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異端の白球使い  作者: R.D
全国大会
458/674

蹂躙する部長

 全国大会、一回戦。


 俺の目の前に立つ相手は、いかにも曲者といった、雰囲気の男だった。


 ラケットをくるくると回し、手遊びをする、そして、常に不敵な笑みを、浮かべていた。


 案の定、試合が始まると、そいつの卓球は、変化球を主に戦う、タイプだった。


 横回転、上回転、ナックル。


 ありとあらゆる球種を織り交ぜた、サーブ。


 そしてラリーになれば、突然ネット際に落とすストップや、意表を突く、ロビング。


 そのトリッキーなプレーは、確かに一級品だ。


(…なるほどな。こいつは、相手のリズムを崩し、そして、精神的に揺さぶるのが得意な、タイプか)


 俺は冷静に、相手を分析していた。


 以前の俺なら、こういう相手は、大の苦手だった。


 自分のパワープレーに持ち込む前に、ペースを乱され、自滅する。それが、俺の負けパターンだったからだ。


(…だが)


 相手が放った、強烈な横回転サーブ。


 俺は、その回転の軸と、方向を瞬時に見極め、そして、ラケットの角度を完璧に、合わせて力強いドライブで、打ち返した。


 相手の顔に、驚きの色が浮かぶ。


(…悪いな。お前の、その変化球)


(俺にとっては、あまりにも、温すぎるんだよ)


 そうだ。


 俺はこの、一年間、毎日毎日、本物の「魔女」と、打ち合ってきたのだ。


 しおりのあの、常識外れの、卓球。


 回転があるのかないのかすら分からない、ナックルサーブ。


 ボールの威力を、完全に殺す、ストップ。


 その、あまりにも多種多様で、まるで己の魂を削って作ったかの様な変化


 そして、ラケットを持ち替え、一瞬で球質を変えてくる、あの、幻惑のラリー。


 しおりの変化球に比べれば、お前のそれは、ただの、子供の、遊びだ。


 しおりとの練習がなければ、ヤバかったな、と、俺は内心思いながら、相手のその、トリッキーなボールを、危なげなく、捌いていく。


 俺はもう、ただのパワーだけの、猪武者じゃない。


 しおりとの練習で、俺の動体視力の使い方と、そして変化への対応能力は、嫌というほど鍛え上げられたのだ。


 試合は、一方的だった。


 相手は、自分の得意な変化球が、全く通用しないという、事実に焦り、そして、ミスを重ねていく。


 俺は、その甘くなった、ボールを見逃さず、俺の本来の武器である、パワープレーで、叩き潰す。


 試合は一方的に終わった


 俺は呆然と立ち尽くす相手に一礼し、そしてベンチへと、戻った。


 さて、あいつの方はどうなっているか


「さっすが部長!」


 駆け寄ってくるあかねに任せとけと、話しながら、俺はニヤリと笑い、そして、彼女に向かって、親指を立ててみせた。


「よしっ、先生と合流して、しおりの試合を見に行こうぜ!」


 俺たちは、先生が待つ観客席へと、二人で歩き始めた

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