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異端の白球使い  作者: R.D
全国大会
474/674

終わる試合

 静寂 8 - 4 竹村


 ネットの向こう側で、竹村選手が、膝に手をつき、肩で大きく、息をしている。


 その瞳には、状況とは裏腹に、まだ、闘志の光が輝いていた。


 それでも、この状況は、もう、どうにもならないだろう。


(…もう、終わりですね)


 私は静かに、そして冷徹に、そう結論付けた。


 この試合の結末は、もう変わらない。


 私の完全なる勝利、という結末へと。


 完全に私のペースにハマった、竹村選手は、健闘虚しく、私のその、変幻自在の卓球の前に、ただ翻弄され、そして、ポイントを重ねられていく。


 そして、最後は。


 私が放った、アンチドライブが、彼女のコートに突き刺さり、この試合の幕は、引かれた。


 静寂 11 - 5 竹村


 試合終了。


 私はネット際に歩み寄り、そして深く一礼をした。


 ネットの向こう側で、竹村選手もまた、私に深く頭を下げていた。


 その表情には、敗北の悔しさ、というよりも、むしろどこか、清々しい色が、浮かんでいる。


「…完敗だ。参ったよ、静寂さん」


 彼女が差し出してきた手を、私は、自然と握手で返していた。


「あなたのその卓球。特に、台上の技術の高さ。あれは、一朝一夕で、身につくものじゃない。異常なまでの努力で、獲得したものなんだね。敬意を感じるよ。」


 竹村選手だからこそ、分かる、私の技術の本質。


 私もまた、彼女に心からの敬意を、感じていた。


「…あなたも素晴らしかった。私がどんなに心を折ろうとしても、あなたは最後まで、諦めなかった。 その闘志に、敬意を」


 私たちの間に、確かに生まれた、アスリートとしての、絆。


 彼女は、最後に、にっと笑った。


「次の試合、楽しみにしている。 全国には、あなたみたいな化け物が、まだゴロゴロ、いるんだろう?」


「さあ、どうでしょうね」


 私もまた、ほんのわずかに、口元を緩ませた。


「…私ももう一度、あなたと試合をしたいです。今度は付け焼き刃ではなく、完成された戦術を、もっと最初から、全力で」


 その一言を交わし、私たちはそれぞれのベンチへと戻る。


 私は、未来さんと共に、観客席で私を待つ、仲間たちの元へと、歩き出した。


 この全国大会という、舞台。


 それは私に、勝利だけでなく、新しい好敵手との、出会いという、素晴らしい贈り物も、また与えてくれる、場所らしかった。

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