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異端の白球使い  作者: R.D
全国大会
472/674

打ち合い捌き合い

 第三セット。セットカウント 静寂 2 - 0 竹村


 竹村選手の、サーブから始まる。


 やはり、未来さんの予測通りだった。


 彼女は、戦術を変えてきた。


 これまでの、台上の細かいプレーでは、ない。


 彼女が放ったのは、私のバックサイド深くへと突き刺さる、下回転のロンググーブ。


 私を台から下げさせ、そして、長い打ち合いで、勝負するという、意志を見せてきた。


 私は、そのサーブを、冷静に、ドライブで返球する。


 だが、彼女は、その打ち合いに乗ってこない。


 彼女は私のドライブに対し、ラケットの面を合わせ、そして、その威力を殺し、ネット際に、短くストップを放ち、私を台上へと誘う。


(…なるほど。ロングとショート。その緩急で、私を翻弄する、それが作戦か)


 私は、そのストップに対し、前に踏み込み、ツッツキで返す。

 すると彼女は、それを待っていましたとばかりに、手首をしなやかに使い、チキータで再び、私を、ロングの打ち合いへと引きずり込む。


 そこからは、まさに、揺さぶりの応酬だった。

 ロングとショートを、巧みに使い分け、私を前後に揺さぶる、竹村選手。

 私はその全てのボールに食らいつく。

 私の体力が、確実に削られていくのが分かった。

 だが、私の思考は、どこまでも冷静だった。


(…その戦術、確かに素晴らしい。だが、ここまで引っ張って出してきたその戦術、恐らく付け焼き刃の作戦だろう、それならば必ず、隙は生まれる)


 私は、その一瞬の隙を、待ち続ける。

 そしてラリーが10本を超えた、その時だった。

 彼女が放った、ドライブの軌道が、ほんのわずかに甘くなった。


(――ここだ!)


 私は、その瞬間を見逃さない。

 それまで、守備的に動いていた、私の体が、一瞬で攻撃へと転じる。

 私は、その甘くなったボールに対し、ラケットを、アンチラバーの面に持ち替え、そして、彼女の予測の、裏をかく、アンチドライブを、叩き込んだ!


 ボールは、ナックルの弾丸となって、彼女の反応も虚しく、コートに突き刺さった


 静寂 1 - 0 竹村


(あなたのその新しい「解」。この短時間で閃き実行する、素晴らしい、だけど、私の前では、意味をなさない)

 私は静かに、そして冷徹に、次の一手を、思考する。

 この試合の結末は、もう私には見えている。


 私の、完全なる勝利、という結末が。

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