始まり
これは東方projectの二次創作小説です。
登場する人物、団体、その他名称とは、いっさい関係ありません。
「ふぅ」
博麗神社、霊夢宅縁側。そこに腰を掛けて座っている少女は、博麗霊夢、この幻想郷の巫女である。
「春やで〜!」
最近冬の寒さも和らいで、暖かい春の風が流れ込んで来る。
「春やで〜!!」
その暖かい空気に微睡みながら、もう一度、温かいお茶を啜る。
「春やで〜!!!」
「…………」
「春や――」
ゴスッという鈍い音が空で響く。今まで飛んでいた妖精が、庭に落ちてくる。
「ふげっ!」
霊夢は降ってきた湯飲みを片手でキャッチすると、落ちてきた妖精の許に向かった。先程の鈍い音は、湯飲みが激突した音だったようだ。
「何するんやー!!」
落ちてきたその妖精、リリー・ホワイトは霊夢を見るなりそう言った。
「朝から春ですよ春ですよ煩いのよ! ご近所の迷惑になることを考えないの!」
「ご近所って……ここいら、家ここしかあらへんよ」
「揚げ足取ってんじゃないわよ!! 私に迷惑かかってんだから同じことでしょ!!」
拳を握り締める手がプルプルしている。リリーはその様子に寒気感じながらも、さらに反抗する。
「せやけど、私の役目は春を伝えることや。それを言えへんかったら、営業妨害やで」
そう。彼女は春を伝える妖精。それができないとなれば、存在する意味がない。春以外は活躍しないので、最近空気になりかけているの。このままでは、秋姉妹ルートまっしぐらである。
「文句あるのか?」
冷徹な目で見下ろしてくる霊夢。今にも人を殺しそうな目だ。その目に、リリーは完全に怯えた。身体の震えが止まらない。
「もうその辺にしてやれよ、霊夢。可哀想だろ」
霊夢はリリーから目を外し、声のした方を向く。そこには霊夢の親友であり、戦友でもある、霧雨魔理沙の姿があった。
「魔理沙〜〜」
リリーは、子供の様に魔理沙にすがった。魔理沙はよしよしと言いながら、抱き着いたリリーの頭を撫でる。
「何しに来たの?」
「ん〜? お前が暇してんじゃないかと思ってな、見に来てやったんだよ」
「暇人はどっちよ」
霊夢は呆れた様な顔をするが、その表情には、嬉しさが混じっている。何だかんだ言っても、魔理沙が家に来てくれるのを、楽しみにしているんだろう。
「しかしリリー、お前はもう少し場所を考えたほうがいいぞ。霊夢を怒らせたら、シャレじゃすまいんだぜ」
「今身重って体感したわ」
暗い顔で項垂れるリリー。それを見た魔理沙は、ケタケタと笑っている。
「それもそうだな」
「とりあえず、私はもう行くわ。庇ってくれてありがとな、魔理沙」
「おう! またな」
そう言うと、リリーは飛び去って行く。魔理沙はリリーに向かって手を振る。
「……」
「浮かない顔をしているわよ、霊夢」
「!?」
後ろから、急に抱きつかれて驚く霊夢。さらに耳元で囁かれたため、全身に鳥肌が立つ。
「何の用よ、紫」
首だけ紫の方に回して、服の隙間から侵入しようとしている手を、両手で止める。ちょっと油断すると、紫は霊夢の服に侵入して、身体を触ろうとする。そりゃあもう色々な所を。
「用があっちゃ、来ちゃいけない?」
「そういう訳じゃ……」
「冗談よ。本当は用があって来たの」
そう言いながら、紫はスキマから全身を出し、霊夢の横に立った。
「今からゲームをしましょう。霊夢、それに魔理沙」
「えっ?」
「……」
紫に名前を呼ばれて、振り返る魔理沙。そのまま霊夢の方に足を運ぶ。
「と言っても、私がやる訳じゃないけど。あなたたちには、参加して欲しいと思っているわ」
「あんた……何か企んでんじゃないでしょうね」
「霊夢には私がそんなに胡散臭く見えるの、寂しいわ」
そこで紫は、態とらしく泣く真似をする。
「当たり前でしょ。あんたは胡散臭さの塊なんだから。疑って損はないわよ」
