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異端の白球使い  作者: R.D
全国大会
494/674

小笠原 凛月 (8)

 その、あまりにも直接的な言葉に、その場の全員が、一瞬だけ固まり、そして、次の瞬間、大きな笑い声に包まれた。


 私は少し、顔を赤くしながらも、笑っていた。


 そうだ。


 この、温かい空気。


 私はこの、不思議で、そして最高に面白いチームの、ことを、もっともっと、知りたくなっていた。


「よーし、これで俺もしおりも、決勝進出だな!」


 一通り、笑いが収まった後、部長さんが、パン!と手を叩いた。


「次が、とうとう決勝か。」


 彼のその言葉に、体育館の空気が、再び引き締まる。


「よかったですね、部長。決勝でデュースを演じれば、会場も盛り上がりますよ」


 静寂さんが、平坦な声で、そう言った。


 その、言葉に、部長さんが、食ってかかる。


「おい、しおり!俺はいつだって、真面目にやってんだぞ!」


「ふふっ。まあまあ、部長先輩。しおりちゃんも、応援してるんですよ、きっと」


 マネージャーのあかねさんが、笑顔を浮かべながら、仲裁する。


 その、いつも通りのやり取り。


 だが、私の目は、その隣の光景に、釘付けになっていた。


 あの太陽のようは少女、日向さんが、ごく自然に、静寂さんの隣に座り、そして、その腕に、自分の腕を絡ませている。


 その距離感は、もはや親友というよりも、恋人のように、ベタベタしていた。


「ねえしおり。決勝、絶対勝ってね?私、ずっと応援してるから」


「…はい。分かっています、あお」


 静寂さんは、そのあまりにも親密な、スキンシップを、特に気にする様子もなく、受け入れている。


(…な、なんなんだ、このチームは…)


 私の思考が、完全にフリーズする。


 五月雨中学の、あの、規律と緊張感に満ちた雰囲気とは、全く違う。


 あまりにも自由で、そして人間臭い。


 そのチームのやり取りが、一通り落ち着いた中、静寂さんが、ふと、私の方に向き直った。


 私と静寂さん、二人で、さっきの試合を振り返る。


「…小笠原さん」


「な、何かな、静寂さん」


「あなたの、卓球。非常に興味深いデータが取れました。特にあの第三セットでの、戦術の切り替え。あれは、私の予測を僅かに、上回っていた」


 彼女のその、あまりにも分析的な言葉。


「…あなたこそ。あの、最後のカウンター。そして、アンチラバーで回転を残すあの技巧、あのプレー。あれは、もはや魔法だよ」


 私が、そう言うと、彼女は、ほんの少しだけ、口元を緩ませた。


「…魔法では、ありません。あれは、私が仲間たちと共に掴み取った、新しい『解』です」


 その、言葉。


 その瞳に宿る、確かな光。


 私は、その時確信した。


 この少女は、まだ強くなる、と。


 もっともっと、誰も手の届かない高みへと。


 そして私は、そんな彼女と、もう一度戦ってみたい、と、心の底から、そう思った。

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