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異端の白球使い  作者: R.D
全国大会
469/674

電光石火(2)

 静寂 1 - 1 竹村


 体育館がこの日一番の、割れんばかりの、歓声に包まれる。


 流れが、変わる。


 私のその、粘りの前に、彼女のあの、絶対的だった速攻に、僅かな亀裂が入る。


 この試合の主導権は、まだ、誰の手にも渡らない。


 ただそこには、二人の天才が、互いの全てを懸けて、戦っている、という事実だけが、あった。


 サーブ権は、竹村選手。


 ここから試合のテンポは、さらに加速していく。


 竹村選手のサーブに裏ソフトでスピードドライブを放つ


 先手を、取るための、一撃。


 竹村選手は、それにドライブで、応戦してくる。


 ラリーが、始まる。


 一球、一球が、互いの、全てを、叩きつけるような、電光石火の、打ち合い。


 静寂 2 - 1 竹村


 静寂 2 - 2 竹村


 静寂 3 - 2 竹村


 静寂 3 - 3 竹村


 互いに、一歩も譲らない。


 チャンスを見たプレイヤーがそれを活かし、確実にポイントを、奪っていく。


 それはもはや、卓球ではない。


 コンマ数秒の世界の中で、繰り広げられる、思考と反射の勝負。


 静寂 6 - 6 竹村


 その均衡を、破ったのは、ほんの僅かな変化だった。


 私の、サーブ。


 私は、それまでの速攻のリズムから一転、ネット際に短く止まる、ストップ性のサーブを、放った。


 その、あまりの緩急の差に、竹村選手の反応が、コンマ数秒、遅れる。


 その、一瞬の、隙。


 私は、見逃さない。


 静寂 7 - 6 竹村


 だが、彼女もまた、全国の強豪。


 彼女は、今度は、ドライブで私を揺さぶり、そして、確実にポイントを、重ねてくる。


 静寂 8 - 8 竹村


 再び、イーブン。


 体育館の、熱気が最高潮に、達する。


 息詰まる、攻防。


 その中で、私の思考は、どこまでも冷静だった。


(…あなたのその、電光石火の速攻。確かに素晴らしい。だが、そのあまりの速さ故に、あなたの思考には、僅かな隙が、生まれる)


 サーブ権は、私。


 私は、彼女のその、思考の隙間へと、私の最も得意とする「異端」の刃を、突き立てる。


 YGサーブ。


 そして、そこからの、三球目攻撃。


 彼女は、もう、それに、対応できない。


 静寂 9 - 8 竹村


 だが、勝負は、まだ決まらない。


 この、電光石火の攻防の決着は、どちらが先に、相手の隙を、咎められるか。


 ただ、それだけの戦いへと、変わっていた。


 私のショータイムは、まだ終わらない。

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