「その意見には、私も同意だな」
「まぁそれは置いといて。あなたたちは基本的に、このてのゲームにはメリットを求めるから、先に言っておくわ。このゲームに優勝したら、米一年分と金一封をプレゼント」
「米一年分!!」
霊夢は目を輝かせて、口からよだれを垂らしている。魔理沙も満更でもない顔をする。
「金一封か……まぁまぁだな。それで紫、さっきから言っている、そのゲームってのは何なんだ?」
「外の世界風弾幕バトル、サバイバルゲームよ!」
「「!!」」
魔理沙と霊夢は驚愕の顔を浮かべる。
「って驚いてみたけど、何なんだ? サバイバルゲームって」
「それはまた後で話すわ。開始時間は午前12時、場所は博麗神社参道の中腹」
「あ〜あのだだっ広いところ?」
「そうよ霊夢。あそこが会場だから、遅れずに来なさいよ」
紫はそう言い残し、スキマを開いて、その中に消えていった。
「だそうよ魔理沙」
「今のは確実に霊夢に言っただろ」
魔理沙は呆れながらも返答する。
「まぁ……いい暇潰しには、なるんじゃないか?」
「そうね。面倒だけど行って上げますか」
「とりあえず時間までは、お茶にしてようぜ」
「仕方ないから、あんたのお茶も淹れてくるわ。ついでに私のも淹れ直そ」
霊夢は立ち上がり、台所の方に向かった。その間に、魔理沙は縁側に座る。
「お茶菓子も持って来てくれると嬉しいぜ」
笑いながら、当たり前の様に言う魔理沙。これはもうお決まりのトークである。
「あったら私が食ってるわよ」
そう言いつつ苦笑しながら、煎餅を木皿に移し、お茶を淹れる。
博麗神社参道。予定時間になったので、霊夢は魔理沙を連れて参道の中腹まで降りてきた。
参道は広場のようになっていて、半径60mは野原である。その外は森林が広がっていて、一度迷うとなかなか元来た道に戻ることはできない。
「おい。あそこ」
広場の中央を指差す魔理沙、霊夢もその方向を仰視する。
「あれは……」
歩きながら近付いて行く。すると見えたのは、十六夜咲夜。レミリア・スカーレット。魂魄妖夢。西行寺幽々子。鈴仙・優曇華院・イナバ(以下ウドンゲ)。東風谷早苗。それと、八雲紫。射命丸文。四季映姫・ヤマザナドゥの十人だった。
「何でこんなに大勢なのよ……」
霊夢は呆れながら紫に尋ねた。紫はクスクス笑いながら、今までの経緯を、超簡略に話す。
「この話をしたら、皆勝手に集まっただけよ」
霊夢は、本当かよ、と思いつつも、これ以上紫は話しそうにないので、他の人に事情を聞くことにする。
「あんたら、何でまたこんな胡散臭い奴の話に乗ったの」
「私は別に、そいつの口車に乗った訳じゃない。単なる暇潰しだよ」
「私はお嬢様の付き添いに来ましたわ」
レミリアと咲夜が霊夢の問に答えた。それに続くように、他の面々も答える。
「私は、幽々子様に無理矢理……」
「面白そうだったから」
「師匠が目で行けって脅すもので」
「何となくです!」
因みに、一番目が妖夢。二番目が幽々子。三番目がウドンゲ。四番目が早苗である。
霊夢は呆れて溜め息を吐く。魔理沙も苦笑している。そして、魔理沙は後の二人を見て言った。
「しかし……文はともかく、閻魔まで来るとはな。驚きだぜ」
「私はともかくって、少し酷くないですか?」
文の発言はスルーして、映姫が話出す。
「ルール条、私の力が必要と言われたのですよ。頼まれたら、断れない主義でして」
「ふ〜ん。まぁ、そういうコトにしてやるよ」
そう言いながら魔理沙は、映姫の服の懐の隙間を指差した。そこには、写真のような物がはみ出ていた。
映姫は慌ててその写真を懐に入れ直す。顔が真っ赤になる。
その様子を見て、霊夢は再度呆れた。
「さて……そろそろ時間のようね。皆、聞いて頂戴」
紫がそう言うと、皆は雑談を止め、紫の話に耳を傾ける。
