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異端の白球使い  作者: R.D
全国大会
456/674

VSパワー(5)

 第二セット。セットカウント 静寂 1 - 0 山下。


 山下選手のサーブから始まる。


 私は、台の前に立ち、そして、ラケットを、体の中心で、地面と垂直に構えた。


 フォア面の、赤い裏ソフトと、バック面の、黒いアンチラバー。


 その、どちらのラバーも、相手には、見えないように、そして、どちらにでも、瞬時に対応できるように。


 私の、基本の、最大限に工夫され、最適化された「構え」


 ネットの向こう側で、山下選手が、息をのむのが分かった。


 彼女の思考が、私のその、闘志を燃やした構えの前に、迷っている。


 彼女は迷った末に、もっとも自信をもった、打ち合いを望む様な、下回転のロングサーブを放ってきた。


 パワーでねじ伏せ、ラリーの主導権を握るという、彼女の意思。


 だが私は、もうカットで付き合う気はなかった。


 私は、そのサーブに対し、フォア側に持ち替えたアンチラバーで、痛烈にボールを叩きつける!


 それは、ドライブのモーションから放たれる、ナックル性の、ナックルドライブ。


 山下選手は、そのナックル性の攻撃に、ドライブを、かけようとする。


 普通の選手なら、まず反応すらできない、一球。


 だが、彼女は違った。


 彼女は驚異的な体幹と、そして、天性のボールセンスで、その死んだボールを、強引に擦り上げ、私のコートへと、返してきたのだ。


 ボールは、上手く持ち上げられず、ネットの白線に、引っかかっりギリギリネットを越えなかった。


 私の得点となる。


 静寂 1 - 0 山下


 私は、その得点以上に、彼女のその、ありえない対応力に、戦慄していた。


(…今のボールを持ち上げる…?これが、全国トップレベルの技量…)


 私は、山下選手の技量に驚く。


 そこから試合は、白熱した展開となった。


 山下選手は、その圧倒的なパワーで、苛烈なドライブを、次々と私に叩き込んでくる。


 それに対し私は、ラケットをひらりひらりと、(ひるがえ)し、その全てのボールを、ナックルでいなしていく。


 彼女の「矛」と、私の「盾」


 その二つが、激しく火花を散らす。


 体育館の視線が、私たちのその、異次元のラリーに注がれている。


 回転と、無回転。


 パワーと、テクニック。


 王道と、異端。


 その全てが混じり合い、そして高め合っていく。


 この対話が、たまらなく楽しい。


 私の、本当のショータイムは、まだ、始まったばかりだ。



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