表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異端の白球使い  作者: R.D
第二期 引き継がれる異端

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

545/694

過去を辿る糸口 (4)

 私は自室のベッドの中で、静かに、そして確かに、次なる一手への決意を固めるのだった。


 色々とシミュレーションしたが、結局、結論は出ないまま次の日の放課後を迎えてしまった。


 どの作戦も一長一短。リスクが高すぎる。


 でも、もう後戻りはできない。


 私は意を決して、ひとまず中央小学校へと向かった。


 何か行動すれば、きっと新しい道が開けるはずだ。そう、信じて。


 バスに揺られること数十分。


 私は中央小学校へと到着した。


 目の前には大きな校門。そして、そこから元気な声と共に小学生たちが出てくる。


 …いい手は、思い付いてない。


 どうしよう。


 やはり、新聞部作戦で強行突破するしかないのだろうか。


 私がそう思い悩み、校門の前をうろうろしていた、その時だった。


「――あれ?その制服は…第五中学の生徒さん?」


 不意にかけられた声。


 振り返ると、そこには人の良さそうな笑顔を浮かべた中年の男性が立っていた。


 ジャージ姿からして、恐らくここの先生だろう。


(まずい、不審に思われた…!)


「あ、は、はい!そうです!」


 私はとっさに、いつもの人懐っこい笑顔を顔に貼り付けて答えた。


「そうか、そうか。やっぱりそうか」


 先生は、にこやかに頷く。


「いや、もしかしたらと思ってね。君、静寂しおりさんっていう生徒、知ってる?」


 その、あまりにも予想外の言葉。


 私の心臓が大きく跳ねた。


「は、はい!知ってます!同じ部活です!」


「おお、そうか!やっぱりな!」


 先生は、心底嬉そうに言った。


「いや、実はね、私、あの子がこっちに転校してきた時の担任だったんだよ。いやー、あの子が全国大会で優勝するなんて大したもんだ。今、ちょうど生徒の見送りに校門に立ってたんだが、君の制服が目に入ってね」


(…なんて幸運…!)


 私は心の中でガッツポーズをした。


(神様、ありがとう。最高のチャンスを与えてくれて!)


 私はここぞとばかりにスマートフォンを取り出し、しおりちゃんの写真を見せながら人懐っこく話し始めた。


「そうだったんですか!先生、見てください、これ!この前の、全国大会でのしおりちゃんの写真なんです!すっごく、かっこよくないですか!?」


「おお、本当だ!すごいな、あの子は!」


 私は大会の振り返りなどを興奮気味に話し、そして最後に、本題を切り出した。


 あくまでも、自然に。


「それで先生、私たち新聞部と合同で、今度しおりちゃんの特集を組むことになったんですけど、もしよかったら、小学生の時のこと、少しだけ聞かせてもらえませんか?」


 私のそのキラキラとした瞳と熱意に、先生はまんまと乗せられてくれた。


「おう、いいとも!任せとけ!あの子のことなら、何でも知ってるからな!」


 先生はそう言って、懐かしそうに目を細め、そして語り始めた。


 私の知らない、しおりちゃんの過去の物語を。


 私の探偵としての最初の大きな一歩は、こうして、あまりにも幸運な形で踏み出されたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