「今からルールの説明をするわ。ルールは簡単、ここを中心として半径800mをバトルフィールドとするわ。
そこで、可視化した体力が0になった時点で、その人はゲームオーバー。武器は銃。かなりの種類を揃えたから、その中から一つ選んで頂戴。弾は霊弾を使うわ」
「霊弾?」
今まで静かに話を聞いていた魔理沙だったが、聞き慣れない単語が出てきたので、疑問に思い、口に出した。
それを聞いた紫は、霊弾について話出した。
「霊弾は、いわゆる霊力の塊よ。弾丸を抜いた弾に、河童の技術力を使って、殺傷能力を0にした物よ。使い方としては、打つ前に霊力を込めるだけで、他に難しいことはないわ。但し、銃によって弾に込められる霊力は変わってくるから、そこだけは注意ね。
それと銃以外に、近接武器も一種類だけ所持できるわ。けれど、近接武器を使わない人は、もう一丁銃を所持してもいいわよ。
あと、スペルカード、弾幕、飛行は禁止よ。能力はある程度までは大丈夫だから。
最後に一つ。ヘッドショットはどんな銃でも、一発で倒せるから。それと、かすりダメージは、蓄積ダメージになるから、宜しくね」
紫はそこまで話終えると、妖艶な笑みを浮かべた。
「さて、ルールは以上よ。四季様には審判をお願いしたわ、だから不正はできないわよ」
「ずるをした人には、お説教です」
ニッコリと笑う映姫。その笑顔が怖い。
そこで魔理沙が、あることに気付いた。
「文は何で、これに参加したんだ?」
魔理沙が、少し輪から外れた所にいる文に近づき尋ねた。多分一様聞いておこう、ということだろう。
「魔理沙さんのお察しの通り、だと思いますよ」
爽やかスマイルで、手帳と万年筆を魔理沙に見せる。
「今日のネタは、かなりのモノですからね」
文は、嬉しそうに、ウキウキしながら言っている。
「あやや? そろそろ始まるみたいですよ、魔理沙さん」
「んっ? そうか。それじゃあまたな」
魔理沙は文に別れを告げて、紫の所に戻った。
「それじゃあ、選手として出る人は、控え室で着替えて頂戴」
そこで紫が指差した場所。というか方向は……。
「もしかして私の家?」
博霊神社であった。
「歩いて十五分もかからないから、もってこいでしょ」
可愛らしく笑う紫。霊夢は冷ややかに見る。
「ほら、いいから着替えてきなさい」
「ちょ、ちょっと!! 紫!!」
紫に引っ張られて、霊夢は博霊神社に連れて行かれた。
「咲夜。行ってきなさい」
「お嬢様は出場なさらないのですか?」
「私は見学だ。それでも、充分暇は潰せるだろ。それと咲夜、出るからには……わかっているな?」
「……仰せのままに」
「それじゃあ妖夢、後宜しくね」
「えっ!? 私だけが出るんですか!?」
「勿論よ。私のために頑張ってね。必ずお米を持ち帰って来るのよ!」
「……わかりました! この魂魄妖夢、必ずや、幽々子様のために、お米を持ち帰ってみせます!」
「ウドンゲさん、行きましょうか」
「そうですね、行きましょう。そう言えば、早苗さんは外の人ですけど、サバイバルゲームってやったことあるんですか?」
「見たことはあります。でもやるのは初めてです! ですから楽しみで仕方ありません! あっちの世界では……」
各選手が博麗神社に向かう。因みに早苗はこの後、外の世界のサバイバルゲームはどういうものか、というものを、霊夢が止めるまで、ウドンゲに延々と話ていた。
「……さて……私も行くか」
魔理沙も、腕を頭の後ろで組んで、他の四人の後を付いて行く。
「あら……やっと来たの? 遅いわよ」
紫が霊夢たちをまじまじと見て、ニヤニヤしている。
「可愛いじゃない、皆」
「そうかしら」
着替えてきた霊夢たちは、可愛らしいと言うよりは、カッコいいと言えるが。紫にとっては、可愛いのだろう。
