表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異端の白球使い  作者: R.D
探し物
421/674

お泊まり会(6)

 しおりが、お風呂場へと消えた後。


 一人残された、私の心臓は、もう限界だった。


 顔が、熱い。


 頭が、くらくらする。


 ドキドキが、止まらない。


 私は、そのどうしようもない、感情の奔流を逃がすように、リビングの中を、行ったり来たりと、意味もなく歩き回っていた。


(色違い…?お揃い…?)


(ってことは、つまりしおりも、これと同じデザインの、服を着る、ってこと…?)


 私の頭の中に、その光景が、浮かび上がる。


 いつも冷静で、無表情で、そして、少しだけ冷たい、あのしおりが。


 フリルとリボンが、たくさんついた、ふわふわの、可愛いパジャマを、着る姿。


 その、ギャップ。


 可愛すぎる、しおりの姿の想像が、止まらない。


 私はその場で、蹲り、悶々と、頭を抱えた。


 どれくらいの、時間が、経っただろうか。


 カチャリ、と、音を立てて、お風呂場のドアが、開いた。


 私は、恐る恐る、そちらを見る。


 そして、私の思考は、再び、完全に停止した。


 そこに立っていたのは、私の想像を、遥かに超える破壊力を持った、しおりの姿だった。


 彼女は、私が着ている、白い服の、色違い。


 フリルの多い、黒いロリータ服に、身を包んでいたのだ。


 少し濡れた黒髪。少しだけ上気した、白い肌。そして、その、黒い衣装との、コントラスト。


 その姿は、もはや「可愛い」という言葉では、表現できない。


 まるで、物語の中から抜け出してきた、お人形さんの、ようだった。


「――っ!」


 私は、もう、何も考えられなかった。


 気づけば、私は、彼女の元へと、駆け寄りそして、その小さな体を、力強く抱きしめていた。


「可愛すぎるよ、しおり…!反則だよ、それは…!」


 私のその、衝動的な行動に、彼女は少しだけ驚いたようだったが、すぐに、ふふっ、と、楽しそうに笑った。


 そして、私の耳元で囁いたのだ。その声は、やはり、どこまでも甘く、そして、私の心を、かき乱す。


「…ありがとうあお。でも今日は、もう疲れたから、そういうのは、ベッドでお願い」


「え…?べ、ベッド…!?」


 その、あまりにも、破壊力の、高い言葉。


 彼女は、そんな私の動揺などお構いなしに、私の手を引き、そして寝室へと案内する。


 そこにあったのは、部屋の半分を占めるほどの、大きな、キングサイズのベッド。


 そうか。しおりが、誰かを泊めることなど、想定しているはずもなく、ベッドは一つしかないのだ。


「え、え、え、で、でも、私は、いいよ!ソファーで、寝るから!」


 私がそう言って、後ずさりすると、彼女は、不思議そうに、首を傾げた。


「なぜ?冬だよ?寒いよ?」


「う…」


「それに、私と一緒に寝るのは、嫌?」


 彼女がその、ガラス玉みたいな、瞳で、私を、上目遣いで見つめてくる。


 そんな顔で、そんなことを、言われたら、私が断れるわけ、ないじゃないか。


 しおりと寝る、という誘惑に、私は耐えきれず、結局、二人で寝ることになった。


 広いベッドの中で、私たちは、並んで横になる。


 私の心臓は、もうずっとドキドキと、音を立て続けている。


 私は、もう、我慢できなかった。


 彼女のその、温かい体を、求めるように、ぎゅっと、べたべたと、くっつく。


 しおりは、そんな私を、特に気にする様子もなく、ただ静かに、受け入れてくれている。


 その優しさが、どうしようもなく、嬉しい。


「…おやすみ、あお」


「…うん。おやすみ、しおり」


 私たちは、そう、言って、目を、閉じた。


 私の、最高の冬休みは、どうやら眠りにつくまでドキドキが止まらない、最高の夜と、なりそうだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