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異端の白球使い  作者: R.D
全国大会
481/674

異端者と職務質問

 私がただ黙って、煌々と輝く、二つのコンビニの光を見つめていた、その時だった。


「――こんにちは。少し、よろしいですか?」


 不意に背後から、低い声がした。


 振り返るとそこには、制服を着た、警察官らしき人が、二人立っていた。


 その視線は明らかに、私たちへと向けられている。


「君たち、ここで何をしているのかな?えーっと、君は中学生くらいかな?こちらの男性は、保護者の方?」


 警察官の一人が、私と先生を、交互に見ながら、そう言った。


 その瞳には、明確な疑いの色が、浮かんでいる。


(…なるほど。未成年と30才ぐらい、というペアに対する職務質問か。合理的判断だ)


 先生が「ああ、いえ、これは、その…」と慌てて何かを、説明しようとしている。


 だが、その時の私は、そんなことには全く興味がなかった。


(…寒い。そして、糖分が不足している。思考が、甘いものが飲みたいと、要求している)


 私は、先生と警察官の、そのやり取りには目もくれず、くるりと踵を返し、そしてコンビニの中へと、向かった。


「お、おい!静寂!?」


 背後で、先生の、慌てた声が聞こえる。


 私は、自動ドアをくぐり、そして、一直線に、ドリンクコーナーへと向かう。


 そして、一番温かそうなココアを手に取り、レジへと向かった。


 会計を済ませ、そして、その温かいココアを一口、喉に、流し込む。


 じんわりと、体に温かさが、戻ってくる。


(…うん。これで思考も、クリアになった)


 私が満足して、コンビニから戻ると、そこには信じられない光景が、広がっていた。


「だから違うんだって!俺は、あの子の学校の先生で!」


「はいはい、そういうのは警察署でゆっくり、聞くからねー」


「おいこら!勝手に触るな!」


 先生が、二人の警察官に、羽交い締めにされ、パトカーへと連行されそうになっている。


 私が逃げたと、警官が勘違いして、修羅場になっていたのだ。


(…なるほど。これが都会の警官、なんて手慣れて無駄がないんだ、恐らく日常茶飯事なのだろう、…私が撒いた種の様だし、…私が介入すべきか)


 私はゆっくりと、その輪の中へと、歩み寄った。


「あの」


 私のその、静かな声に、三人が一斉に、こちらを見る。


「何だ君!戻ってきたのか!さあ君も、一緒に署まで、来てもらおうか!」


「先生。少しよろしいですか」


 私は、警察官の言葉を無視し、先生に話しかける。


「え?あ、ああ…」


「あなたの名刺をお借りします。それと、私の学生証です」


 私は、自分のカバンから、生徒手帳を取り出し、そして、先生から名刺を受け取った。


 そして、その二つを、警察官に提示する。


「…私は、第五中学校の静寂しおり。そしてこちらは、その卓球部の顧問の、先生です。何か問題でも?」


 私のその、あまりにも冷静で、そして堂々とした、態度。


 そして提示された、二つの身分証明書。


 それを見て、警察官たちは、顔を見合わせ、そして、バツが悪そうに、頭を掻いた。


「あ、いや、これは、その…。ご、ご協力、どうも、ありがとうございました…」


 彼らは、そう言って、そそくさと、その場を立ち去っていった。


 後に残されたのは、私と、そして未だに、状況が飲み込めていない、先生だけだった。


「…先生。コンビニに入りましょう。部長も勝ち上がりますから、ゼリー飲料とスポーツドリンクとあとは…」


 私が、そう言いながら歩き出すと、彼はようやく、我に返ったように、慌てて、私の後を、ついてきた。


 まさかあそこまで強引とは、都会の警官は恐ろしい

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