その可愛いと言われた、皆の衣装紹介。
霊夢はYシャツの前を開け、中にタンクトップを着ている。下はデニムズボンにスニーカーといった格好だ。タンクトップとズボンの間から見えるへそがなんとも嫌らしい。そして不思議なことに、霊夢はYシャツをちゃんとは着ずに、肩を見せる様に着ているが、なぜかずり落ちていない。それはなぜか。両方の二の腕の部分に細いベルトして、そこで固定しているからだ。
「可愛いって言われるのは、悪くないな」
魔理沙は、黒のカッターシャツの二の腕部分を切り落とした、タンクトップタイプ。それと、赤と黒のチェックスカートにブーツ。後は、いつも被っているハット。
「けど、咲夜はどちらかというと、カッコいいよな」
魔理沙は咲夜を見ながら、笑いながら言った。
「そうかしら? そこまでカッコいいとは思わないのだけれど」
咲夜は、裾を半分に切ったジャケットに、中はタンクトップ。霊夢のよりは濃いめのデニムズボンに、ブーツ。
確かに、可愛いではないな。
「そうですね。私もそう思います」
妖夢は、Yシャツに黒ベスト、スーツズボン、ローファー。執事の様な格好をしていた。
「妖夢も大概カッコいいけどな」
その格好があまりにも嵌まっているため、魔理沙は呆れながら言った。霊夢も咲夜も、それに同意する。
「そうですね。妖夢さんの衣装、カッコいいですよね」
「早苗。お前のはネタなのか? それとも素か?」
早苗は迷彩服、いわゆる軍服を着ていた。頭にはご丁寧に、ヘルメットまでしている。
「やるからにはコレでしょ!」
早苗の目には熱が籠もっていて、弱冠その情熱に皆引きぎみである。
「まぁ……そこも早苗さんの良い所ということで」
ウドンゲが、苦笑しながらホォローを入れている。相変わらず、気配りの利く良い人です。
ウドンゲは、首元が大きく開いたTシャツに、中にインナーを着ていて、ホッとパンツにヒールサンダルといった、ラフな格好をしている。
「はいはい。雑談はそこまで」
紫が手を叩き、霊夢たちの雑談を止めさせる。
「衣装が決まったら、次は銃を選んできて頂戴。様々なタイプの銃を揃えたから、選べないことはないわよ」
紫はいつの間にか庭に置かれている、沢山の銃が入った箱を扇子で差し示した。
「それが終わったら、その他の武器も選んで頂戴。因みに、近接武器以外は、種類としては、三種類しか選べないから」
そこで今度は隣に置かれた箱たちを、同じ様に扇子で差し示す。その中には、ナイフやら刀やらグレネードやらが入っていた。
「こんなの使って大丈夫なの?」
霊夢が不安そうに紫に尋ねる。
確かに、銃は本物でも実弾ではないから、相手を死に至らせることはないが。こちらのナイフやグレネードは、刺す場所や、使う場所を間違うと、相手を殺してしまう可能性がある。霊夢たちだって、殺人はしたくない。
「大丈夫よ。これら全て模造品だから。ナイフや刀は切れないし、グレネードは霊震を放つだけだから」
霊震について、一様説明をしよう。
霊震というのは、その字の如く、霊力による震動のこと。攻撃力はあまりないが、ブレイクポイントを作るのに使われる。防戦一方の時に、且つ敵が近くにいる時に霊震を使うと、敵との距離が生まれ、形成を立て直しやすいからだ。
「切れないんですか! そうですか……」
妖夢は銃よりも先に、刀を手に持って物色していたようで、切れないと知ると、とても残念そうな顔をした。
「何でそんな残念そうなんだよ」
魔理沙は呆れた目で妖夢を見る。
「でも、重さは変わらないのね」
咲夜は、手に持ったナイフを軽く振りながら、紫に聞いた。
「ええ。なるべく本物に近づけたかったから」
皆が楽しく雑談をしていると。
「あんたら早く決めなさいよ」
霊夢は悪態を吐いて、手に持った銃を紫たちに向ける。
「はい」
