灯された炎(2)
「――タイムアウトをお願いします」
俺は、ニヤリと笑った。
面白い。
どこまでも、やってやるぜ。
この試合の主導権は今、完全に、俺の手にあったのだから。
ベンチに戻ると、あかねが、目に涙をいっぱい溜めて、駆け寄ってきた。
「部長先輩!すごい、すごいよ!大逆転だよ!」
彼女はそう言って、新しいタオルとドリンクを、俺に手渡す。
その手は興奮で、微かに震えていた。
「任せとけ」
俺はそう言って、彼女の頭を、わしわしと撫でた。
「ここから、一気にまくってやる」
「…でも、部長先輩」
あかねが少しだけ、不安そうな顔で、言った。
「あの選手、なんだかしおりちゃんに、似てません? プレーの、感じとか雰囲気が…」
その言葉に、俺は頷いた。
「ああ。似ているな。 俺もそう思ってた。相手の一番嫌なところを、的確に突いてくる、あのえげつなさは、確かによ、だから俺は、勝てるわけがないと、最初から諦めちまってたのかも知れねえ、…実際中学三年生になったしおりに勝てるイメージ、湧かねえしな」
だが、俺は続ける。
「でもなあかね。あいつの分析能力は、しおりより低そうなんだ。」
「え?」
「まだ試合が続いているのが、その証拠だ。もしあいつが、しおりと同等の力を持つ、中学三年の男子なんて化け物だったら、俺はもう、とっくに負けてる。」
「奴は分析が出来ても、足りていないんだ、自ら攻めるという意思を感じない、相手の嫌がる所にボールを放ち、ミスを誘う、しおりなら、少しでも甘いボールが来たら決めきれる、だが奴は決めきれる力をもっていない」
俺はそう言って、笑った。
「なるほど!確かにそうですね!しおりちゃん、部長と練習していたとき、私には隙にも見えないような球を、隙があると言って部長先輩のことボコボコにしてましたし!」
その容赦のない言葉に、苦笑いを浮かべる。
「確かにそうなんだが…、隙って言ってもあいつの場合数ミリ単位を要求してくんだよ!仕方ないだろ!」
言い訳の様に俺は言葉を並べていた
俺は、観客席のしおりの方を、ちらり見る。
彼女は相変わらず、涼しい顔で、こちらを見ている。
…あなたにはその相手に負ける理由がありません
そんな言葉が聞こえてくるようだった。
「安心しろ。勝つためのルートは、俺の中のしおりが、ナビしてくれた。」
その瞳の奥で、俺を信じてくれているのが、分かった。
「だからあかねは、俺の応援を頼むぜ。うちのチームは、観察と、分析しか、しないからな」
俺のその軽口に、あかねが「もう、部長先輩は!」と、楽しそうに笑う。
そうだ。
これで、いい。
この温かい応援がある限り、俺は負けねえ。
インターバル終了を告げるブザーが、鳴り響く。
俺は立ち上がり、コートへと向かう。
そして最後に振り返り、あかねに言った。
「みとけよ。俺の、大逆転劇をな」
その言葉には、一点の迷いもなかった。
俺の体中には、仲間たちの想いという、最強のエネルギーが満ちあふれていたのだから。
本日、この物語が、一つの大きな大きな目標を達成しました。
一日のPVが、1000を超えました。
この1000PVという数値は、私の目標でした、まさかこんなに早く達成できるとは思いませんでした。
本当にありがとうございます。
画面に表示されたその数字を、私はしばらく信じられない気持ちで、見つめていました。
この奇跡は、言うまでもなく、この物語を読んでくださっている、あなた、一人一人のおかげです。
本当に、本当に、ありがとうございます。
今日のこの数字は、おそらく、最近、この物語を見つけてくださり、しおりたちの、長く、そして、時に痛みを伴う道のりを、一気に駆け抜けてくださった、新しい読者の方々の、熱量の現れなのだと思います。
400話を超える、この長い旅路に、最後までお付き合いくださり、感謝しかありません。
そして、その新しい読者を、日々の応援で、この場所に導いてくださったのは、連載当初から、ずっと、この物語の行く末を、静かに見守り続けてくださっている、あなたです。
海図も羅針盤もなく、ただ結末だけを目指して、暗い海を漕ぎ続けてきた私にとって、この「1000PV」という数字は、遠い水平線の向こうに、初めて見えた、温かい灯台の光のようです
あなたの航路は、間違っていないよ。と、そう教えてくれているように感じます。
そして、この場を借りて、特別な感謝を、伝えさせてください。
毎朝4時、更新した直後に、必ず読みに来てくださる方々へ。
一日が始まる、最も静かな時間に、あなたが、私の物語の、最初の訪問者でいてくれること。その事実が、この暗い海を航海する、私の心を、どれだけ、照らしてくれているか、言葉にできません。
この光を頼りに、私はこれからも、しおりたちの魂の物語を、紡ぎ続けます。
もし、この物語の旅路を、これからも共に見届けたい、と感じていただけたなら、ページ下の[☆☆☆☆☆評価]や[ブックマーク]で、その気持ちを、そっと、教えていただけると、これ以上ない力になります。
最高の景色を見せてくださり、本当にありがとうございました。
これからも、『異端の白球使い』を、どうぞ、よろしくお願いいたします。
R・D