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異端の白球使い  作者: R.D
全国大会
453/674

VSパワー(2)

 静寂 3 - 1 山下


 この心理戦の主導権は、今、完全に、私の手にあった。


 サーブ権は、私。


 私はネットの向こう側で、闘志を剥き出しにし、睨み付けるように、私の出方を窺う山下選手を、見つめる。


 そして、私は選択した。


 最高の皮肉と、そして、敬意を込めた一球を。


 私は、手首を極端に内側に巻き込み、そして体を大きく、反転させるかのような、独特のフォームに入る。


 山下選手が、息をのむのが分かった。


 それは、先ほど、彼女が私に放った、YGサーブの、モーションそのものだったからだ。


(…あなたのサーブ、私にだって使える)


 私は、お返しとばかりに、YGサーブを放ち、反撃する。


 だが、私が、左手から繰り出すそのサーブは、右利きの、彼女のそれとは、逆回転がかかっている。


 山下選手は、その回転に対し、なんとかドライブで返球してくる。


 私は、それを、真っ向からドライブで、彼女のバックに返す。


 彼女も、バックハンドのドライブで、打ち返してくる。


 私は、今度はがら空きになったフォア側へと、ドライブを放つ。


 揺さぶられる、山下選手


 その、私の、厳しいコースを取るラリーに、山下選手は追い付けず、ラケットに、ボールを当てるのが、精一杯。


 ボールは力なくネットに、当たり、コートに、落ちた。


 静寂 4 - 1 山下


(…どうですか、山下さん。あなたの土俵でも、私は、あなたと、対等に戦える)


 だが、彼女は、やはり、強豪だった。


 ここから、一進一退の攻防が、始まる。


 私が仕掛け、山下が、受ける。


 私が、サーブで揺さぶれば、彼女は、驚異的な集中力で、それに食らいついてくる。


 私が、ラリーの中で、変化を加えれば、彼女は、それごと、パワーで、カウンターを狙ってくる。


 一進一退。


 お互いに、一歩も、譲らない。


 スコアだけが静かに、そして、確実に積み重なっていく。


 この試合の決着は、まだ誰にも、分からない。


 ただそこには、二人の天才が、互いの全てを懸けて戦っている、という事実だけが、あった。



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