第十話 独占欲の境界線
ある夜、飛燕が黎明に背を向け、眠りにつこうとした時。
黎明は、飛燕の耳元で、嫉妬と独占欲に満ちた声を囁いた。
「貴方は、今、何を考えている? まさか、あの女のことを考えているのではないだろうな?」
飛燕は、黎明の束縛に息苦しさを感じながらも、正直に答えた。
「……いいえ、殿下。わたくしは、ただ、戦場での血生臭さを思い出していただけです」
「嘘だ」黎明は、飛燕の髪を強く掴み、自分の方に向かせた。
「貴方の瞳は、嘘をついている。私以外の誰かを、夢に見ているのだろう」
黎明の愛情は、もはや恐怖だった。
「殿下、わたくしは、あなたに忠誠を誓っています。わたくしの心は、殿下に……」
「言葉などいらぬ!」
黎明は、飛燕の唇を塞いだ。そのキスは、確認であり、支配だった。
黎明は、飛燕の肌に自分の痕跡を刻みつけ、彼の全てを自分のものだと主張した。
「貴方の身体は、私の愛を求めている。それを認めろ、飛燕。貴方は、もう私なしでは生きられない」
黎明の激しい愛撫と、彼の病的なまでの情熱に、飛燕の身体は正直に反応した。
「ああ……殿下……」
飛燕の口から漏れるのは、もはや抵抗ではなく、黎明の名だけだった。
飛燕は、黎明の愛の鎖の中で、初めて本当の安らぎを見つけた。彼は、もうノンケの自分と、黎明のヤンデレな愛との間で葛藤することをやめた。彼の心は、完全に黎明に絆されていた。