早苗とウドンゲを除く全員が両手を挙げ、素直に言うことを聞く。
それから数分後。
「皆決まったみたいね」
紫は皆を見渡す。
「はい。私は準備OKです」
妖夢は、ベストの中の右側にホルスターを下げ。その中に、センチメーターマルズと呼ばれる、ハンドガンを入れていた。腰には小太刀を下げている。
「この銃。けっこうカッコいいですね」
早苗は、自身の持っている銃、熊耳と呼ばれる猟銃を見て感嘆している。他には、特殊警棒やら何やらを、腰にぶら下げたり服の中に仕舞ったりしている。
「ライフルって、なんだか私にピッタリな銃な気がしますわ」
咲夜は、1m以上あるスナイパーライフル、カービングライトに、ジャケットの裏にダガーナイフを何本か、右太ももに着けたポーチの中に、グレネードを幾つか入れている。
「確かに咲夜らしいな」
魔理沙は、ウッドチェッカーと呼ばれるショットガンを右肩に担ぐ様に持ち、ウエストポーチにグレネードやトラップツールの一部をいれている。
「魔理沙さんも、らしいっちゃらしいですね」
ウドンゲは、ブラッドホォルスと呼ばれる、リボルバーガンをホルスターに入れ。ウエストポーチにグレネードを入れている。
「……」
霊夢は、自分の銃をまじまじ見ながら。
「売ったら幾らだろ?」
金の計算をしていた。
霊夢は、ホルスターを左右に下げ、左側にはコルトソウルと呼ばれるリボルバーを下げ。右側の銃、今は手に持っているが、コルグレイスと呼ばれる、少し変わった銃を選んだ。
「売らないで頂戴」
紫が釘を刺すと。冗談よと、残念そうに返した。
「それはそうと紫」
「何かしら?」
霊夢は手に持っている銃を見せて。
「何でコレは、一発しか銃弾が装填できないの?」
「そういう仕様なのよ」
「ふ〜ん。まぁいいか」
無意識でアレを選ぶとは、やっぱり霊夢の勘は鋭いわね。
紫が不穏な考えをしている間に、いつの間にか、レミリアたちが、庭にやって来ていた。
「遅いわよ! 何してるの!?」
「お嬢様!」
レミリアは、右手に日傘を持ち、左手は腰に手を当てて、憤慨している。
「待ちきれないから来ちゃった」
「幽々子様!」
幽々子は愛想を振り撒きながら、妖夢に近付く。
「あら? 四季様も?」
「その方たち、行くと申したので」
映姫は恥ずかしながら、紫に弁明した。すると霊夢が。
「……ねぇ紫」
「何? 霊夢」
「もうここから、ゲームを始めてもいいんじゃない」
「あなたがそう言うなら、私は構わないわよ。皆もいいかしら?」
そこで紫は、選手の皆を見渡す。
「構いませんわ」
「大丈夫です」
「私は平気です」
「いいですよ」
「OKだぜ」
最初に咲夜が言い。次に妖夢、ウドンゲ、早苗、魔理沙が承諾した。
「そう……なら始めましょうかしら。今から30秒後に開始ね。私がスキマで、適当な場所に送ってあげるわ。だから、直ぐに出会うなんてことはないわよ。開始はわかるように、こちらで信号弾を撃ちます。フライングはしないでね」
そこで皆、映姫を見る。
映姫は、ニコニコと笑っている。
「それじゃあ……行ってらっしゃい」
紫が指パッチンをすると、霊夢たちの足下にスキマが生成される。それに皆飲み込まれ。
「よっと」
次の瞬間には、森の中にいた。
霊夢は無事着地を成功させ、ホルスターに入れたコルトソウルに手を当てて、辺りを警戒する。
「取り敢えず、注意すべき相手は、咲夜かしらね」
そんなことを呟いて考えていると、ひゅ〜〜という音が響く。
その瞬間、森の各地にいる選手は、同時にその光源を見る。
バァァァンと、花火が花開く。試合開始の合図だ。
「さてと……」
霊夢は、先程花火が撃ち上がった場所から視線を外し。
「やりますか」
気怠そうな気合いを入れた霊夢は、どこぞに向かって歩きだす。
―――東方サバイバルゲーム スタート―――