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異端の白球使い  作者: R.D
第二期 引き継がれる異端

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過去への扉

 


 待っててね、しおりちゃん。


 私が必ず、あなたの過去の謎を解き明かしてみせるから。


 その誓いを胸に、私はぎゅっと拳を握りしめた。


 次の日の放課後。


 私は一人、電車に乗り、隣の県へと向かっていた。


 ガタン、ゴトン。


 規則正しい揺れが、私の緊張した心を少しだけほぐしてくれる。


 窓の外を流れていく、見慣れない景色。


 この道の先に、しおりちゃんの過去がある。


 電車を降り、バスに乗り換え、そして歩くこと数十分。


 私はついに、その場所へと辿り着いた。


 市立第六小学校。


 どこにでもある、ごく普通の小学校。


 だが、ここが全ての始まりの場所なのだ。


 私は一度大きく深呼吸をし、そして意を決して校門をくぐった。


 向かう先は、職員室だ。


 ガラス戸をそっと開けると、数人の先生たちがこちらを見た。


「…あの、すみません!私、第五中学の三島あかねと言います!少しだけお話を伺ってもよろしいでしょうか!」


 私は元気よく、そして礼儀正しくそう言った。


 一人の年配の先生が、穏やかな笑みで私に近づいてきてくれた。


「第五中学?ああ、あの卓球の強い…。それで、どうしたんだい?」


「はい!実は今、うちの卓球部に静寂しおりさんという生徒がいまして。彼女、ここの卒業生だと思うんですけど…」


 私がその名前を出した瞬間。


 職員室の空気が、ほんの少しだけ変わったのを、私は見逃さなかった。


「…静寂さん…ああ、あの大人しかった…」


 先生の表情が、少しだけ曇る。


「彼女のことで、何か…?」


「はい。実は、彼女の小学生の頃の担任の先生に、少しだけお話を伺いたくて。今もこちらにいらっしゃいますでしょうか?」


 私のその言葉に、先生は少しだけ考え込むように腕を組んだ。


 そして、彼は言った。


「…ああ。確か、今の六年生を持っている鈴木先生が、そうだったはずだ。少し待っていなさい。今、呼び出してくるから」


「ありがとうございます!」


 私は深く、頭を下げた。


 心臓が、ドキドキと高鳴っている。


 いよいよだ。


 いよいよ、本当の真実にたどり着ける。


 やがて、奥から一人の女性の先生が現れた。


 鈴木先生だ。


 彼女は私の顔を見ると、驚いたように目を見開いた。


 そして、彼女は私の後ろに誰もいないことを確認すると、静かに、そしてどこか悲しそうな声で私に問いかけた。


「…あなたが三島さん?…しおりちゃんは、一緒じゃないのね」


 その一言で、私は確信した。


 この人こそが、しおりちゃんの過去を知る、鍵なのだ、と。


 私はゴクリと唾を飲み込み、そして彼女の次の言葉を待った。

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