4月6日 鷹山家の朝
『ねぇ、何で君はいつも一人で遊んでるの?』
誰も仲間に入れてくれないんだ……
『どうして?』
分かんないよ。前までは僕も仲間に
入れてくれたのに……
『……だったらさ、俺と一緒に遊ぼうよ!』
ほ、本当!?
『本当だよ♪君と遊んだら楽しそうだからね』
ぼ、僕もそう思うっ!
『アハハッ嬉しいな♪それじゃあ、行こう!』
「……ぅお?」
間抜けな声を上げて目が覚める。
……あ~夢か。
なんか、随分と懐かしい夢を見たなぁ……
確か幼稚園の頃だったな。
周りからハブられて一人寂しく遊んでた時、
アイツが俺に声をかけてくれたんだよな。
小学校に入る前に引っ越して以来それっきりだけど……
アイツ、元気にしてるのかね?
『兄さん?起きてますか?』
昔を懐かしんでいると、ドアをノックする音と共に
我が愛すべき妹、澪の声が聞こえてきた。
フッ相変わらずの美声だ。
惚れ惚れするぜ……
「起きてるぜぃマイシスター」
『そうですか。では、朝食が出来ているので
早く降りてきてくださいね?』
「あいよー」
澪に返事をしてベッドから身体を起こす。
降りてこいって言われたし、さっさと着替えて
下に降りますかね。
……あ、まだ自己紹介してなかったな。
俺は鷹山卓郎。何処にでも居る普通の少年さ。
「おはよー母さん」
制服に着替えて一階のリビングに向かうと、
既に我が母親である黄泉が朝食を食べていた。
……いや、家族が揃うまで待とうぜ?
「おはよう卓郎。珍しく今日は早いな」
「今日は目覚めが良くてね」
「いつもそうであると助かるのだが……な」
「まっ努力はするさ」
「フッそうか……まぁ、期待はしないでおくよ」
母さんはクスリと微笑みクールに返してくる。
まぁ、俺の寝起きがすこぶる悪いことは、
母さんも知ってるからな。
その後も母さんと雑談して澪が来るのを待ち、
澪がキッチンから戻ってきてから
一緒に朝食を食べ始める。
親父はまだ寝てるだろうから待たない。
うん、美味いぜ……
「澪のご飯は美味いなぁ。
これなら何時嫁に行っても……ハッ!?
俺は今なんて言った?澪を……嫁に……?
い、嫌だっ!行かないでくれぇ澪おぉぉぉ!!」
俺のマイエンジェルが見知らぬ男に連れていかれる!
それだけは嫌だあぁぁぁ!!
「兄さん落ち着いてください!」
「ハッハッハッ相変わらず澪が絡むと面白くなるな」
「お母さんも笑っていないで止めてください!」
「澪ッ!!カアァァァムバアァァァック!!」
「兄さん落ち着いてください!私はここに居ますから!
あの、聞いてますか!?」
「いやーごめんごめん。澪が見知らぬ男に嫁ぐ姿を
想像した瞬間、冷静でいられなくなって……」
うん。正直、マジで申し訳ないと思ってる。
後悔はしてないけどな。俺シスコンだし。
「もうっ!気持ちは嬉しいですが、
もう少し落ち着きを持ってください!」
「おいおい何を言うんだい?マイプリティシスター。
母さんの血を濃く継いでる俺は常にCOOLじゃないか?」
「うむ、確かに君は私の血を濃く継いでいるな。
だが、性格は孝仁さんの血を濃く継いでいるぞ?」
「ヘイヘイマイマザー、俺が親父とそっくりだって?
コイツは面白いジョークだぜ。HAHAHA!」
流石にそれは冗談じゃないぞ母さん。
俺があのネジが抜けてる親父とそっくり?
無い無い!有り得ない!
首を横に振って母さんの言葉を否定しようと
口を開いた時、リビングのドアが勢い良く開けられ、
二十歳ぐらいの女性が入ってきた。
「おっはよーマイファミリー♪
今日も元気かな~?」
「おはよう孝仁さん。すぐにコーヒーを淹れるから
座って待っていてくれ」
「ありがとー黄泉ちゃん♪愛してるぜぃ☆……チュッ♪」
「ん……私もだ」
母さんは親父とキスをしてキッチンへと向かっていく。
……信じられるか?これ毎日やってるんだぜ?
全く……勘弁してくれって話だ。
このネジが何本も抜けてる女は、俺の親父である孝仁。
いつも部屋に篭って変な薬や機械を作ってる
発明家兼科学者だ。
……容姿については何も言わないでくれ。
誰しも認めたくないものがあるんだ。
「ボクは今流行りの男の娘だよ♪」
「言うんじゃねぇクソ親父ッ!!
認めなきゃいけなくなるだろうが!!
つーか人の心読むなよ!?」
「ごめんなしゃい☆」
「よし殺そう!今すぐ殺そう!
クソ親父ッ!!そこを動くなあぁぁぁ!!」
その後キッチンから音速を越えて飛んできた
コーヒーカップが俺に直撃し、俺は意識を失った。
母さん……いくら親父が大事だからって、
コーヒーカップは良くないと思いますよ?