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異端の白球使い  作者: R.D
全国大会
470/674

電光石火(3)

 静寂 9 - 8 竹村


 だが勝負はまだ、決まらない。


 この、電光石火の攻防の決着は、どちらが先に、相手の隙を、咎められるか。


 ただ、それだけの戦いへと、変わっていた。


 私のショータイムは、まだ、終わらない。


 サーブ権は私。二本目。


 私はここで、最後の、そして最大の、罠を仕掛ける。


 あえて、相手に分かりやすい隙を、見せるのだ。


 私は、これまでのYGサーブや変化サーブとは、全く違う、ごく普通の、下回転サーブを、放った。


 コースも、甘い。


 それはまるで「さあ、ここから、打ち合いましょう」と言っているかのような、無防備なサーブ。


 竹村選手は、その私の、あまりにも不自然なサーブに、一瞬だけ、戸惑いと警戒を見せた。


 だが、このチャンスを見逃す、彼女ではない。


 彼女は一歩踏み込み、そして、渾身のフォアハンドドライブを、叩き込んできた!


(…かかったね)


 私は、その強烈なドライブに対し、ラケットをひらりと、翻した。


 黒いラバーの、面。


 そして、ボールの威力を殺し、そして、そのエネルギーを利用し、彼女のバックサイド、一番深いコースへと、カウンター気味に、弾き返した。


 彼女は、その私の返球に、なんとか食らいつき、ドライブで、応戦してくる。


 ラリーが、始まる。


 だが、そのラリーの主導権は、私が握っていた。


 なぜなら、彼女の思考には、常に一つの、ノイズが、混じり続けるからだ。


(…なぜ、あの時、静寂しおりは、あんな、甘い、サーブを、打ってきた…?)


 その、僅かな思考のノイズが、彼女の判断を狂わせる。


 なにも語らない白球に、何かを見いだそうとし、常に警戒をする、そのノイズが、彼女の積極的なプレイを、僅かに阻害する。


 そして最後は、彼女のドライブが、僅かに、台をオーバーした。


 静寂 10 - 8 竹村


 セットポイント、私。


 サーブ権は、相手に、移る。


 彼女は、警戒の色が、最大限に強くなり、それを隠そうともしない


 彼女のサーブは、色々な読みを入れたのだろう、迷った挙げ句、サーブはコースの甘い下回転のサーブ。


 私は、その、ボールを、見逃さない。


 二球目攻撃、チキータ。


 ボールは、彼女の反応も虚しく、コートに突き刺さった。


 静寂 11 - 8 竹村


 第二セット終了。


 セットカウント、2-0。私のリード。


 私は、ベンチへと歩きだす


 この試合の結末は、もう見えている。


 私のこの「異端」の前には、もはや、どんなものも、意味をなさないのだから。

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