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異端の白球使い  作者: R.D
第二期 引き継がれる異端

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過去を辿る糸口 (2)

 その誓いを胸に、私は夜の校舎へと駆け込んでいった。


 昼間とは全く違う、静まり返った学校。自分の足音だけが、不気味に響く。


 幸い、用務員さんが使う通用口は鍵が開いており、私はなんとか校舎への侵入に成功した。


 ここからが問題だった。


 目的の場所は二階の職員室。しかし、その窓からは煌々と灯りが漏れている。


 当直の先生が、まだ中にいるのだ。


 私は廊下の物陰に身を潜め、息を殺してその時を待った。


(早く、早く、見回りに行って…!)


 時計の針の音だけが、やけに大きく聞こえる。


 一時間、二時間…どれほどの時間が経っただろうか。


 そして、ついにその時が来た。


 椅子を引く音、そして、ドアが開く音。


 当直の先生が懐中電灯を片手に、廊下へと出てきた。


 その足音がゆっくりと遠ざかっていくのを確認してから、私は職員室へと滑り込んだ。


 中は、シーンと静まり返っている。


 私は痕跡を残さないよう、慎重に、生徒の個人情報が保管されているであろうキャビネットの引き出しへと向かう。


 鍵は、かかっていなかった。幸運だった。


 五十音順に並べられたファイルの中から、まず自分の名前を見つけ出す。


「…あった」


 しおりちゃんのファイルは、そのすぐ近くにあるはずだ。


 私は焦る気持ちを抑えながら、ファイルを一枚、また一枚とめくっていく。


 そして、ついに**「静寂 しおり」**と書かれたファイルを見つけ出した。


 その時だった。


 廊下の向こう側から、当直の先生が戻ってくる足音が聞こえた。


(まずい…!)


 私は焦りながらも素早くスマートフォンを取り出し、ファイルの必要な部分だけを写真に撮る。


 そして、ファイルを慎重に元の場所に戻し、引き出しを閉めた。


 足音は、もうすぐそこまで迫っている。


 私は職員室の反対側のドアへと駆け寄る。


 先生がガチャリとドアノブを回した、そのギリギリのタイミングで、私は入れ替わるように職員室から脱出した。


 心臓が、破裂しそうだ。


 私は足音を立てないように、抜き足差し足で一階へと向かう。


 そして、用務員室の近くの窓の鍵を開け、そこから校庭へと滑り降りた。


 月明かりの下、私は一度だけ校舎を振り返り、そして学校を後にした。


 手の中のスマートフォンには、しおりちゃんの過去へと繋がる、ただ一つの手がかりが写っている。


『転校先:市立中央小学校

       転校元:市立第六小学校』


 その文字を、私は強く握りしめた。


 私の捜査は、まだ始まったばかりだ。


 この闇を照らす、太陽になるために。


 私は、夜の街へと駆け出した。

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