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異端の白球使い  作者: R.D
全国大会
463/674

始まる二回戦

 それぞれの、戦いの舞台へと上がる。


 私の胸の中には、もう、何の迷いもない。


 ただ、この仲間たちと共に、勝利を掴む、という、確かな意志だけが、そこにはあった。


 私と未来さんは、二人で、女子シングルス二回戦の、コートへと向かう。


 トーナメント表で確認した、次の対戦相手。


 その学校名と名前を、私の思考ルーチンが、検索する。


「…未来さん」


「はい、しおりさん」


「二回戦の相手は、初雷はつらい女学園の竹村選手。やはり、全国大会の、常連校の三年生ですね」


 私のその言葉に、未来さんが、ほんの少しだけ、眉をひそめた。


「…また、三年生ですか」


 その声には、私への、心配の色が滲んでいる。


「ええ。ですが、問題ありません」


「…ですがしおりさん。あなたの、その小さな体で、年上、しかも、全国レベルの選手と連戦するのは、あまりにも負担が大きい。体躯の、不利は今さらですが…」


 未来さんのその、いつもの冷静な分析とは、違う、私を安心させるような、気遣いの、言葉。


 私はそんな彼女に向き直り、そして静かに、しかし、力強く微笑んだ。


「大丈夫ですよ、未来さん」


 そして、私は続けた。


 それは、彼女に、そして、何よりも、私自身に言い聞かせるように。


 自分自身を、鼓舞するように。


「私が勝つ、という結果は、もう決まっています。 だから私は、ただその過程を、楽しむだけです」


「相手が、どのような戦術で、私に挑んでくるのか。私のこの「異端」が、どこまで通用するのか。そして、この仲間たちと、どこまで高く飛べるのか。…その、全てを楽しむ、と決めたのです」


 私の、その言葉。


 その瞳に宿る、迷いのない光。


 それを見た未来さんは、一瞬だけ、驚いたような顔をしたが、すぐに、いつもの、あの穏やかな笑みを浮かべて、頷いた。


「…そうですね。失礼しました。今のあなたに、私の心配など、不要でしたね」


「いえ。ありがとうございます、未来さん。あなたの、その気遣いが、私の力になります」


 私たちは、そう言って、笑い合った。


 そうだ。


 私たちはもう、ただの孤独な「異端」と「異質」ではない。


 互いを支え合い、そして、共に戦う「仲間」なのだ。


 私は、その確かな温もりを胸に、決戦の舞台へと、足を踏み出した。



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