電光石火への対抗(2)
静寂 1 - 0 竹村
(あなたのその、新しい「解」この短い時間で、閃き実行する、その対応力は素晴らしい。だけど、私の前では、意味をなさない)
私は静かに、そして冷徹に、次の一手を思考する。
この試合の結末は、もう、私には見えている。
私の完全なる勝利、という結末が。
竹村選手は、再び私を、前後に揺さぶる戦術を、展開してくる。
ロングサーブからの、ドライブ。
そして、ラリーの中での、ストップ。
その竹村選手の戦術は、確かに有効だった。
私の体力を削り、そして、思考のリズムを乱そうとする、その意図。
だが、その戦術は、あまりにも付け焼き刃だった。
彼女のストップは、時に甘く、浮き上がる。
彼女のドライブは、時に、コースが単調になる。
その隙を、私は決して見逃さない。
彼女のストップが、甘くなった瞬間。
私は、台に深く踏み込み、チキータで、彼女のバックサイドを撃ち抜く。
静寂 1 - 1 竹村
彼女が、ドライブで攻めてくれば、私はカットで、粘りそして、カウンターのチャンスを窺う。
そのラリーの中で、彼女の焦りから生まれた、甘いボールを、私は、冷静に、そして無慈悲に仕留めていく。
静寂 4 - 2 竹村
戦術を看破され、そして、ポイントを重ねられていく、その事実に、竹村選手の表情に、焦りの色が浮かび始める。
彼女は、もはや自分の、土俵であるはずの台上の捌きあいでも、そして、奇策である緩急をつけた戦術でも、私を上回ることができない、という現実に、直面していた。
その焦りが、彼女のプレーを、さらに狂わせる。
サーブミス。
レシーブミス。
そして、ラリーでの、凡ミス。
スコアは、一方的に、私へと傾いていく。
静寂 8 - 4 竹村
ネットの向こう側で、竹村選手が、膝に、手をつき、肩で、大きく、息をしている。
その瞳は、状況とは裏腹に、闘志の光が輝いている。
それでも、この状況はどうにもならないだろう。
(…もう、終わりだね)
私は静かに、そして冷徹に、そう結論付けた。
この試合の結末は、もう変わらない。
私の完全なる勝利、という結末へと。