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異端の白球使い  作者: R.D
探し物
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年越し(3)

 私は、隣にいる、あおの手を、ほんの少しだけ、強く、握り返した。


 その温かさを、確かめるように。


 彼女は、驚いたように、私を見たが、すぐに、嬉しそうにはにかみ、そして、私の手を、強く、握り返してくれた。


 その確かな感触が、私の心を、満たしていく。


 やがて私たちは、石段の一番上まで、たどり着いた。


 だが、私たちの目の前に広がっていたのは、神社の境内ではなかった。


 その先には、また同じような、石段があったのだ。


「おい、この神社、高すぎねえか?」


 部長が、余裕そうに、そう言って、笑う。


 あおは、そんな彼に「だから言ったでしょ?ここの神社は、上にあるからねー」と、得意げに答えた。


 私たちは、再び、石段を登り始める。


 一段、また一段と。


 だが、その石段もまた、終わりではなかった。


 石段を登ると、さらにそこには、石段が続いていたのだ。


「…なるほどな。下の、祭りには、人が、沢山、いるのに、神社に、行く人の、少なさの、理由が、分かったぜ…」


 さすがの、部長も、少しだけ、息が、上がっているようだった。


 私もまた、呼吸を荒くしていた。冬の、冷たい空気が肺に、痛い。


 だが、不思議なことに、あかねさんと未来さんは、なんともない、といった、涼しい顔をしている。


 未来さんはともかく、あかねさんの、その体力は、どこから来るのだろうか。


「しおり、大丈夫?少し、休む?」


 隣を歩くあおが、心配そうに、私の顔を、覗き込む。


「…問題、ないよ。私の心肺は、まだ、想定内の負荷、だから」


 私が、そう答えると、彼女は、少しだけ、むくれたように言った。


「もう、しおりったら。そういう時は、『大丈夫だよ、ありがとう』って、言うの!」


「…善処するよ」


 その、彼女との、他愛のない、やり取り。


 それが、私の疲れた体に、新しいエネルギーを、与えてくれるようだった。


 私たちは、笑い合いながら、また一歩、一歩と、その果てしなく、続くかのように思える、石段を登っていく。


 その先にある、新しい年の、始まりを信じて。



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