第八話 英雄の凱旋と歓待
飛燕は、戦場で圧倒的な勝利を収め、英雄として京へ帰還した。
黎明は、京の城門まで飛燕を迎えに出た。周囲の歓声が響く中、黎明は飛燕の甲冑の血と泥を気にもせず、彼の腕に抱きついた。
「飛燕! 貴方は、生きて、無傷で帰ってきた! 私を裏切らなかった!」
黎明の瞳から、安堵の涙が流れ落ちた。その姿は、周囲の貴族たちの目に「皇子が寵愛する将軍への熱烈な愛」として映った。
その夜、黎明は飛燕のために、豪華絢爛な宴を開いた。しかし、飛燕の婚約者である春蘭や、飛燕の友人の姿は、どこにも見当たらなかった。
「殿下。春蘭殿は……?」
飛燕が尋ねると、黎明は冷たい笑みを浮かべた。
「ああ、あの女か。貴方が戦場にいる間、彼女は貴方に相応しくない行動をとった。宮廷の規律を乱すわけにはいかぬ。既に、彼女の家には、婚約破棄の文を送ってある」
飛燕は愕然とした。
「な、何をなさったのですか!?」
黎明は、飛燕の手を強く握りしめた。
「貴方は、私のものだ。貴方を愛する資格があるのは、この世でただ一人、私だけだ。貴方の心の隙間に、他の誰の影も映させはしない」
黎明の愛は、もはや病的な独占欲であり、彼のヤンデレの本性が、完全に露呈した瞬間だった。飛燕は、この皇子から、逃れることはできないと悟った。




