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異端の白球使い  作者: R.D
全国大会
483/674

終わる二回戦

 その光景に、私の口元が、ほんのわずかに緩んだ。


 この不器用で、そして、誰よりも優しい大人といる時間は、決して悪いものでは、なかった。


 私は、彼からいくつかの軽いお菓子が入ったビニール袋を受け取った。


「…先生。そろそろ部長が勝つ頃でしょうから、戻りましょう」


「お、おう。わかったぜ」


 私がそう言うと、先生は、大量の飲み物などが入った、重い袋を両手に持ち、そしてそれを運んでいく。その姿は、少しだけ滑稽で、そして、どこまでも優しかった。


 体育館へと戻る道すがら、先生は嬉しそうに、自分の家族の話をしてくれた。


 奥さんの手料理が、いかに美味しいか。


 息子が最近、サッカーを始めたこと。


 娘が俺に似て、腕白で大変だ、ということ。


 その一つ一つのエピソードは、私の知らない世界の話だった。


 だが、その彼の話を聞いていると、私の胸の奥が、またぽかぽかと、温かくなっていくのを感じていた。


 観客席に戻ると、ちょうどAコートから、ひときわ大きな歓声が、上がった。


 部長が、最後の一点を決めたところだった。


 スコアボードには「15-13」という、数字が表示されている。


(…また、デュースか。詰めが、甘かったんだろうな)


 私はそう想像しながら、未来さんとあおが待つ場所へと、向かった。


 あおたちが、私たちに気づき、手を振っている。


「しおりー!先生ー!こっちこっち!」


 私たちは、彼女たちと合流し、観客席に腰を下ろす。


 コートの中では、部長が天に向かって、雄叫びを上げていた。


 その彼の元へと、対戦相手が歩み寄り、そして、固い握手を交わしている。


 良い、試合だったのだろう。


 やがて部長とあかねさんが、こちらへと、戻ってくる。


 その表情は安堵と、そして、勝利の喜びで満ちあふれていた。


 私たちは、そんな二人を、拍手で迎えた。


 私たちの、全国大会、二回戦は、こうして二人とも、勝利という最高の形で、優勝への道を繋ぐのだった



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