過去への扉
待っててね、しおりちゃん。
私が必ず、あなたの過去の謎を解き明かしてみせるから。
その誓いを胸に、私はぎゅっと拳を握りしめた。
次の日の放課後。
私は一人、電車に乗り、隣の県へと向かっていた。
ガタン、ゴトン。
規則正しい揺れが、私の緊張した心を少しだけほぐしてくれる。
窓の外を流れていく、見慣れない景色。
この道の先に、しおりちゃんの過去がある。
電車を降り、バスに乗り換え、そして歩くこと数十分。
私はついに、その場所へと辿り着いた。
市立第六小学校。
どこにでもある、ごく普通の小学校。
だが、ここが全ての始まりの場所なのだ。
私は一度大きく深呼吸をし、そして意を決して校門をくぐった。
向かう先は、職員室だ。
ガラス戸をそっと開けると、数人の先生たちがこちらを見た。
「…あの、すみません!私、第五中学の三島あかねと言います!少しだけお話を伺ってもよろしいでしょうか!」
私は元気よく、そして礼儀正しくそう言った。
一人の年配の先生が、穏やかな笑みで私に近づいてきてくれた。
「第五中学?ああ、あの卓球の強い…。それで、どうしたんだい?」
「はい!実は今、うちの卓球部に静寂しおりさんという生徒がいまして。彼女、ここの卒業生だと思うんですけど…」
私がその名前を出した瞬間。
職員室の空気が、ほんの少しだけ変わったのを、私は見逃さなかった。
「…静寂さん…ああ、あの大人しかった…」
先生の表情が、少しだけ曇る。
「彼女のことで、何か…?」
「はい。実は、彼女の小学生の頃の担任の先生に、少しだけお話を伺いたくて。今もこちらにいらっしゃいますでしょうか?」
私のその言葉に、先生は少しだけ考え込むように腕を組んだ。
そして、彼は言った。
「…ああ。確か、今の六年生を持っている鈴木先生が、そうだったはずだ。少し待っていなさい。今、呼び出してくるから」
「ありがとうございます!」
私は深く、頭を下げた。
心臓が、ドキドキと高鳴っている。
いよいよだ。
いよいよ、本当の真実にたどり着ける。
やがて、奥から一人の女性の先生が現れた。
鈴木先生だ。
彼女は私の顔を見ると、驚いたように目を見開いた。
そして、彼女は私の後ろに誰もいないことを確認すると、静かに、そしてどこか悲しそうな声で私に問いかけた。
「…あなたが三島さん?…しおりちゃんは、一緒じゃないのね」
その一言で、私は確信した。
この人こそが、しおりちゃんの過去を知る、鍵なのだ、と。
私はゴクリと唾を飲み込み、そして彼女の次の言葉を待った。




