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異端の白球使い  作者: R.D
第二期 引き継がれる異端

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過去を辿る糸口 (3)

 私は夜の街へと駆け出した。


 冷たい空気が、火照った頬に心地よい。


 しばらく走り続け、学校から十分に離れたことを確認してから、私はようやく足を止めた。


 そして、手の中のスマートフォンを見る。


 そこに写し出された一枚の写真。しおりちゃんの個人情報が書かれたファイルだ。


『転校先:市立中央小学校』


『転校元:市立第六小学校』


 私はその二つの名前を指でなぞり、すぐにスマートフォンの地図アプリで場所を検索した。


(…やっぱり)


 私の予測通りだった。


 転校元の市立第六小学校は、この市ではない。葵ちゃんが住んでいる隣の県の市だ。


 そして市立中央小学校は、ここから遠いとはいえ、この付近の小学校だということが分かった。


(しおりちゃんは一度、葵ちゃんの街からこの街の中央小学校へ転校し、そこからまた今の第五中学の学区へ引っ越してきた、ということなのかな…?)


「…明日の放課後、向かってみよう」


 私は決意した。


 まずは、この街にある中央小学校からだ。そこに何か手がかりがあるはずだ。


 再び自宅への道を辿りながら、思考を巡らせる。


 問題は、どうやって聞き込むかだ。


 ただ漠然と「静寂しおりさんのことを教えてください」なんて言っても、誰も教えてくれるはずがない。個人情報の壁は、今の時代、あまりにも厚く高い。


(…ならば)


 私の頭の中で、いくつかのシミュレーションが始まった。


【パターンA:『卒業生を装う』作戦】


「すみません、私、ここの卒業生なんですけど、昔のアルバムを見せてほしくて…。静寂しおりちゃんって、覚えてますか?」


 …ダメだ。顔ですぐにバレる。却下。


【パターンB:『新聞部』作戦】


「第五中学新聞部の三島と言います!今、全国大会で優勝した静寂しおり選手の特集を組んでおりまして、彼女の小学生時代のことを少しだけ取材させていただけませんか?」


 …これなら、いけるかもしれない。でも、先生に確認されたら一発で嘘だとバレる。リスクが高い。


【パターンC:『生徒を狙う』作戦】


 学校の先生ではなく、そこに通っている生徒たちに直接話を聞く。


「ねえねえ、君たち、静寂しおりって先輩、知ってる?」と。


 …これも不審者として通報されるリスクがある。


(…難しい)


 家に着く頃には、私の思考は完全に明日の聞き込みのシミュレーションに切り替わっていた。


 どの作戦が最も効率的で、そしてリスクが低いのか。


 その最適解を見つけ出すために、私の頭脳は、しおりちゃん譲りの分析能力をフル回転させていた。


 そうだ。


 私はもう、ただのマネージャーじゃない。


 しおりちゃんを守るための、そして真実を暴くための、探偵なんだ。


 私の本当の戦いは、今、この瞬間から始まっている。


 私は自室のベッドの中で、静かに、そして確かに、次なる一手への決意を固めるのだった。

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