた。
「……で?何か言うことは?」
「マジですいませんでした」
痛む体に鞭を打って我がクラスの担任であり、
母さんの双子の姉である古咲冥に向かって
綺麗な土下座をした。
あれだけ派手なことをしておきながら
結局間に合いませんでした☆
……いやな、あのあと龍星と別れて澪を
教室まで送り届けて自分の教室に急いだんだけど……
教室についた時には大分時間は過ぎていて冥さんに
コブラツイストをかけられる羽目になってしまった。
畜生……身体中が痛いぜ……
「はぁ……まあ良い、早く席につけ」
「へーい」
土下座を止めて自分の席に座る。
俺が席を座ったことを確認して冥さんはHRを始めた。
「さて、馬鹿一人が遅れて来たために
随分と遅くなってしまったが、これよりHRを始める」
「ちょ、俺を睨みながら言わないで
くれませんかねぇッ!?
皆に笑われちゃうでしょーが!!」
「笑われろ。そして惨たらしく死ね」
「ひでぇ!?それが甥に向かって言うことかよッ!?」
「お前のような甥など私は知らんな」
「……」
相変わらず俺に対して鬼のように厳しい人だぜ……
俺のガラスのハートがボロボロだ。
顔は同じなのに何でこんなに性格が違うんだろうな?
母さんと冥さん……
「……(ポンポン)」
隣の席に座っている冥さんの娘、
古咲真樹が俺を慰めるように肩を叩いてきた。
お前だけだよ。俺を慰めてくれるの……
「貴様らの担任となる古咲冥だ。
……まぁ、去年も同じだったから知っているだろうが」
「俺は知らないで~す♪先生の全てを
教えてくださ~い♪」
一人の生徒がふざけてそんなことを言い始める。
……命知らずの奴だ。そんなこと言ったら--
「……そうか。貴様の矮小な脳では、
記憶することすら出来ないのだな。
良いだろう……貴様、前へ出ろ」
「え?」
「どうした?私のことを知りたいのだろう?
教えてやるから前に出ろ」
「はぁ……?」
首を傾げながら男子生徒が教卓まで歩いていく。
さらば名も知らぬクラスメイトよ。
お前のことは五分ぐらい忘れない……はず。
「良いか?歯を食い縛っておけよ?」
「えっ?ちょ--」
そう言って冥さんは男子生徒の後ろに
立って胴に腕を回し--
「ッシャアァァァ!!」
ドゴォ!!ゴキャ!!
綺麗なバックドロップを男子生徒に食らわした。
……おい、今ヤバイ音がしたぞ。
「ふぅ……どうだ?これで思い出しただろう?」
「……」
「む?どうした黙り込んで……」
「……(ピクッピクッ)」
「……さて、HRの続きをしよう。連絡事項だが--」
痙攣してる男子生徒から目を逸らして
冥さんはHRを再開する。
あの男子生徒の容態が気になったが、
俺も命が惜しい……成仏しろよ。
俺は心の中で手を合わせた。